前へ進む②
星がきれいだ。今にも流れ星が流れそうだ。この夏の時期にはペルセウス座流星群が流れ星を作ってくれる。私が小学生くらいのこと、流れ星が流れている間に願い事を言うと願いを叶えてくれるって言う話を本気で信じていた時期があった。でも、星は一瞬で見つけて願い事を言っても言い出したときには流れ星は消えてしまっている。それでどれだけ落ち込んだことか。どうすれば、流れ星が消えてしまう前に願い事を言うことができるのかを真剣に考えたことがある。流れ星ができるメカニズムとかも学校の図書室とかで調べたものだ。そんなくだらないことを調べるのに没頭していたあの平和な日々が私に訪れるのだろうか?きれいな星空を見ながらそう考える。
魔術が使えなくなった私が役立たず。今まで物語、物事の中心にいた私は少しずつ外野に押しやられていってついに完全な外野になってしまった。外野に押しやられること事態に後悔はしていない。氷華さんのために教太さんのために生命転生術を使ったことには悔いはない。でも、今回のMMの口車に乗せられて魔女の力を無理に引き出したことは後悔している。もっと、ほかに方法があったはず。魔女としての知識を使えば圧倒的力を使わなくても解決できたかもしれない。そう考えると自分の軽率な行動に嫌気がさす。その軽率な行動から生まれた私の弱さに腹が立つ
「どうしたの?アキナちゃん?」
夕食の洗い物を済ませたリンさんが私の座る縁側にやってきた。
「いえ。どうすれば、この弱さを克服できるか・・・・・と」
「う~ん。そうだね。剣はダメ」
ぐさりと私の心の刺さる。
「銃もダメ」
再び刺さる。
「たぶん、他の武器もダメそうだよね」
何本か刺さる。
「知っています。どうせ、私は魔術しかとりえのなかった元魔女なんです」
涙を流しながら結論付ける。
「でも、私は今のアキナちゃんのままでいいと思うよ」
「何でですか?魔術がないと役立たずの私が?」
「魔術を使わないアキナちゃんにはもう優しいアキナちゃんしかいないじゃん。もう、誰もアキナちゃんのことを怖がる人もいなくなる。それはきっと教太ちゃんたちが望んでいたことなんじゃないの?」
普通の女の子になるということだ。それは秋奈さんが魔術を出会う前の姿のことだ。教太さんは確かに私たちが普通の女の子として過ごしてほしいと願っていた。私の不満という形でその願いは叶った。
「下手にそんな状態で戦いに出たらアキナちゃんきっと死んじゃうよ。それは教太ちゃんたちは絶対に望んでいない。だから、アキナちゃんは信じて待ってあげることが大切なんだよ。教太ちゃんたちも帰るところがあるときっと必死に生きようとするはずだよ。それは教太ちゃんの誰も殺さない意思に大きく加担するものだと私は思うよ」
リンさんの前向きな意見を私は否定しない。私は待つだけのヒロインになればいいというのだ。ただ、教太さんたちの無事を願って神に祈りをささげて帰ってきたら暖かく迎え入れる。おいしい料理とかを用意して待ち続けることが教太さんたちにとって生きる糧となる。
――――でも、本当にそれでいいのか?
「待っているだけで何もしないのは魔術を使えないからじゃない。心が弱いからです」
「え?」
握りこぶしを作って強く言葉を叩きつけるように言い放つ。
「力を失って弱くなってしまったから仕方ないと片付けたくないです。私は私のできることをして教太さんたちを助けたいです。それが例え、外道で非道なことでもそれで教太さんたちの危険が少しでも減ることにつながれば、私がどれだけ悪い言い方をされても平気です。私は魔女なんです。そんな悪い言われようは慣れっこです」
そうだ。私は魔女だ。卑劣で凶悪な魔女だ。その魔女が悪いことをしても誰も気にしない。魔女が魔女らしいことをしただけだ。なら、私はこの考えを実行するべきだ。教太さんたちのためにも私は魔術を使える魔女であり続けなければならない。
「リンさん!」
「な、なに?アキナちゃん?」
「用意してほしいものがあります!手伝ってください!」
私は進む。後退してしまった分を埋めるように前に。




