第3話 妹の居場所
そういえば、あの二人「よろしくお願いします」で帰ったな…
連絡先も聞いてないし、報酬も…
「! 召喚【クノイチ】!」
コージの足元に召喚陣が展開すると、その中から一人の女性が現れる。
「お呼びですか?マスター」
ショートで黒髪の『くノ一』が跪いて聞いてくる。
「楓、この町にいる冒険者のエルフの姉妹を探して呼んできてくれ」
「畏まりました、その姉妹のお名前は?」
「名前は、シェーラさんとミュールさん『はい』だ?」
俺は声のした店の入り口を見ると、
そこには申し訳なさそうにドアを開けてこちらを見ている二人がいた。
「あー、楓。二人見つかったからまた今度な」
楓はクスリと笑うと「畏まりました」と召喚陣の中へ消えた。
楓の送還を見送ると、俺はエルフの二人に笑顔で向き直り
「いらっしゃいませ、シェーラさんミュールさん」
「昨日は連絡先を教えずに帰ってしまって、ごめんなさい」
「私たち、家に帰ってから気付いて…」
二人ともシュンとしている。
「いえ、こちらも気が付かなかったのですからお気になさらずに」
「でも…」
「それよりも、見つかりましたよ妹さん」
二人はその言葉に驚て
「えっ!、もう?」
「本当ですか?!」
「ええ、意外と近くにいました」
俺は新聞の内容を紙にメモしながら二人にしゃべりかける。
「それで、どこにいましたか?」
「このネルディアナ王国の王都から南の町『シルゼナ』にいるみたいですね」
「『シルゼナ』なら2日で行ける距離です!ありがとうございます」
「リリルは、妹はまだ奴隷商に?」
俺はメモの紙を渡しながら、
「ええ、その街にある『ゴーダン奴隷商』で金貨30枚で売りに出ているみたいです」
「大丈夫、金貨30枚なら余裕で用意できます!」
ミュールさんはシェーラさんを見ながら頷く。
「それで、コージさんへの報酬はいくら支払えば?」
「報酬は1件につき銀貨5枚と、決まっています」
「あの、それは安すぎませんか?」
「そんなことありませんよ、正当報酬です」
「でも…」
「そんなことより、早く妹さんを」
ミュールさんは、シェーラさんを急がせながら
「シェーラ、リリルのことが先よ」
「うん、ではこれ銀貨5枚です」
俺は銀貨をシェーラさんから受け取り
「はい、確かに」
二人は支払いをすますと、急いで店から出て行った。
俺は店の出入り口を見ながら「まいど~」と声をかける。
この世界での貨幣価値は(銅貨1枚=10円)となり、、
銅貨100枚=銀貨1枚
銀貨100枚=金貨1枚
金貨100枚=白銀貨1枚
白銀貨10枚=白金貨1枚 となる。
これで俺の仕事は終わり、改めて『相談屋』を開けてのんびりと
閑古鳥のなく店内で時間をつぶしながら夕方の鐘が鳴るまでカウンターの椅子に座ってた。
それから5日後の『神の新聞』に、
シェーラさんとミュールさんが無事に妹のリリルさんを奴隷商から買い取り
そのまま解放したと記事が載っていた。
しかもなぜか、3人の写真入りで1面を飾っていたのは驚いたが。