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「一体どういう事なのか説明してほしいんだけど」
とサーラさん。
「はい、あの、とっても奇妙な事なんですけど、どうやらこのボディには、僕とこのエルという名の女の、二つの魂が入ってるみたいなんです……」
ふう。
と一息ついた途端に、体の自由が効かない!?
「そういう事。つまりね」
僕の口が、女の声で喋り出す。て事はもう僕の顔をしていないって事か!
サーラさんもギョッとしているし!
〝なんなんだよ~〟
「説明するだけよ。アタシもね、ミミックの犠牲者だったのよ。坊やの前にミミックに殺されて取り込まれていたの。でも、どうやらアタシの魂が指輪に宿っていたみたい。魂がこの世に残っていたのよ。未練があったのね。だからミミック本体がアンタに倒された時に、この『ミミックの舌』で出来た肉体を乗っ取る事が出来たんでしょうね。そんで隣の汚い壊れてるナイフ。こっちにはギスタだっけ? 坊やの魂が宿ってたんじゃないの? よく知らないけど」
そうなのかもしれない。だって、確かに僕の意識はあの世でも地獄でもなく、今ここにあるんだから。
こんなエルの説明を聞いて、サーラさんは難しい顔をしている。疑っている目、かな。無理もないけど。
が、ようやく剣を仕舞ってくれた。
「信じるしかないみたいね……。そもそもミミックの『舌』で出来た子が私の鎧を着てるって事が奇妙なんだから、もう一つ奇妙な事が増えても、受け入れざるを得ないわ」
「て事で、今後ともよろしくね。はあ、疲れちゃった。ガサツな坊やみたいに肌の色にも髪型にも無頓着とはいかないからさ。女は自分の容姿に気を使うのよ」
エルがそう言うと、僕自身が「表に出る」感じがした。
「あ、僕の体に戻った」
エルが自ら引っ込んでくれたって事か。どうやらこの女、長い時間主導権を握れないみたいだぞ。助かった。
それにしても肌の色か……。まあ、確かに僕は自分の姿の細かいところなんて意識してない。肌が半透明なのはその為だったのかな。気合いを入れたらもっとちゃんと人間らしい色になるのかな。
「エル、聞こえる? もうこの体で勝手な事しないでよね!」
〝あんたこそまともに働きなさいよ。アタシが出てかなきゃそのお嬢さんは今頃クモの餌食だったのよ〟
「うっ。それはそうだね……」
それを言われると、なんとも情けないんだよ。
「でも、エルだってミミックにやられたんでしょ? 僕と同じじゃん」
〝まあ……、ドジを踏んだのね。アンタと同じで〟
「僕はドジじゃないよ! 君にやられたんだから!」
〝それをドジだって言うのよ〟
「あの、それで、エルも一緒に来るってわけよね? 離れられないんでしょうから」
とサーラさん。
そうだよね。だって僕と共有のボディなんだもの。
と、ここでまたもや肉体を乗っ取られる!
「そりゃまあ仕方ないってわけ。ま、そもそもアタシは『堕天の力』でハッピーな人生を手に入れる為にこのダンジョンに潜ったわけだしね。ダンジョンの底まで行って、『堕天の力』で人間として復活してやるわ。そして今度こそ、幸せ~な第二の人生を送ってやるの!」
両手を上げて思いっきりアピール。
「堕天使ってのも、どうせアンタ達が戦うんだから。ま、しっかり頑張ってよ」
言いたい事だけ言って、また体の奥へ引っ込んだ。なんなんだよ、もう。
「復活したいってのは分かるけどさ。あれ、でもエルが復活したら僕はどうなるの? このミミック細胞のボディが人間の体に変化するんでしょ?」
〝ん? アンタの事? さあ、知らない。魂が消え失せるだけじゃない?〟
「消え失せるだけって! やだよ! だってこの体は僕の体でもあるんだよ! 僕にはかたき討ちっていう使命があるんだよ!」
そんな僕らに、サーラさんが、
「男になったり女に変わったり……。うっかり斬ってしまいそう……」
「うっかりしないで下さいね!?」




