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新世のラグナロク  作者: 緋島 奏
序章 新世のアスモディア
9/16

第一章 八 時間は流れる

今年最後の投稿です。

真夜中、少年は手に小さな白い携帯端末を持ってひたすら待っていた。


(遅い…。)

 少年――赤谷 翔は小一時間くらい前からここ、天時学園の校舎の屋上で静かに待機している。指示を待っているのだ。


――ピピピピッ。

そんな夜の静寂を破ったのは小さな電子音。翔の持つ携帯端末だ。


(やっと来たか。)

携帯端末についている数少ないボタンの一つを押して空間ウィンドウを開く。そこに映ったのは翔たちの見知った人物の顔。


「はいはい、第四部隊《落陽》、赤谷。」


いつもの態度で、面倒くさそうに事務的な言葉で応答する。


『準備は?』

「いつでも。」


 そう言って、翔は持っていた端末を空間ウィンドウは開いたままにして地面に置き、すぐ近くに設置していた機械のホロキーボードに指を走らせる。


「えーと、現在地点二八・九AC。周辺二八・二AC。」


 画面ディスプレイに表示された数字をそのまま読み上げる翔。


『…若干高いが、一応誤差の範囲内か。』

「…ですね。」

『これからも何度か同じ仕事に当たらせると思う。』


 翔は画面越しにわかっている、とばかりにうなずいて見せる。


「それじゃ、俺の仕事は終わりですね。」


 そう会話を切り上げ、端末を持って立ち上がる翔。


『ちょっと待て。』


 空間ウィンドウを閉じようとボタンを押しかけたときに声がかった。


「なんですか…」

『例の件はどうなってる? それだけ聞いておこうと思ってな。』

「ああ、伏柊 蓮のことですか。…まだ特には。」

『そうか。』

「もう少し時間を空けてから、ですかね。」

『わかった。何かあったら報告を頼む。』

「うぃす。」


 空間ウィンドウを閉じて通信を切った翔は、下を見下ろした。今は深夜十ニ時過ぎ。夜も更けて結構冷え込んできている。


(帰るか。)

 翔が行っていることを家族は知っているので遅くなっても心配をかけることは無いが、早く帰ることに越したことは無い。

 翔は端末をポケットに押し込んで、設置してあった機械を持ち上げて脇に抱える。秘密行動故、ここで活動していた痕跡が残っていないか確認をした後、屋上の鉄柵に歩いて近づいた。柵に軽く飛び乗って、改めて腕の中の機械をしっかりと持ち直す。


(――はぁ。)

 一度深呼吸して、翔は柵から数十メートル下に見える夜の街へ跳んだ。


                  *  *  *


 蓮の朝は早い。中学校の頃から両親に早起きをさせられていた時の習慣が抜けていないのだ。

 台所に行き、そこに設置された“料理サポートシステム”を使って少し時間をかけて朝食を作る。今日は日曜日だ。学校に行く必要もない。


 蓮は朝食を済ませると二階の自分の部屋に入った。そして机の奥から一つの包みを取り出した。がさがさと包装を開いてそっと中身を取り出した。

 一年たった今でもその鋭さは健在だった。蓮は中に入っていた一振りの細身の短剣を、上ってきた太陽の光にかざしながらそう思った。銀色に光を反射させるそれは錆どころか汚れすらもついていない。ただ柄だけは長年使っていたように古くなっている。


(今更だけど、これもらってもな…)

 今持つ短剣は、昨日の午後に紫織から受け取ったものだ。


「痛っ。」


 なんとなく刃に指をあてて、切ってしまった。鋭さもそうだが切れ味も一年前のままのようだ。

 結局短剣の扱いを決められず、再び包装して、今度は部屋のクローゼットを開ける。実はこのクローゼット、一年前くらいから掃除のとき以外全く開けていないのだ。

 久々に開けたクローゼットの中は少しほこりっぽかった。しかし蓮は特に気にすることもなく、持っていた包みを一番手前の小さい棚の上に置いた。すぐにクローゼットを閉めようと思い取手に手をかけたとき蓮は、クローゼットの一番奥に押し込まれた、今は触ることもしていない黒漆塗りの鞘に入った、降魔刀【八雲】を見た。


これからのため厳しい意見も含めて、よければ感想をお願いします。

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