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第二十七話 最強パーティー結成!

 悪魔フォルミードの襲撃から三日。

 アクレの街は、少しずつ平穏を取り戻しつつあった。

 先の戦いで大きな被害をこうむった冒険者ギルドも、昨日には営業を再開している。

 主力はやられてしまったそうだが、当分の間は他の支部から人を回してもらうことで何とかするらしい。

 そして、それに遅れること一日。

 建物を爆破された魔法ギルドもまた、今日から営業再開だった。

 怪我をしていた魔導師たちも、大半が治癒魔法で復帰できる状態になったらしい。


「おお……元通りだ!」


 ギルドの前へ来てみると、破壊されたはずの建物はすっかり元通りになっていた。

 砕けた窓ガラスも、炎で焼け焦げた壁も綺麗に修繕されている。

 三日前に爆破されたなんて、言われなければわからないほどだ。

 ギルドの魔導師を動員したのだろうけど、実に仕事が早い。


「お、ラースじゃないか!」

「元気してた?」

「二人も来てたのね」


 ギルドの前で立っていると、シェイルさんとツバキさんがやって来た。

 二人も俺たちと同じで、ギルドに報奨金の受け取りに来たのだろう。

 今回の一件で、俺たち四人には一人当たり三億ルーツもの大金が支払われることとなっていた。

 ……もっとも、高ランク魔導師である三人には、大した金額ではないらしいが。


「しかしラース、何だか疲れた様子だな?」

「ええ、何だかすっかり英雄扱いされちゃって。迂闊に街を歩いていると――」

「あ、ラースさんだ!!」

「え、ホント!?」


 通行人の一部が、めざとく俺の姿を見つけて声を上げる。

 その声に、すぐさまそこら中の人が集まり始めてしまった。

 やっべ、あれに巻き込まれると三十分ぐらいは身動き取れなくなるぞ!

 俺とテスラさんは互いに目配せをすると、すぐさまシェイルさんとツバキさんを巻き込んで、ギルドの中へと駆け込む。


「ふう、助かった!」

「……いつもいつも厄介」

「ははは、巻き込んじゃってすいません」

「ラース、あんた何だか大変そうねぇ……」


 シェイルさんが、どこか他人事のように言う。

 ツバキさんもまた、こちらを憐れむような眼で見ていた。

 ……あれ、二人だって似たような状況じゃないのか?


「もしかして、こんなことになってるのは俺だけです?」

「……私たちはあまりな」

「高ランク魔導師って、何か近寄りがたいって認識されてるみたいだから」

「魔導師には近づくなって、よく言われてる」


 なかなか言いづらいはずのことを、スパッと言ってのけるテスラさん。

 考えてみれば確かに……俺以外の三人は、ちょっと近づきがたいかもな。

 ツバキさんはキリッとした孤高の剣士って感じだし、シェイルさんは凄く気が強い。

 テスラさんも、口数が少なすぎて何を考えているのか分かりにくいところがある。

 ……友達には、あんまりなりたくないタイプかも。

 話してみると、みんな結構いい人なんだけどさ。


「ま、それだけラースが親しみやすいってことだな」

「そうね。ラースってあんまり、新人っぽい魔導師病もこじらせてないし」

「……なんです、それ?」

「新人魔導師、特に半端に実力のある者が陥りがちな病気。自分のことを選ばれし存在だとか言い出す」

「うわぁ……」


 何だかすごく痛い状態だ。

 俺も、下手に調子に乗ったらそうなる可能性があるな。

 気を付けなければ、くわばらくわばら。


「さ、早く行く。ホリーさんが待ってる」

「分かりました、行きますか」


 テスラさんの後に続いて、カウンターへと向かう。

 やがて掲示板の設置されているホールに差し掛かると、その場に居た魔導師たちが、すべて俺たちに注目した。

 向けられる沢山のまなざし。

 彼らは街の人たちのようにこちらへ駆け寄ってきたりはしないが、その視線はずっと熱く感じられた。

 同じ魔導師として、より強く何かを感じているらしい。


「……照れますね。俺だってまだ、入ったばっかりなのに」

「魔導師は実力がすべて。年齢とかは関係ない」

「テスラさんがそういうと、説得力あるなぁ……」

「ランク的にも、今回ので上がるでしょうしね。正式な辞令を聞かないと分からないけど、二階級特進でCにはなるんじゃないかしら」

「おお……!」


 Cランクという言葉に、テンションが上がる。

 冒険者ギルドでは、経験豊富なベテランとして扱われるランクだ。

 それ以上となると数が限られるため、実質的なギルドの主力である。

 収入的にも豊かになってきて、夜の遊びとか何かと派手なことをし始めるのもこのクラスからだ。


「何だか、一人前って感じですね!」

「強さを考えれば、それでも低すぎるくらいだがな」

「そうね、でもCランクになれば――」


 シェイルさんが何事か言いかけたところで、カウンターに着いた。

 たちまち、受付に座っていたホリーさんが駆け寄ってくる。


「皆さん、聞きましたよ! 凄い活躍だったそうですね!!」

「ま、ほとんどラースのおかげだ」

「あの魔法が無ければ、フォルミードは倒せなかった」

「そうなんですか! いやあ、凄い! 流石は適正Sランク、我がギルド期待の星です!!」


 そう言うと、ホリーさんはサッと俺の手を取った。

 そして物凄い勢いでブンブンと握手をする。

 この人……こんなにテンションの高い人だったっけ?

 あまりの勢いに、逆についていけなくて思考がぼんやりとする。


「ホリーさん、それよりも手続きを早く」

「ああ、すいませんでした! 興奮してしまって、つい」


 ホリーさんは軽く頭を下げると、すぐさまカウンターの向こう側へと戻った。

 そして椅子に腰を下ろすと、コホンッと咳払いをする。


「では、改めまして。今回は四人とも、お疲れ様でした! 今回の事件における皆様のご活躍は、ギルドからの特別依頼を達成したということで処理させていただきます。報酬については既にお聞きかと思いますが、アクレ市より二億ルーツ、魔法ギルドより一億ルーツの計三億ルーツがそれぞれに支給されます」

「ま、報酬についてはこれぐらいのものだな」

「さらにシェイルさんはSランク、ラースさんはCランクへの昇格が決定しました。これをどうぞ!」


 ホリーさんはそう言うと、カウンターの下から二着のマントを取り出した。

 黒い方がシェイルさん、そして緑の方が俺のものである。

 俺たちはすぐさまそれに手を伸ばすと、さっそく羽織ってみる。


「やった!! とうとう私も黒マントの仲間入りだわ! これでアンタたちにデカい顔はさせないわよ!」

「良かったな、シェイル」

「超一流の仲間入り」

「俺もこれで、やっと一人前の魔導師です!」


 シェイルさんに負けじと、緑のマントをみんなにお披露目する。

 色が変わっただけだが、何だか大人になったような気がして嬉しかった。

 冒険者ギルドではほとんど味わうことが出来なかったけど……ランクアップって気持ちいいんだな。

 この認められた感じが、癖になってしまいそうだ。


「お二人とも、おめでとうございます! さて、これで無事にすべて終了……と言いたいところなのですが。マスターの方から一つ提案がありまして」

「何だ? マスターのことだから、嫌な予感がするが」

「今回、四人で臨時パーティーを組まれましたよね。皆さんさえ良ければ、もう少しそれを続けてみないかと。今日も四人でいらしたことですし、皆さん仲は悪くないですよね?」


 ホリーさんの言葉に、テスラさんたちは意外そうに「ほう」と息を漏らした。

 もとよりそんなような話はみんなでしていたが、ギルド側から提案されたのが予想外だったらしい。


「考えてはいたが……良いのか? 高ランクが一つのパーティーにのみ集中するのを、ギルドは嫌っていたはずだが」

「はい。実は……今回の件、相当に根が深そうでして。万が一の事態が起きた際に、対抗できるだけの強力なパーティーが欲しいとの判断です」

「つまり、動き出した黒魔導師たちへの抑止力になれってこと?」


 シェイルさんがそう言うと、ホリーさんは黙って静かにうなずいた。

 やはり今回の事件……ラザウェルが単独で起こしたものではないらしい。

 背後にもっと大きな黒幕の存在があるようだ。

 それに対抗するためには、たとえSランク魔導師と言えど単独では無理と言う判断なのだろう。


「敵の全容をまだ我々は把握していません。そこで、可能な限りの切り札を用意しておきたいと」

「……面白い。理由はどうあれ、こんなパーティー普通は組めない」

「ああ、そうだな。Sランク三人に、規格外のCランクの組み合わせか。まさに最強じゃないか!」 

「ずっとソロでやってて良かったかも! 最大のチャンスね」

「はは……みんな前向きですね。でも確かに……最高のパーティーになりそうです! よろしくお願いします!」


 俺がそう言うと、三人は揃っていい笑顔を見せた。

 それを見たホリーさんが、嬉しそうに手を叩く。

 

「よーし! 最強パーティーの誕生ですよ!」

「おおーー!!」


 ホリーさんの声に合わせ、揃って拳を突き上げる俺たち四人。

 こうして魔法ギルドアクレ支部に、新たなパーティーが誕生したのだった――。


四万ポイントを超えました!

いつも応援、ありがとうございます!

これから第二章ですが、こちらも頑張ります!

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― 新着の感想 ―
[一言] 新人っぽい魔導師病とは、中二病のことかね? まあ、やりたくなる気持ちは……………ありますね!
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