第15話 屋敷を購入
俺は冒険者ギルドに来ていた。
正面の大きく扉もついていない出入り口から入ると、受付嬢の6人がいるカウンター。
右には2階への階段と素材買取カウンター、奥の倉庫へ直接行く通路がある。
俺はシアさんを見つけて、その受付に並ぶ。
お昼近くの時間ということもあって冒険者は並んでいなかった。
それに、飲食なら2階だし絡まれるテンプレも起きようがない。
「お久しぶりです、シアさん」
「あら、『相談屋』の太め店主じゃない」
「…実は、聞きたいことがありまして」
「何かしら?」
「町の北側にあるボロボロの屋敷なんですが、販売してますか?」
「…ちょっと待ってね」
シアさんは、ファイルを取り出すとパラパラとめくっていき
「あそこは、金貨400枚で売り出しているわね」
「その屋敷買います、手続きお願いします」
シアさんは呆れながら、
「いいの?大きいだけでかなり放置された屋敷だけど…」
「掃除や修復などは、あてがあるので」
「わかりました。では、こちらに署名とお金は10日以内に用意してくださいね?」
俺は書類に署名しながら、
「了解しました」
「そういえば、今まで住んでいた家はどうします?」
「お店があるので、そのままで」
「はい。では、こちらがカギになります」
シアさんは、白いカギと黒いカギを渡してくれる。
「白いカギが門の鍵、黒いカギが屋敷の鍵です。
この二つの鍵は魔道具になっているからなくさないようにお願いしますね」
「ありがとうございます」
俺は鍵を受け取ると、冒険者ギルドを出て町の北側にある大きな屋敷を目指す。
町の北側には門がない代わりに大きな屋敷が多く建っている。
町に住む貴族たちは東側、南側は職人や民間人が住んでいるし、
お店やギルドは中央から西側が多いみたいだ。
で、今回俺が買った大きな屋敷は以前のこの町の領主の持ち物だったが
代替わりとともに売りに出されていた。
買い手はつかなかったみたいだが…
「あれか…。確かにボロボロだな」
白いカギを使って門を開けると、屋敷の庭が荒れているのが見える。
「召喚、【庭師】」
俺は『庭師』を10人召喚すると、庭の手入れをお願いする。
「お任せください、マスター」
「3日ほどで見違えますぜ!」
「「「おうっ!」」」
掛け声とともに、庭に走っていく。
仕事が早そうだ…
俺は屋敷のドアの前まで来ると、今度は黒いカギでドアを開ける。
玄関ドアは、女性の金切り声をあげながらゆっくりと開いていく。
…すごい錆びついているな。
「召喚、【大工職人】」
大工を10人召喚すると、屋敷の修理や修復をお願いする。
「わかりやした、マスター」
「ついでに、補強もやっておきましょう」
「よろしくお願いしますね。何日ぐらいでできますかね?」
「3日あれば、十分ですぜ」
「では、それで」
俺はすべてを任せて、工事期間の食事などの代金、金貨10枚を渡して家に帰った。
家に帰って夕食の前に、もう一度『神の新聞』を召喚して読んでみる。
「…間違いなく、『ベルガルナ王国で反乱』と書いてあるな。
しかも『召喚者たちがベルガルナ脱出に成功』…」
ケンジ君たちに、あんなこと言わなければよかった。
まあ、ベルガルナの王都からの脱出だからこの町まで5日ぐらいだから
あの屋敷が間に合うかな。
力になるって言ったからには、しょうがないか。
「……ん、この記事」
見逃していた、というより詳しく読んでなかったな。
『第一王女たちも…』
これだと、この町は通り過ぎて王都へ向かうことになるな…
…まあ、『備えあれば患いなし』ということで納得しよう。
でもこの反乱、この国にも影響が出そうだな…