第5話 依頼者のお友達
俺の店は、そう大きくない。
『相談屋』の店舗部分は俺とお客3人でいっぱいぐらいだろう。
あとは住居と洗濯物が干せるぐらいの裏庭。
で、今この裏庭にでかい鉄の扉が置いてある。
住居は、1階が台所・トイレ・風呂・リビング。
2階に寝室・使ってない部屋が1つ。
ここに、一人で住んでいる。
俺は台所で料理をすることはない。
何せスキル『召喚術〈神〉』は料理がそのまま出てくるので作る必要がないのだ。
もちろん作る必要がないということは片づけることも送還で簡単に終わる。
…そりゃ、やせることはないな。
昼食をすまして、店のカウンターでまったりしていると女性が一人入ってきた。
「いらっしゃいませ」
俺が声をかけるとその女性は駆け寄ってきて
「あなたが『相談屋』の店主?」
「ええ、そうですがどちら様で?」
俺が店主だというと、女性は姿勢を正して
「ごめんなさい、私はここ『リビニア冒険者ギルド』の受付を担当しているシアよ」
「初めまして、コージです」
「早速で悪いけど、お話聞かせてもらえる?」
何故か怒っているシアが、カウンターを叩く。
「お話?」
「何日か前にシェーラとミュールという冒険者の依頼を受けたでしょ、そのことよ」
「それで、何を聞きたいので?」
シアはそばにあった椅子に座り
「まずは、なぜ依頼を受けたの?」
「それは俺の店『相談屋』に来たからです」
「?」
俺はシアに、紅茶を出しながら
「この『相談屋』は、どこのギルドでも断られた依頼を受けるとことを目的にしていますから」
「なるほど、最後の砦ってことね?」
「まあ、そうですね」
シアは紅茶を一口飲むと、「あ、おいしい…」と気に入ったようだ。
「それにしても料金、安すぎない?」
「1件につき銀貨5枚、適正でしょ?シェーラさんかミュールさんに聞いたんですか?」
「ミュールよ。でも、あなたみたいな人は法外な値段が普通でしょ?」
俺は、自分の体を見た後
「太っているからって、見た目で判断しないでください」
「それはごめんなさい。で、どうやって調べたの?」
「それは、話せませんよ」
「フム、まあいいでしょう」
シアは紅茶を飲み干すと
「私はね、シェーラとミュールの友達なの。今回のことは本当にありがとう」
立ち上がって頭を下げてお礼をいうシアさん。
「二人の村のことを聞いて何か力になりたかったのに、何もできなかった…。
だからもう一度、本当にありがとう」
俺は笑顔で
「いえ、俺は依頼をこなしただけですから」
シアさんも笑顔になり
「太っている人にも、いいやつはいるのね」
そしてシアさんは帰っていった。
なんだろう、デブに悪い印象か偏見があるのかな?
夕刻の鐘が鳴り始めたころ、裏庭にある鉄のドアが開きみんなが戻ってきた。
「みんなお帰り」
「「「「ただいま戻りました、マスター」」」」
「お腹すきました、マスター」
「20もレベルが上がったよ、マスター」
「「「ただいま、マスター」」」
「「……」」
俺は、【聖女】の左右の手をつないでこちらを見ている少年と少女を見て
「あ~、【聖女】のサーシャ?その二人は誰?」
「…ダンジョンで拾いました」
ダンジョンって獣人の子供が拾えたのか?