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底辺戦士、チート魔導師に転職する!  作者: キミマロ


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第六十二話 エルフたちの国

「ここがエルフたちの国……!」


 結界の中に足を踏み入れると、そこには立派な街並みが広がっていた。

 白を基調とした石造の建物が、整然と建ち並んでいる。

 その様子はさながら古代の神殿のようで、どっしりとしたエンタシスの柱が神々しい。

 まるで、この場所だけ時を忘れたかのような風景だ。


「古い街」

「そうね。見たところ、数千年は経ってるわ。こんな場所があったなんて」

「それより、あれ見てくださいよ!」


 そう言うと、俺は遥か彼方に聳える巨木を指さした。

 その大きさは半端なものではなく、黒々とした幹が完全に視界をふさいでしまっている。

 樹齢何千年――いや、下手したら何万年も経過していそうだ。

 当然ながら高さの方も凄まじく、頂上は遥か雲の上にあって見ることすらできない。

 城どころか、下手な山よりもよっぽど大きい。


「真宝樹だな、間違いない」

「話には聞いてたけど、予想以上ね」

「さすが、世界一」


 真宝樹を見上げながら、ため息をこぼす三人。

 自然とその足が止まった。

 すると俺たちを先導していたさんが、オルドスさんがやや困ったように言う。


「申し訳ありませんが、少し急いでいただけますかな?」

「ああ、はい! 今行きます!」


 俺は急いでオルドスさんのもとへと移動した。

 テスラさんたちも、わらわらと後に続いてくる。


「国に興味を持っていただくのは嬉しいのですが、陛下に早く報告しなければなりませんゆえ。申し訳ございません」

「いえいえこちらこそ! ……というか、なんで俺たちにここまでしてくれるんですか?」

「先ほどの説明では、ご納得いただけませんでしたか?」

「ええ、まあ……」


 ちょっと遠慮がちながらも、言う。

 最初の出会い方が出会い方なだけに、そう簡単には納得できなかった。

 いきなり矢を打ってきておいて、あとからお客様待遇なんて手の平を返すにもほどがあるからな。


「我らエルフ族は、真宝樹に住む空帝獣様を神とあがめております。そして、皆様と一緒におられるヒナは間違いなく空帝獣様のお子。よって、空帝獣様のお子とゆかりのある皆様は我が国にとって大事なお客人というわけです」

「……このひよこは、妖精の卵から生まれたものなのだがな」


 ツバキさんが、ややあきれたように言う。

 このひよこはもともと、俺がロドリーさんから貰った妖精の卵から産まれたものだ。

 空帝獣の卵から産まれたわけではないから、仮に種族が同じだとしても血を引いているわけではないのである。


「そこは問題ではありません。空帝獣様は、生命を司る特別な存在。その子の魂もまた、転生を繰り返していくのです。時にはほかの魔獣に宿りながら」

「つまり、このひよこは空帝獣の子の魂が宿った存在だと?」

「そういうことになります」

「……そんなの、よくわかったわね」

「我々エルフは、魂の波長を見分ける特別な技を身に着けていますので」


 少し胸を張るオルドスさん。

 魂の波長か。

 俺たち魔導師が、魔力の波長を見るのと似たようなものなのだろうか?

 するとここで、テスラさんがオルドスさんの顔を見ながら突っ込む。


「そういうあなたは、人間じゃないの? 耳が短い」

「……ははは、痛いところを突かれました。確かに私は人間ですよ。もっとも、かれこれ百年ほどはこの森で暮らしているので、身も心もエルフのつもりですがね」

「百年?」


 思わず聞き返す。

 オルドスさんは、どう見ても三十前後にしか見えなかった。

 長命で知られるエルフならともかく、人間で百歳というのはどう考えてもあり得ない。


「少し事情がありまして。さあ、城に参りますぞ!」


 オルドスさんは何やら誤魔化すように、会話を打ち切った。

 彼はサッと手を上げると、勇んで走り出す。

 他の戦士たちもそれに続いたので、俺たちもやむなく彼の背中を追った。

 こうして大通りを抜けると、やがて目の前に白亜の大建築が姿を現す。

 

「ここが我らが女王の城です。使いの者がまもなく出てくるはずですが――む?」

「オルドス、おかえりなさい」

「姫!?」


 城門を開いて現れたのは、純白のドレスをまとった美しい少女であった。

 透けるように白く滑らかな肌。

 儚く、神秘的なまでに整った顔立ち。

 手足は細く、しなやかな若木のよう。

 その容貌に、思わず目を奪われてしまう。


「どうしてこちらに?」

「お客様を連れてくると申したのは、あなたでしょう?」

「その通りですが、わざわざ姫様がおいでなさらなくとも」

「エルディア王国の姫として、客人をお出迎えするのは当然です」

「しかし、御身に万が一のことがあっては――」

「くどいですよ」


 涼やかな口調でそう言い切ると、姫はオルドスさんを振り切って前に出てきた。

 彼女はそのまま、ドレスの裾を持ち上げて優雅に頭を下げる。


「ようこそおいでくださいました。私、エルディア王国第一王女のオティーリエと申します」

「初めまして! 俺は、ラースと言います!」

「私はシェイル、よろしくお願いします」

「ツバキです、どうぞよろしく」

「テスラよ」


 それぞれに返事をする俺たち。

 約一名、ものすごくそっけない返事をした人物がいたが姫様は特に気にしなかった。


「ではこちらへ。女王陛下がお待ちです」

「は、はい!」

「それほど緊張なさらずとも平気ですよ。皆さまは大事なお客様なのですから」


 そう言うと、口元に手を当てて笑う姫。

 こうして俺たちは、彼女にいざなわれて城に足を踏み入れるのだった――。


いよいよ、大森林編の本格始動です!

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