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底辺戦士、チート魔導師に転職する!  作者: キミマロ


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第七十五話 空を統べるもの

「ぐッ……!」


 身体から力が抜けていく。

 さすがに相手の図体がデカイだけあって、浄化に消費する魔力も半端ないようだ。

 しかも厄介なことに、抜けた魔力にとって代わるように瘴気が逆流してきている。

 空帝獣に掛けられている呪いが、俺の浄化に抵抗しているかのようだ。


「もういい、無理だ! 私のことはあきらめてくれ!」

「嫌です! そういう自己犠牲みたいなの、俺は嫌いですから!」

「そうは言っても、もう君の身体が……!」


 気が付けば、腕や足に何やら黒いものが浮かび上がっていた。

 瘴気の影響が、かなり出てきてしまっている。

 クソ、意識が朦朧としてきた……!

 俺は唇をかむと、痛みでもって無理やりに思考をはっきりとさせる。


「ラースッ!!」


 ツバキさんが絶叫した。

 それにやや遅れて、背中にそっと手が添えられる。

 たちまち、温かな魔力が全身に流れ込んできた。


「危ないですよ! 瘴気がッ!!」

「馬鹿ッ! お前ひとりに任せられるか!」

「ツバキさん……」

「パーティの仲間だろ。こういうときぐらい、一緒にやらないでどうする!」


 力強い言葉とともに、さらに魔力の勢いが増す。

 ツバキさんにだって、俺の身体を通じて瘴気が流れ込んでいるだろうに。

 その行動、その言葉に一切の迷いは見えなかった。

 もう覚悟は定まってるってわけか。

 それなら、もうやるっきゃないな……!


「一気に決めましょう! とらあァ!!」


 気迫。

 二人分の魔力を合わせ、ここぞとばかりに注ぎ込む。

 すると、獄鳥は大きく翼を広げた。

 たちまち陽炎が登り、強烈な熱気が充満する。

 闇に侵されてなお神々しいその姿は、空の支配者と称するにふさわしい。


「グラアアアアッ!!」

「ヤバいッ!!」


 黄金のくちばしから、巨大な炎が噴き出した。

 火山が爆発したようなそれは、たちまち俺たちの方へと押し寄せる。

 前に立つオルドスさんが、即座に姿勢を低くした。

 風の防壁が厚さを増し、どうにか炎を防ごうとする。


「ぐぬッ……!」


 オルドスさんの手にした大剣が、にわかに赤熱した。

 炎の熱量に負けて、溶けかけているようだ。

 このままじゃ、俺たちまとめて燃やし尽くされてしまう……!

 でも俺たちの方も、流れ込んでくる瘴気を押さえつけるので精いっぱいだ。

 オルドスさんのフォローには、とても回れない。


「これまで……か……?」


 死が脳裏をよぎった時だった。

 オルドスさんの前に、巨大な金属製の壁がせり出してくる。

 その鈍い色合いは、オリハルコンのようだった。


「これはいったい……」

「手伝いに来た」

「テスラさん!? どうしてここに!」

「私もいるわよ~!」


 テスラさんに負けじと、シェイルさんも声を張り上げる。

 あの時、彼女たちとは別れたはずなのに。

 なんでこんなところに、二人揃ってやってきたんだ……?

 疑問はいろいろあるが、今はその到着が素直にありがたい。

 これなら、何とかなるかもしれないぞ……!


「二人とも、手伝ってください! 獄鳥を浄化しようとしてるんですが、抵抗が激しくて!」

「わかった」

「任せなさい!」


 二人は俺に近づくと、すぐさまその手を背中に添えた。

 たちまち、膨大な魔力が流れ込んでくる。

 よし、これなら有無を言わせず押し切れそうだ!

 俺は視線を上げると、獄鳥の顔をスッと見据えた。


「おりゃああァ!!」

「はァッ!」

「行くわよッ!」

「これでッ……!」


 自然と、四人の息があった。

 魔力が膨れ上がり、一気に解き放たれる。

 それに対抗するように、瘴気の流れ込みもますます激しくなった。

 だからって、もう止められない。

 たとえ身体がボロボロになろうが、やり切るのみ……!!


「グラアアアアアッ!!」

「これで……最後だああァ!!」


 決まった!

 瘴気の塊が噴き出すと同時に、獄鳥の身体が綺麗に浄化されたのが分かった。

 やれやれ、苦労はしたけど何とかなったな……!

 俺はいつの間にか額に浮いていた汗を、サッと拭きとる。


「何とかなったか……」

「よかった、もう私は限界よ」


 その場に膝をつくシェイルさん。

 安堵したその表情には、疲労が色濃く出ていた。

 魔力をほとんど使い切ったこともそうだが、瘴気に耐えるのがきつかったようだ。

 息もわずかに荒くなっている。


「まったく、あとから来たくせに値を上げるんじゃない」

「さすが、ツバキはたくましいわ。ラースも……って! 大丈夫なの!?」


 こちらを見たシェイルさんが、素っ頓狂な声を出した。

 彼女は俺に駆け寄ってくると、心配そうにのぞき込んでくる。


「顔が真っ青じゃない! 目もうつろだし」

「あはは、魔力を使い過ぎましたかね。でも平気……」


 意識がぼんやりとして、言葉を最後まで言い切ることができなかった。

 これは、自分で思っている以上に事態は深刻かもしれない。

 視線を下げれば、黒ずんだ手足が飛び込んできた。

 俺の手足……なのか?

 瘴気に侵され、どす黒くなったそれらはさながら死体のようだった。

 

「ちょっと……ヤバいかもしれないですね……」

「ラースッ! しっかりするんだ!!」

「ちょっと待ってて! ポーションがあるわ!」


 シェイルさんは懐からありったけのポーションを取り出した。

 そして、それを惜しげもなく俺の身体に掛けていく。

 しかし、黒く変色した身体は全くよくはならなかった。

 それどころか、ぐるぐると目が回るような不快感が次第に増していく。


「うう……!」

「大丈夫か!? おいシェイル、上級ポーションは持ってないのか!?」

「もう使ってるわ! でもダメ、全然効かない!」

「まずいな、このまま瘴気が身体の内部まで冒したら……!」


 ――ラースは死ぬ。

 ツバキさんの表情は、そう語っていた。

 しかし、打つ手がない。

 上級ポーション以上の代物となると、エリクサーぐらいだ。

 さすがに、テスラさんたちでも持ってはいないだろう。


「その傷、我が力で癒そう」

「なんだ、この声は!?」

「お、おい! ラースの身体が……!」


 急に、身体全体が光に包まれた。

 黒ずんでいた手足が、見る見るうちに回復していく。

 失われていた魔力も、あっという間に満ち足りた。

 まさか、この力は……!

 俺が慌てて顔を上げると、そこには――


「礼を言おう、人間よ。我が名はアセル。大樹より天を統べ、生命を司るものなり」


 雄々しく立ち上がった、神獣の姿があった。


活動報告に、書籍版の表紙イラストを公開いたしました!

もしよろしければ、ご覧ください。

今後とも、応援よろしくお願いします。

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