第14話 迷子
お昼時の鐘が鳴ると、店のドアを開ける音がする。
「こんにちは~」
「いらっしゃいませ、ケンジ君」
「あの、わかりましたか?」
「はい、妹さんたちの居場所はわかりましたよ」
ケンジ君はホッとして安心する
「よかった…。みんな無事なんですね?」
「ええ、みんな無事です」
「それで、どこにいるんですか?」
「ご案内しましょう」
というと、ケンジ君を店の裏庭に案内して
「こちらの『転移の扉』の先にある町に、いるみたいです」
「…この扉の先に?」
俺は頷いて、扉を開けるとケンジ君は急いで中へ入っていく。
ケンジ君に続いて俺も入ると
「小百合!」
「兄さん!」
と二人で抱き合っている少年と少女を見つける。
その二人の周りには、ケンジ君のクラスメイトらしき学校の制服を着た少年少女が集まってきていた。
「えっと、皆さんがケンジ君のクラスメイトで?」
一人の少女が俺の問いに
「はい、いきなりここにきて驚いていますが…」
と、ケンジ君の方を見てから俺を見て
「説明してもらえますか?」
…冷静な子だな。
「わかりました。まず、皆さんは異世界召喚されました。
本当ならここの隣の『ベルガルナ王国』に召喚されるはずが、この町に召喚されてしまいました。
皆さんの他にも、20人ほどが召喚されているそうです。
目的は、他の方に聞いてください。私は皆様を探してほしいと依頼されただけですので」
「…わかりました、あとでケンジに聞いておきます。」
とそばに来ていた男子がケンジ君を見る。
「それで、私たちはこれからどうすれば?」
ようやく冷静になったケンジ君が近づいてきて、
「みんなはこれから『ベルガルナ王国』の王都へ行かないと」
「王都までどれくらいかかるの?」
「それは後でまとめて説明するよ」
「コージさん、あの町に護衛の兵士と馬車が待っています」
「では、まずはあの扉をくぐって町まで行きましょう」
ケンジ君はほかのみんなに説明をする。
俺はその間に、町の人たちにお礼を言っていると
ケンジ君が説明し終わったことを告げに来た。
まずは皆で扉をくぐって裏庭に出る。
「…ここは?」
「ここは私の店の裏庭ですよ、皆さんこっちです」
裏庭から店の前へと案内する
「ここでいいかな?ケンジ君」
「はい、みんなを探し出してくれてありがとうございました」
「商売だからね、料金は銀貨5枚だけど払えるかい?」
ケンジ君はポーチからお金を出して、
「大丈夫です、ある程度お金はもらっていますから」
と、支払ってくれた。
「うん、まいどあり」
「じゃあみんな、僕についてきてくれ」
ケンジ君の後を、14人の制服姿の少年少女がついていく。
「何か困ったことがあったら、うちの店を訪ねるといいよ」
「は~い」
と、何人かの生徒は手を振ってくれた。
しかし、異世界召喚って失敗することもあるんだな…
ケンジ君たちとの出会いが、面倒な事態になったのは10日後のことだった。
今日も閑古鳥が鳴く店で、『神の新聞』を読んでいると
「……これ絶対巻き込まれるな」
俺はすぐさま店を閉めて、出かけて行った。