第2話 二人のエルフの依頼
「いらっしゃい、『相談屋』へようこそ」
そっとドアを開けて恐る恐る入ってきたのは、
二人の美しいエルフの女性。
右のエルフは明るい緑の髪をポニーテールにして白い革鎧を着て濃い青のマント。
左のエルフは金色のショートの髪、同じく白い革鎧に濃い青のマント姿。
両方ともに片手剣に盾を装備している。
「あの、冒険者ギルドでも受け付けてもらえなかった依頼でも大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
右のエルフの人がホッと胸をなでおろす。
「実は、探してほしい人がいるんです」
左のエルフの人が焦りながらしゃべってくるが、俺はそれを手で静止して
「初めまして、コージといいます」
と俺から名乗ると、
「す、すみません。シェーラです」
と左のエルフさん。
「私はミュールです」
と右のエルフさんが、名前を教えてくれる。
「で、探してほしい人とは?」
俺がメモとボールペンを用意すると、顔を二人に向けて聞く。
「はい、探してほしいのは私たちの妹なんです」
「妹さんのお名前は?」
「リリルです」
「ご出身はどこですか?」
「ブーケニア王国の外れのバルゲ村です」
「経緯はわかりますか?」
そう聞くと、二人は手を握り合い
「半年前、村は魔物の群れに襲われました。
そのとき私たちはすでに、成人して村を出て冒険者になっていました。
そして、クエストでブーケニアを出ていたんです」
「魔物の群れは何とか防いだのですが、
私たちの両親をはじめ、多数の犠牲が出てしまいました。
そこで孤児となったものを、奴隷商に売り村の立て直しをすることに・・・」
「私たち、先月村に帰るまで知らなくて・・・」
「それで、妹さんを探してほしいと」
「はい」
「私たちで妹を、リリルを購入して解放したいんです」
「お願いします、奴隷商に売られた妹を探してください」
二人は真剣な目で俺を見つめる。
ここは俺のチートの出番だな。
「わかりました、お任せください」
二人は顔の表情を明るくすると、
「「よろしくお願いします」」と頭を下げる。
二人が帰ってからやることはただ一つ。
俺はよく読んでいる『神の新聞』を召喚。
この『神の新聞』は地球の新聞と同じようなもので、
この世界の情勢から地方までいろいろな情報が載っている。
しかも厳選して載せているので新聞が分厚くならない。
この新聞に出身地と名前を書いたメモを挟んで送還すると
翌日の召喚した新聞の尋ね人のコーナーに情報が載っているのだ。
チートだなこれ。
「さて、あとは明日の新聞だな」
俺が『神の新聞』を送還すると昼の鐘が鳴った。
今日もいつも通りに昼食を召喚して、一日を過ごすかな。
次の日の朝、店を開ける前に
『ヴァルキリーたち』6人を人数分の弁当とともに召喚し町の外へ送り出す。
そして、『神の新聞』を召喚し尋ね人コーナーを見るとありました。
「リリルの居場所は・・・あれ?」
俺はこの『ネルディアナ王国』の地図を召喚すると、場所を確認する。
「やっぱり、このネルディアナ王国の王都から南の町『シルゼナ』にいるみたいだな」
確かブーケニア王国は、東の帝国のさらに東にある。
奴隷商がこの王国まで移動したのだろう。
この情報を依頼主の二人に話して、依頼は完了だな。