第43話 奴隷購入
俺たちが足を運んだのは、迷宮都市『ウール』の奴隷商の集まる区画。
この区画には、様々な奴隷商がいる。
戦闘奴隷だけを集めた奴隷商、性奴隷だけを集めた奴隷商、
子供奴隷だけを集めた奴隷商、そして訳あり奴隷だけを集めた奴隷商など。
「時間もあるし、ひとつひとつ回っていくか」
「そうね、どんな奴隷がいるか見て回るのもいいかもね」
「まずは、ここからね」
俺たちは目の前にある奴隷用から見て回ることにした。
「……」
「一通り見て回ったけど…」
「奴隷の扱いがここまで違うとは…」
藤倉さんたち女性陣は、かなりこたえているようだ。
無理もないだろうな、奴隷の環境は奴隷商ごとに違っていたから。
奴隷を大切にいているところはまだしも、
一番ひどかったのは、子供を扱っていた奴隷商だ。
この迷宮都市では、戦闘ができないし、
また、商売や荷運びなどにも役に立たない。
買ってくれる人もあまりいないので使い道がないのだ。
そのため、子供を集めた奴隷商は、
この迷宮都市以外にも商売をすることができる商人に限られてくる。
さらに、一番の問題はこの都市では売る子供奴隷よりも
奴隷商に買われる子供の方が多い。
おそらくそこに目をつけて、この都市で商売をしているのだろう。
この都市にも孤児院はあるのだが、あまりいい噂は聞かなかった。
孤児院の責任者が、裏で子供を奴隷商に売っているとか、
迷宮に潜っていた親が死に、孤児になる子供が後を絶たないらしい。
「それで、買いたい奴隷はいた?」
「一応何人か目星をつけましたけど、最後の奴隷商に行ってから決めます」
「で、ここが最後か…」
「『ゴーダン奴隷商』か……」
「ここは、女性奴隷を専門に扱っているところみたいだな」
「なら、私たちは遠慮するわね」
「私も、目星をつけていた奴隷を買いに行くわ」
「馬場さんたちの護衛は俺がするぜ」
「洋二様が行くなら、私もお供します」
「それじゃ、ここは俺だけで行ってくるよ」
「浩二、待ち合わせ場所はこの区画の入り口で」
「おう」
俺は一人で、『ゴーダン奴隷商』に入っていった。
入り口を入ると、きれいな受付のスペースがある。
受付嬢が一人と、身なりのいい男が立っていた。
「いらっしゃいませ、お客様」
「女性奴隷を、一通り見せてほしいんだがいいかな?」
「はい、かまいませんよ。
申し遅れましたが、私ゴーダン奴隷商の代表をしています、ゴーダンと申します」
「俺はコージです」
「では、コージ様こちらへどうぞ」
そう言って、受付右の扉から奥へ案内してくれる。
「うちは女性奴隷を30人ほどですが、取り揃えております」
「へ~」
「こちらからになります」
俺の前には牢屋のような場所に、閉じ込められている女性がいる。
しかし、牢の中はきれいにしているし女性たちも身ぎれいにはなっている。
「掃除とかきちんとしているんですね」
「それはもちろん、商品を大事にしない商人は商人ではありませんよ」
「なるほど…」
俺は『魔眼メガネ』を使いながら、女性奴隷たちを観察していく。
一人一人見ていると、気になる名前があった。
(あれ?ミュールって、どこかで……)
その女性の牢を通り過ぎ、何人か過ぎたところで
(んん?シェーラ……)
さらに何人か通り過ぎていくと、
(……リリル……)
そして、その女性たちとは別に気になる女性も2人いた。
(この人は、フィリミアナ、17歳、元ワーディング帝国第3皇女…)
(さらにこっちは、ネル、14歳、元ワーディング帝国第3皇女付き侍女…)
「…これは、セットか」
「おや、どうかされましたか?」
「いや、5人ほど購入を決めたんだけどいいかな?」
「はい、それはもちろん!」
「じゃあ、この番号の奴隷を購入するよ」
「では、応接室へ連れてきますのでお客様はそちらでお待ちください」
そう言うと、受付の女性が案内してくれた。
俺が応接室で待っていると、ドアが開きゴーダンが女性奴隷を連れてくる。
「コージ様、こちらの5名でよろしかったでしょうか?」
俺は、一人ずつ確認して、
「ああ、この5人で間違いない」
「では、この5人の首に巻いてあるチョーカーへ
コージ様の血をつけてください、それで奴隷契約が結ばれます」
俺は人差し指を、ナイフで少し傷をつけて血を出すと
5人のチョーカーに付けていく。
5人のチョーカーは少し光ると、色が黒から赤に変わった。
「はい、これでこの奴隷たちはコージ様のものです」
「では、お客様こちらが料金でございます」
受付の女性が料金の書かれた紙を示す。
「え~と、金貨500枚か…一人100枚ということか?」
「はい、うちは一律金貨100枚となっております」
俺はアイテムボックスから、金貨500枚入りの袋を取り出し奴隷商に渡した。
「確認してくれ」
「少々お待ちください…」
奴隷商がすぐさま確認すると、
「はい、金貨500枚確かにございます」
俺は女性たちに向き直って、
「じゃあ、行こうか」
「まいど、ありがとうございました」
「またのお越しを」
ゴーダンと受付の女性がそろって頭をあげて、見送ってくれた。
俺たちは、奴隷商をあとにして待ち合わせの場所へ向かう。