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Legend of kiss1 〜雪の王子編〜  作者: 明智 倫礼
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差し伸べられる手

 ーーーーーー突然、胸に激痛が走った。


 『っ!』


 毒に侵されたように、体中がしびれ始め、


 『……くっ!』


 急速に意識が遠のいてゆく。


 た、大切な何かを……。 


 誰かのぬくもりを側で強く感じながら、


 『…………!!』


 その人の名を口にしようとするが、声は上手く出なかった。


 つ、伝えたい……。

 でも…く、苦しい……。


 『っ!』


 気持ちだけが焦り出し、空回り。

 がしかし、それを静かに傍観している自分がいた。


 誰?


 半ば予期していたが、その問いかけに応える者はいない。


 誰なんだろう?


 ぼんやりした視界で、相手の顔を確かめようとするが、それも叶わない。

 もう一人の自分が、その人の名を呼ぼうとするが、


 『…………』


 苦しい呼吸だけが空しく響く。

 体が揺すられ、遠くで誰かが呼んでいる。


 『………!』

 『………!』


 声が聞きたい。

 あなたの声が……。


 必死に探している、薄れてゆく意識の中で。


 どうして……。

 どうして、こんなことになって……。


 自分の意思とは正反対に、まぶたがゆっくり閉じてゆく。

 それでも、伝えたくて、必死に声を出そうとするが、


 『…………』


 もう、呼吸さえも出来なかった。


 伝えたいのに、伝えられないまま……。

 このまま……死んでしまう。


 遠のく意識を必死で呼び戻そうとすると、さらに胸が苦しくなった。


 っ!

 この人に私は伝えたーー


 妨害するかのように、何かが胸を深くえぐった。

 そして、不意に静寂が訪れ、胸の痛みからも解放された。

 真っ暗になった視界で、もう一度だけ強く願う。


 私は伝えたいことが、あなたにあった。

 だから、それを伝えたい。

 どうしても……伝えたい。


 その願いに応えるように、優しくりんとした女の声が、


 『なんてことでしょう。……とは、私は許せません。……。自ら、この呪いを解く意思があるのなら、その機会と方法を与えましょう。今から五千年後に…うでしょう。……十八の誕生日までに……』


 その言葉を最後に、意識は完全に途切れたーーーーーー

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