時の砂 第一巻
序 章 #全ての始まり
『時間』それは人が作り出した概念なのか? 人は流れる時間に身を任せ 地球を進化させてゆく。
一〇〇年 二〇〇年 三〇〇年 時は過ぎてゆく。一秒一秒の時の流れ
ある少年がこう呟いた。
「時間とは 神が作り出した本なのではないか? 時間はページで その一ページの中に書いてある事が人間が体感している
一年なのではないか―――。」
と。ある少年は寂しそうな顔をしながら一人で呟いた。白く少し長い髪を風に揺らしながら、無数に広がる夜空を見上げていた。
「病気で数時間しか生きれない人達 時間に苦しむ人間は常に奇跡を求めている だけど全て結果は次のページがある限り確定している。
ならば 一つのページを破き それより先の時間を消してしまったらどうなるのか?」
先の時間を消してしまう。これによって世界はどうなるのか? と少年は疑問を抱いていた。そんな疑問も神の子 ガブリエル=マダラだから
こそ持てる疑問であり ガブリエルが立ち上がり指を鳴らすと目の前に無数の本が具現化された 本には一つずつ名前が書いてあり。
「―――、現世の本」
ガブリエルが選んだのは 現世の本。本に触れようとすると 本は自動的に開き、ガブリエルはその一つのページを
破り取った。だが結果は酷な物となってしまった、隔離された時間の流れは単純なもので 最後まで時間が進むと 最初の時間に戻ってしまう。
『ループ』状態。 その隔離された時間に取り残された人たちは、時間が戻ると同時に記憶もなくなりループをしている事を気づく事が出来ない
だが何周にも渡るループの果てに ある一人の自宅警備員が ループの存在に感づいてしまった。
第一章 #出会い
「くっそっ どこを見てもリア充かよ くそっ くっそっ!! あああっ――――! 」
どこを見てもカップルだらけ、本来は暗いはずの街もイルミネーションの明かりで照らされており明るい。そう今日は一二月二五日のクリスマス
なのだ、店でも『カップル限定 半額』だとか言っている始末。彼女がいない隻秀 羅瑠魔には居場所のない日
家にいても 外からカップルのイチャつく声が聞こえ 声を聞きたくないが為にテレビをつけてもクリスマスの番組ばかり、チャンネルを変えても
『クリスマスはやっぱり彼女との大切な日だと思いますっ』
だとか言ってる、家にも外にも居場所がない隻秀 羅瑠魔にとっては地獄の日である。
「ちっ、んだよ―― お前ら何なんだよっ! 」
そう叫びながら 足元に捨てられていた空き缶を強く蹴ると、近くにいた不良三人組の一人に当たってしまった。その不良達は羅瑠魔を
強く睨みつけるとゆっくり立ち上がり。
「おいてめぇ――――」
その不良達のリーダーらしき人物が口を開くと
(あぁ、やばいこれ俺死ぬかも どうしよう誰か助けて)
「何しとんねんゴラッ! 」
心の中で助けを求めるが、そう都合よく誰かが助けに来るわけがなく来るのは怒り狂った不良たちだった。すぐさま逃げ出すが相手は十代後半
こちらは二十代後半、ずっと家に引きこもっている羅瑠魔はスタミナがなく走ってすぐに限界が来たが
甘えてる場合じゃねぇ――! と自分に言い聞かせ走り続けた。前にいるカップルたちを押しのけ前に進んでいるとドンッと女の子と
ぶつかってしまった、謝りたかったが疲れきっており声がでず後ろには三人の不良がまだ追いかけてきていた為、そのまま前に向かって走った
走り続けて三〇分 もう流石に不良たちはいなかった、周りには誰もいなく 噴水の周りに付けられたイルミネーションが寂しく
光り続けていた。羅瑠魔は、はぁ〜 と息を吐き出しながら噴水の縁に座った。
「はぁ はぁ、死ぬかと思ったぜ」
そういいながら頭の中である女の子の事を考えていた。
(あの時ぶつかった女の子 大丈夫だったかな? 見たところ一人っぽかったが)
「あ、アナタは―――」
突然 女の子の声が聞こえ前を見ると、先程自分と衝突した女が前にいた。
「あれ? アナタはあの時―――、あのっ!あの時はすみませんっ! 」
羅瑠魔は慌てながら 地面に土下座して謝った。すると女もすこし慌てながら
「ああっ! 別にいいですよ気にしてませんから! 」
「本当ですか? ありがとうございます あっ 俺の名前は隻秀 羅瑠魔です」
すると女は羅瑠魔に手を伸ばしながら。
「私の名前は 璃雨 聖火って言いますっ よろしくね」
羅瑠魔は聖火の手を握り立ち上がった、二人は噴水の縁に座りゆっくり噴水の水を見ていた
「ここって綺麗ですよね、羅瑠魔もここが好きなんですか? 」
「ここに来たのは今日が初めてさ 聖火さんも見てたでしょ? 僕不良に絡まれてて ハハッ それでこの場所にたどり着いたのさ」
ふたりがいる場所は噴水の水の音しか聞こえなく周りには木とベンチイルミネーションも噴水の周りにしかないため とても綺麗で
とても静かなところであった
「私 羅瑠魔の家に行ってみたいな〜」
「え? 俺の家っすか!? 」
あまりに直球な要求に思わず立ち上がってしまった、すると聖火も立ち上がり 羅瑠魔の手を握る
彼女いない歴年の数 気が付けば二一歳の 羅瑠魔は チャンスはこれだけだ逃すわけにはいかね――! と心で強く思い家に招待した。
ここから家まで 徒歩十分 二人は手をつなぎながら家に向かった。家に向かう途中 クリスマスツリーやイルミネーションなどが栄えており
本来はリア充達を恨むはずの街も 今の羅瑠魔には自分の居場所のように感じた。しばらく歩いているとケーキ屋があり
混んではいなさそうだったので 二人はケーキを買うことにした。
「えっと―― これもいいけど―― あぁっでもこれもいいな〜」
「おいおい 僕はそんなにお金ありませんよ? 」
何気ない会話をしていたが 目の前にいた店員は『まるでカップル』を見るような目で見ていた。
「カップル様でしたら ケーキ三品で五〇〇円になりますよ」
「カッ――カップルですかっ―――!? 」
羅瑠魔と 聖火は同じ言葉を同じタイミングに発した、まさに息ぴったりである。
とっさに羅瑠魔はこの恥ずかしい状況から抜け出したく 適当にケーキを買い店から出たのはいいが―――
(やべぇ――! 部屋片付けてねーじゃんっ! )
羅瑠魔の家は三年間片付けることがなくコンビニ弁当やカップラーメンの容器だらけで ゴミ袋すらも破けており まるで
ゴミ屋敷状態でった。そんなことを考えている間にも家についてしまい とっさに羅瑠魔は
「あっ ちょっとそこで待っててっ! 」
「ん〜 いいよ」
聖火をドアの前で待たせ、羅瑠魔は音速の一〇〇倍の速さでゴミを全て歯で粉々にしすべてトイレに流し
部屋を片付けた もう入っていいよっ! と外で待たせている 聖火を家にいれた。 聖火は部屋を見渡すと
「へぇ〜 綺麗な部屋ですねっ」
「あ、ありがとう」
(そりゃ さっき死ぬ思いで片付けましたからね)
そう思いつつも 羅瑠魔はケーキをテーブルに並べ冷蔵庫に入っているビールをだした
「カンパーイッ! 」
と、二人が同時に言うと コップに入っているビールを一気飲みしケーキを二人で食べた。しばらく立つと 聖火が酔っ払い
ねぇ〜ねぇ〜 ラァルマ〜 と甘い声で羅瑠魔の膝に乗りキスをした。
第二章 #二人暮らし&闇に潜む影
気が付くと俺は寝ていた、目の前に広がる天井 そして毛布とは違う『何か』が上に乗っかっている。俺は確信した―――
「もっ! もしかしてこれは!? 俺は抱いてしまったのかっーーーー!」
「ん、五月蝿いよ ダーリン」
そう眠たそうに 聖火は 羅瑠魔を抱きしめるとそのままキスをして、そのまま二人は眠りについた
目を覚ますと時間は 一〇時にになっていた。
「ん―――。やべ 寝すぎたわ おい聖火起きろ」
そう言いながら隣でうつ伏せで寝ている聖火の肩を叩いた
(さっきまで俺の上に寝てたのに寝相悪すぎだろ)
しばらく立つと聖火は目を少し開け 目をこすりながら起き上がる。
「おはよ〜 よく寝た」
と、言うとそのまま羅瑠魔に寄っかかった。すると羅瑠魔は立ち上がり
「ご飯作ってくる 一時間くらいかかるぞ」
「あ、じゃ私家から荷物持ってきます」
「え!? 」
羅瑠魔は思わず皿を落としてしまった、不思議なことに皿は割れなかった。
「え じゃないよ! 私今日からこの家に住むもんっ だって羅瑠魔が私の初体験の相手だもんっ! 」
(まじかよ… だからカーペットに血が付いてたのか って事は俺の 究極の剣はついに使われたのか! )
内心ドキドキさせながらも羅瑠魔は
「おう! 待ってるぞ」
冷静を保ってるフリをしながら言うと 聖火は家を出た。
「お、おおおおっ俺はっ ついに彼女ができたのかかか!!」
真顔で料理を作りながら叫んでいる光景は奇妙だった
「彼女いない歴年の数の俺にもやっと春が来たのかかっ!! やべぇっ 幸福だ フフッ 」
思わずにやけてしまったがすぐに真顔になった、まるで顔芸である。
その頃 聖火は人気が少ない道を歩いていた、商店街のようだが店は全てしまっており
看板などは全て錆びており壊れかけていた。
「えへへ 彼氏できた! ラララ〜」
聖火はスキップしながら歩いていた。しかし商店街の出口にたった瞬間 突然体が動かなくなる。
(えぇ!? なに体が動かないっ あれ 声も出ないっ)
「少し僕のお話に付き合ってはくれないかね?」
目の前に白く長い髪を風になびかせている少年がゆっくり近づいてきて語りかける。普通とはどこか違う 異質
「君は今が幸せだと思うかい?」
(なによ…! コイツ)
少年は姿を消すと、一瞬で 聖火の正面に現れた
「僕は神の子 ガブリエル=マダラ 話を戻そう 君は―――」
その頃羅瑠魔は料理をテーブルに並べていた。
「遅いな 荷物多いのか? なんだろう…」
(なんだかすごく嫌な予感がするな くそっ気のせいだといいんだがな)
「―――そういう事なんだよ 一度壊れた時間は直らない 人の記憶とは曖昧なものでね」
聖火は涙を流しながら 少年 ガブリエル=マダラの話を聞いていた。
(こんなのって… ひどいよ)
「君は今の僕の話を忘れる――― だけどね 魂に刻まれた記憶は消えない 何周回って思い出すかは分からない
これは君の試練さ いや――― とある青年 隻秀 羅瑠魔の試練だね 彼はこの状況
この異常を治せるかもしれない、元はといえば 全て僕が原因なんだけどね」
ガブリエルゆっくり右手を上に上げる
「それじゃ、この世界を―――」
パチンッと指を鳴らすとガブリエルの声が段々遠くなっていく
「頼んだよ」
第三章 #ループと別れ
「はぁ〜気が付けばもう 十二月三十一日か〜」
「早いわね」
何気なくカレンダーを見たら もう今年も終わりだった。まるで一瞬で過ぎたかのようにあっという間だった
気が付くともうすでに俺たちは一緒に暮らしてた。
(なんだろう――― 記憶が薄れてるっていうか 五日間の記憶がない)
それと同時に聖火も似たようなことを考えていたがお互い口には出さず
「もうすぐ年明けるなっ聖火!」
「そうね〜来年にはもう結婚しちゃう? 」
「ウェッ!? 」
口に含んであった お茶を思わず吹き出してしまった、せっかく用意したコタツも台無しである。
だが買い直すのは年が明けてからでいいか〜 と言う二人のだらしなさがあり 放置である
二人でコタツで寝っころがりながら、テレビを付けると『抜いては行けない24時』と言う馬鹿げた番組がやっていた。
「はぁ あと三〇分で年越すな〜」
「そうだねっ!」
この何気ない会話ももうじき終わりを告げようとしていた。世界のリセット 『ループ』の時が着々と近づいているのである。
聖火は羅瑠魔に抱きつきながらテレビを見ていた、羅瑠魔は顔を赤くしながらただ黙っている
この幸せな時間、全てがリセットさせる。残り時間は残り二〇分
「はぁ〜そうだっ! ねぇ羅瑠魔っ 明日になったら一緒に初日の出見に行かない? あっあとさ 模様替えしない?
せっかく部屋が広んだから家具増やそうよ!」
「ん、あぁ〜そうだな、そうすっか」
「うんっ それでさ――――」
(あれ?聖火の声が遠くなっていく―――、あれ―― あれ)
「ん、もう朝か 俺寝ちまったのか――― あれっ聖火は!?」
起きると聖火の姿はなかった しかも家は聖火が来る以前の状態になっているのである。
部屋住探しても聖火はいなかった。
「どうなってるんだ…… 」
(おかしい、これじゃまるで時間が戻っている?)
終章 #全てに気づく羅瑠魔と全てを忘れる聖火
羅瑠魔は家を飛び出て聖火を探しに行った どこを探しても聖火の姿はない。
雨が降っている中 羅瑠魔は傘もささず走り回っていた。顔が雨でびしょ濡れになり 涙なのか雨なのか分からない位に。
無我夢中で探しているが 水たまりを踏んでしまい 思いっきり転んでしまった
「あれ? ここは」
立ち上がるとそこは 初めて聖火と出会った噴水にいた、もう疲れきっている羅瑠魔は噴水の縁に座り
俯きながら泣いていた、すると突然 女の声が聞こえた 『あの時のように』
「あの――、 大丈夫ですか?」
顔をあげるとそこには聖火の姿があった
「せい―――」
「何でだろう アナタと会ったのは初めてじゃない気がする」
「え…」
(初めて…? もしかして忘れているのか)
「な、なぁ俺のこと分からないのか? 」
「えっと、どこかでお会いしましたっけ? 」
(そうか…、分かった―――)
「あ、いえ 俺の人違いのようです」
(この世界はループしてる)
続く