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第四十三話 魔導師の頂点

「あの依頼を解決するなんて! さすが最強チーム!」


 エルマ村での事件を解決して、数日後。

 ギルドで依頼達成を報告すると、ホリーさんがぱちぱちと手を叩いてくれた。

 その音の大きさに、集まっていた魔導師たちがみんなこちらへと注目した。

 ……ちょっと、恥ずかしいな。

 集まった視線の数に、自然と顔が赤くなる。


「報酬、早く」

「はい! 魔石と五千万ルーツですね。両方とも、すぐにお渡しできますがこの場で受け取られますか?」

「そうね、じゃあ百万ルーツだけ現金で。あとはギルドの口座に入れといて」

「分かりました! では、金貨でお渡ししますね!」


 そう言うと、ホリーさんはカウンターへと向かった。

 そして数十秒後、ぎっしりと中身の詰まった頭陀袋がドンっと差し出される。

 ジャランッと金貨特有の気持ちが良い音がした。

 毎度のことながら、実に景気のいい光景である。


「それから……こちらが魔石ですね。ご確認ください」

「おお、なかなかいいじゃない!」


 カウンターの上に置かれた魔石。

 親指より一回り大きいほどのそれは、深い海のような蒼をたたえていた。

 穏やかだが、力強い魔力を感じる。

 七色の輝石ほどではないが、相当に上質な魔石だ。


「ま、今となってはだがな……」

「ははは、まあそう言わずに」


 寂しい顔をしたツバキさんに、思わず苦笑いをする。

 自力で作れるようになったので、実のところ魔石はそれほど入用ではない。

 だが、もらっておいて損のあるものではなかった。

 何より、これを用意してくれた村長さんの気持ちを汲み取りたい。

 きっと、大切な家宝か何かだったことだろう。


「さ、魔石だ。少しずつおたべ」

「きゅい、きゅーい!」


 ひよこの口に、魔石を咥えさせてやる。

 たちまち、ひよこの目がとろんとした。

 魔石から流れてくる魔力が、よっぽどうまいらしい。

 ゆるんだ頬から、幸せが伝わってくる。


「では続いて、ランクの方の査定をしますね。今回はSランク依頼ですので、ラースさんはBランクへの昇格となります!」

「やったじゃない!」

「おお……!」


 Bランク。

 冒険者ギルドならば、一流とされるランクである。

 社会的地位や収入はCランクまでとは比較にならず、リーダーとして皆に頼られるような存在だ。

 まさか、登録してわずか数か月でここまで上り詰めるとは。

 我ながら、少し驚いてしまう。


「おめでとうございます。おそらく、これほど早くBランクになられた方はラースさんが初めてですよ!」

「……ありがとうございます! これからも頑張ります!」

「はい、お願いしますね! えっと、早速ですがマントを交換しましょう!」


 ホリーさんに促されるまま、マントを外して手渡す。

 彼女はすぐさま、俺の使い古されたマントを新しい紫のものへと交換してくれた。

 流石は魔法ギルドのマント、新調したばかりなのに体にしっくりくる。

 上質な素材のなせる業だろう。


「いよいよラースもBか。この調子なら、Sランクもすぐだろうな」

「またまた、そんなことないですよ」

「きっとすぐ。むしろ、賢者候補に入ると思ってる」

「賢者候補ですか。えっと確か……国で一番の魔導師でしたっけ?」

「そうよ。国に所属するSランク魔導師の中で、最も優れた者が選ばれるの。任期は四年、ちょうど来年に代替わり」

「へえ……」


 雲の上の話に、実感がわかない俺はほうほうと適当にうなずいた。

 するとテスラさんが、頬を膨らませてちょっぴりムッとした表情をする。


「私も賢者候補の一人。結構有力」

「あ、そういえばそうでしたっけ……」

「だから無縁じゃない」

「ははは……。ちなみに、賢者になるといろいろと違ってくるんですか?」


 俺がそう尋ねると、なぜだかシェイルさんの方が食いついてきた。

 彼女はこちらにぐっと身を乗り出すと、拳を振るって力説する。


「そりゃあもちろん、魔導師の最高位なんだからね! 富も名声も思うが儘よ! 王様だって頭が上がらないくらいなんだから!」

「おお、夢がありますね……!!」

「さらに、賢者の長である大賢者ともなれば世界を動かせるわ! ほとんど何だってできる地位なのよ!」

「すっげえ……」

「……まあ、高ランク魔導師が仕事をする理由の大半が『賢者の地位を狙ってるから』だからな。ラースも目指してみると良い」

「はい!」


 ツバキさんの言葉に、深々とうなずく。

 どうせ魔導師になったのだから、その頂点を目指すというのも夢がある話だ。

 男なら、夢ぐらいはでっかく持ちたいし。


「賢者として選ばれるには、実力と実績が大事。その意味で、フォルミードを倒してエルマ村の依頼を解決した我々はかなり有利」

「おおお!」

「ま、あと何件か、大きな依頼をこなせばってところかしら」

「じゃあ、頑張らないといけないですね! ホリーさん、早速ですけど何かいい依頼ありますか?」


 俺が尋ねると、ホリーさんはそうですねと顎に手を押し当てた。

 彼女は分厚い冊子を取り出すと、パラパラとページを繰り始める。

 どうやら、クエストボードに貼られている依頼がまとめられているものらしい。

 流れていくページには、いくつか見覚えのある依頼書もあった。


「そうですね、これなんていいかもしれないですね! 依頼主がなんと、バラド公爵です!!」


 そう言うと、冊子を広げてこちらに見せるホリーさん。

 俺たちはすぐさま、台紙に張られた依頼書にくぎ付けとなったのであった――。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 高ランクの人についていって、一回依頼を達成しただけでぽんぽんランク上げるとか、査定ザルすぎんだろ。
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