第4話 ダンジョンへの扉
俺は召喚した今日の『神の新聞』の1面を見ながら
「シェーラさんとミュールさんに抱き着かれているこの子が、妹のリリルちゃんか」
三人ともに笑顔で写っている写真は幸せそうだ。
新聞をパラパラと読み進めると、小さな記事が目についた。
「『勇者たち、魔王の城を落とす』か…」
魔王を討伐すると書いてないということは、
魔王は城にいなかったのか?
それとも逃げちゃったのかな?
地球帰還が遠いな~
そんな時、夕刻の鐘が鳴り始めたので俺は新聞を送還。
店を閉めて、町の南門へ『ヴァルキリーたち』を迎えに行く。
店の外は夕刻の鐘の音とともに、いろんな人がまだ大勢行き交っていた。
一番俺とすれ違うのは、南門からくる冒険者たちだろう。
俺が住んでいる『リビニア』の町には、
隣国『ベルガルナ王国』との国境の関所へ続く西門。
この『ネルディアナ王国』の王都に続く東門。
そして、北門は存在してなくて
南門からは、『ぺガリ二の森』へと街道が通っている。
その街道は森を大きく迂回するようにできていて、
その先には王都の南の町『シルゼナ』のさらに南にある王国第2の都市『テセラ』につながっている。
『テセラ』は大きな港があり他国との貿易が盛んだそうだ。
南門の門兵さんにいつものように挨拶をして町を出ると、
門兵の陰になる城壁の近くで『ヴァルキリー』の6人と落ち合う。
「みんな、今日もお疲れさま」
俺は笑顔でヴァルキリーのみんなに挨拶をする。
「お腹すきました、マスター」
「私もです、マスター」
「うん、お疲れ様マスター」
「今日はレベル2つしか上がらなかった」
「お疲れ、マスター」
「今日もお迎えありがとう、マスター」
6人それぞれがあいさつを交わす。
「では、送還!」
俺の掛け声でみんな送還陣の中へ入っていく。
「マスター、ちょっといいですか?」
最後の一人となったヴァルキリーの『アルヴィト』
「ん?どうしたの、アルヴィト」
「マスターのレベルが260を超えました。これ以上はこのあたりの魔物では上がりにくくなります。
別の町へ行きませんか?」
「ん~、わかった朝までに考えておくよ」
「よろしく、マスター」
とアルヴィトも送還陣で帰っていく。
「レベルか…」
俺は、考えながら南門を通り自分の店へと帰っていった。
次の日の朝、いつもと違い店の裏庭で『ヴァルキリー』たちを召喚すると
「みんな、おはよう」
俺は笑顔であいさつを交わす。
「「「「「「おはよう、マスター」」」」」」
「昨日のこと考えてくれましたか?」
6人の中からアルヴィトが昨日のことを聞いてくる。
「大丈夫だよアルヴィト、解決策を思いついたから」
「解決策?」
俺は足元へ意識を向けると、
「召喚!【ダンジョンへの扉】」
「「「「「「え?」」」」」」
俺の足元の召喚陣から黒い頑丈な鉄の扉が出現。
「…あの、その扉は?」
「これは、『ベルガルナ王国側のぺガリ二の森』で発見されているダンジョンへ通じる扉だよ」
ヴァルキリーたちは唖然としている。
「しかも、発見されて放置されているダンジョンみたいなんだよ」
「え?放置ですか?」
俺は扉の取っ手に手をかけて、
「うん、でも俺と同じレベルで召喚されるみんななら余裕だと思うよ」
「…放置されたダンジョンはモンスターが強くなるみたいですが…」
ゴゴゴ…と、重そうな音を出しながら扉は開いていく。
「一応地下1階からだけど、今日から助っ人を召喚しよう。
召喚!【聖女】【忍者】【ゴーレム使い】」
再び召喚陣から3人の女性が召喚された。
「「「お呼びですか?マスター」」」
「ああ、3人は彼女たちについてこの扉の向こうのダンジョン探査を頼みたい」
「「「畏まりました」」」
俺はヴァルキリーのみんなに
「このバッグに、みんなのお弁当と水筒などが入っているから」
「わ、わかりました…」
と、受け取るアルヴィト。
「今日は地下1階をくまなく探索すること、では行ってらっしゃい!」
ヴァルキリー6人はしかたなく、新召喚の3人はウキウキしながら扉をくぐっていった。
「探索が終わったらこの扉に帰ってくるんだよ~」
「「「は~い」」」
俺はみんなを送り出すと、扉を閉めて店の中へ戻り朝食の準備をする。