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新世のラグナロク  作者: 緋島 奏
序章 新世のアスモディア
1/16

プロローグ

以前二つに分けていたプロローグですが、大幅に変更・構成を行い一つに統括しました。

真っ暗な闇の中、必死で足を動かす。目的などはなく、何も考えずにとにかく何も見えない場所を突き進む。


「そうやってまた逃げるの?」


どこかからあどけない少年の声が響く。


「…違う。」


 先ほどの言葉を心の中で何度も反芻しながらゆっくりと否定する。


「でも、今となってはもう何もできないでしょ? …だから君はもうあの時のようにはなれず、戻ることもできないよ。」


 反論する気にもなれず、少年の声を黙ってずっと聞いているうちに少しずつだが、なんとも言えない怒りと焦りが自分の奥底から湧いてきた。しかしそれを形にすることはできない。だから少年の言葉が途切れた時、自分の感情を押し隠すように、すべてを否定するようにして叫んだ。


「…黙れ!」


                    *  *  *


 ――朝。7時55分。

 少年は慌てて家を飛び出した。バタンッと、後ろで扉が乱暴に閉まる音がしたが今はかまっていられない。


「まずい。遅刻する。」


 少年――伏柊ふせらぎれんはそう自分に言い聞かせるように、走りながらつぶやいた。高校入学以来初めての寝坊。もともと朝に強いため遅刻すること自体考えたことすらなかったのだが昨日少し遅くまで起きていたのがたたったのだった。

 ちなみに、今の高校である天時高等学園には数週間前に転校して来たばかりだった。転校して間もないのでクラスメイトと学校への印象を考えると、遅刻だけは何が何でも避けておきたかった。

 大通りを駆け抜け、周りの景色が目まぐるしく移り変わっていく。走りながらポケットの中の携帯端末を取り出して、時間を確認する。

(このままだと間に合わないかもな…)


 

 まだ朝のHRが始まっていないのだろう、あちこちの教室から生徒たちの楽しげな会話が聞こえる。出来るだけ校舎の中では足音を立てないように走り、3階にある自分の教室まで急いだ。



                   *   *    *



「おはよう。蓮。」


 教室の自分の席に着くと、隣の席の女子生徒が挨拶してくる。この女子生徒、速水はやみ紫織しおりとは転校初日に話しかけてくれ、席が隣同士というのもあってすぐに仲良くなった。


「おはよう。」

「今日遅かったけど、何時に家出たの?」

「55分。」

「よく間に合ったね。もしかして…」


 紫織の言わんとしていることはすぐにわかった。


「あー…使った。」

「やっぱりね。そうでもしないと間に合うわけないもんね。」


 その言葉に蓮は苦笑するしかなかった。


 伏柊蓮は《特異者》である。それは驚異の身体能力を備え、特異能力を持つ常人とは大きくかけ離れた異質な存在の通称だった。

 それゆえに今の、周りをはばかるようにしして行われている短い会話もこのことを前提としてのものである。


「使ったの、誰かに見られなかった?」

「大通りだったからな…もしかしたらだれか見てたかも。」

 とはいうものの、本来ここの教室でこういう会話をするのもまずいのだが――


 《特異者》であることを隠しておくには、《特異者》の象徴でもある驚異的身体能力、もしくは特異能力を使わなければいいだけだ。しかし、持つ者はつい使ってしまうもの。普段は使わないようにしていたとしても気を抜いてしまうと今朝のようになってしまうというわけだ。


《特異者》は大きなくくりの名称であり、それを細かく分けると四つの集団に分けることができる。

 一つ目の集団は特異者の中でも特に優れた魔力、通称《魔煌力》を持っている者たち。全国で火、雷、水、風を司る力を使える四人しかいない。地球の五大元素の四つを使いこなせることから《四重属性(クァドラ・エレメント)》と呼ばれており、生まれたときから魔力を自在に操作して特異能力を使いこなせる貴重な存在。ちなみに五大元素であるのに四つしかないのは残りの「土」の属性を扱える者がまだいないからだといわれている。

 二つ目の集団は、全体の一〇パーセントを占める。《四重属性(クァドラ・エレメント)》のように《魔煌力》を持ってはいないが、同じように生まれつき魔力を操作できる数少ない存在。

 三つ目の集団は、全体の二〇パーセントを占める。魔力は一般人より多くは持っているものの特異能力の発動・行使には長い訓練が必要で、《特異者》特有の驚異的身体能力のみが生誕時から自由に引き出すことが可能。

 最後の集団は残りのすべてを占める。ここが最も人数比が多い集団。驚異的身体能力の使用及び特異能力の発動は年齢とともに徐々に引き出せるようになる晩成型で、魔力の操作には相当の練習量が必要な者たち。潜在魔力や驚異的能力は特に感情の高ぶりや環境の急激な変化などでまれに見られることがあり、日常とかけ離れた事が起こり巻き込まれたりしない限り一般人との識別がしにくい。それによってか自分が《特異者》であることに気づかないことが多々あり、死ぬまでそのことに気づけないという者も多いという。


 世間には特異者の力を好む者がいる。しかし、好む者もいれば嫌う者もいる。それのたいていの場合特異能力への妬みや嫉みから来るものであるが、些細なことから発生する余計な争いごとを減らし避けるためにもそのことを話題にすることすらタブーに近い扱いになっているというわけだ。


「あっ、先生来た。」

「えっ。」


 顔を前に向けるのと担任教師が教室に入ってきたのはほとんど同時だった。


「今日連絡することは特になし。各自1時限目の用意を。」


 相変わらずの不愛想さで必要最低限のことだけ言ってしまうとすぐに出て行った。もう慣れてしまったが、この態度に転校当初は戸惑ったものだ。



 クラスメイトのほとんどが全く話を聞いていないが、構わずに教壇の上で淡々と授業を進める教師。


「2412年。今から数10年前だな。みんなも知っている通り新たに元素が発見された――」


 この話は一般の人はともかく、《特異者》である蓮は耳にタコができるほど聞いたことがあるものだ。中学校でも同じ内容のものをしたので、正直のところ高校になってまでしなくていいとは思う。


 新しい元素は地球に落下したある一つの隕石がもたらした。その当時こそ、隕石の被害は大きかったのだが新しく発見された元素はそれ以上に、今までの科学技術を発展させたのだ。

 新しい元素の一つ目は《ソルニウム》。太陽(ソル)の光を受けて、そこから特殊なエネルギーを放出することからつけられた。これを含む《マキシムダイト》の放つ光の色はすべて緑色で、他の《マキシムダイト》との区別がつけられないという欠点がある。

二つ目の元素は《ウルムニウム》。これは《ソルニウム》と同様に特殊なエネルギーを放つのだが、《ソルニウム》のそれより純度の高いものを放ち、この物質を含む《ミラ=マキシムダイト》の発見された数がソルニウム鉱石《マキシムダイト》よりずっと少なかったためとても希少とされている。また、《ミラ=マキシムダイト》の光の色は多種多様で同じ色はただの一つもなく、他ウルムニウム鉱石と区別するときに使われる。


 小さい結晶でも、現存するあらゆる物質よりはるかに多くのエネルギーが大量に効率的に、且つ簡単に取り出せ、幅広い分野で利用できることから発見された当時はこれらの鉱石をありとあらゆる国がほしがったらしい。もちろん鉱石の扱いについては早急に行われた国際連合の話し合いで定まった。

 それから、これらの元素について盛んに研究が行われるようになった。研究自体は進められているのだが、未だ詳しいことはわかっていないというのが現状だ。


 授業の終わりまでもう少しだ。


「発見された《ソルニウム》は量が多かったので世界中にばらまかれて、《ウルムニウム》はその当時最も科学技術と物質保管能力が高く各国からの信頼も厚い日本がすべて保管することにし、もし必要な場合は申請するようにという決定がなされた。」


 そう。しかし今はそれが失敗だったという人が決して少なくない。1か所に純度の高い魔力を放つ鉱石を集めたので日本が受ける魔力からの影響が他国より断然多かった。

 十数年前に新たに発見された自然の最後の2つの元素の影響で、その年以降に生まれた赤ん坊は常人の数倍から数十倍の《魔力》を持って生まれたのだ。魔力が多いと、その分あらゆる身体能力が大幅に向上したり、特殊な能力を有するようになる。そうして生まれた者たちが幸運というべきかはたまた不幸というべきか《特異者》と認識されるようになったわけだ。


 影響はそれだけではなかった。大きな失敗は希少な鉱石を集めて保管したばかりに、宇宙から鉱石を狙って到来した《魔族》と呼ばれる異形の生命体が日本に集中してしまったことだ。




 ――だから、今ではこうも言われる。魔力の影響云々はさておき、単体でさえ地球上の生態系を脅かすほどの力を持った《魔族》を呼び寄せる原因となった新物質の利用研究は、地球史上最大の過ちであり、一刻を争う国際規模の課題である、と。


物語の頭から順に変更も含めて修正を行っていますが、誤字・脱字等は大量にあると思います。気づいた点、気になった点、厳しい意見も含めて、感想などよろしくお願いしますm(__)m

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