第10話 代替地
夕刻の鐘が鳴ったところで、クルムドから念話が来る。
(マスター、今よろしいか?)
(ああ、かまわない)
(無事、町を出ました。今回の素材と宝物を売却したお金、
金貨68枚と銀貨21枚は、私どもの送還と同時にいつものごとく
マスターのアイテムボックスへ入ります。)
(わかった、あとで確認しておくよ)
(では、送還をお願いします)
「【行商人】送還!」
俺は、アイテムボックスからお金の入っている袋を取り出し金額を確認する。
「確かに…。これで全財産金貨800枚くらいか」
店を閉めながら、今後のお金の使い道を考え悩む。
次の日の朝、食べ終えた朝食を送還していると、
(マスター、見つけました)
(桜、落ち着いて)
(す、すみません。でも見つけました、ここなら一つの町になりそうな広さです)
(それなら、その場所を地図に印をして帰っておいで)
(はい)
これでラルガたちは、集落を立て直して暮らしていけるかな。
あとは、ダンジョンに潜らされている人たちと貴族につかまっている子供たちの救出か。
俺は裏庭に出ると、椅子を召喚してそこに座る。
「少し、待ちますか」
2時間ほど本を読みながら待っていると、楓と桜が帰ってきた。
「お帰り、二人とも」
「ただいま帰りました、マスター」
「マスター、ただいま」
「早速で悪いけど、地図を見せてくれる?」
桜が腰のポーチから地図を出すと、コージに渡す。
「南の海岸あたりになります。
『テセラ』からは森を挟んで西になりますから、見つけにくい場所になるかと」
「うん、上出来だ」
「ありがとうございます」
「では、召喚【クノイチ】」
俺はさらに2人のくノ一を召喚した。
「楓、桜、綾、雪、君たちはダンジョン前で陣を張っている貴族の部隊へ侵入。
ラルガたちの集落から捕らえられている子供たちを救出。
その後、ダンジョンに入りここの鉄の扉から脱出してくること。できる?」
4人はクスリと笑うと、
「お任せください」
「子供たちを救出して見せます」
「そして、必ず全員で帰還します」
「ご安心を、マスター」
「よし、では出発」
「「「「はい!」」」」
くノ一たちは、鉄の扉を開けて中へ入っていった。
「あとは、この地図の場所へ行かないと…」
俺は、着替えを済ませると店のドアに「しばらく休みます」と札をかけて町の外へ出かける。
門の兵士に挨拶を済ませて、町の外へ出るとある程度街道を行き、
「このあたりならいいかな。召喚【原付バイク】」
俺はバイクにまたがると、地図に記してある場所まで一気に走った。
異世界の街道に響く原付バイクの走る音。
この街道は、人通りが少ないため盗賊などの心配はないが万が一のため警戒はしておく。
2時間ほど走ってようやく見えてきた『テセラ』
ここから西へ方向転換して、再び走り出す。
さらに30分ほど走って見つけた。
「…確かにこの広さなら、申し分ないな」
そこは、町一つ分の草原になっていた。
なんでここら辺だけ、草原になっているのかな?
俺はその場でバイクを降りて、原付バイクを送還。
「では、召喚【転移の扉】」
転移の扉を開けると、そこは俺の店の裏庭だった…
半端ない、チートさだな。