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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
人の領域
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異界にて⑤

魔石とは

魔力を帯びた石の事である。

この石の発見が魔術の発展の要因となった。半永久的に魔力を流し続けることはできるために、電力などを作る際に利用されている。

 着物を着た銀髪の女の人の案内によって外に案内される。広い大理石の部屋は言うなれば、エントランスのような広間だった。その巨大な扉が開くと外はすっかり日が陰っていた。どの世界に行っても夕焼けは同じようだ。日に顔をしかめながら歩いていると階段を下りた先にアキたちがすでに待っていた。俺が来たことに気付くとアキと美嶋が手を振る。俺も駆け足で階段を駆けおりるとそれを察知したかのように巨大な扉が固く閉ざされる。まるで一つの世界の出入り口を閉じるかのように今後の出入り簡単ではなさそうだ。

 アキのもとに行くとすぐに飛んできた質問がこれだ。

「教太さん。空子さんはどうなることになったんですか?」

「え?あ、ああ。大丈夫だ。心配ない」

 そういえば、俺は蒼井のことを話しに来たんだったよな。結局、蒼井のことを口実に俺をこの世界に呼んだだけで実際のところ蒼井たち非魔術師(アウター)のことなんかMMは眼中になかった。

 俺とMMの話したことと言えば、この力のことだ。

 理解し振るえ。

 考えさせられる言葉だ。

「空子はもう大丈夫なのね?」

「ああ、マラーが作り上げた非魔術師(アウター)の武器は俺たちの世界で開発されて作られ使われたものを同じようにこちらの世界で作れるわけでもないし、無効化される武器を輸入もできない。だから、大丈夫だろうって言うことだ」

「そうなんですか~」

 アキがホッと胸をなでおろす。

「それでこれからどうするんだ?」

 霧也が尋ねる。

 ここに来た目的が早々に終わってしまった。戻れるのは早くて明日だ。今日、一日はここに泊まるしかない。

「どこかに寝泊まりするところはないのか?」

「なら、私の家はどうですか?長い間使ってないですけど」

「いいわね。教太は適当なところに縛り付けておけば、襲われる心配もないし」

「なんで俺がお前らを襲うことが前提に話が進んでるんだよ」

 今までそんなことあったかよ。いつも美嶋とは同じ部屋で寝泊まりしてるだろ。

「でも、家には食料がないですよ」

「なら、適当に食べていくとするか。近くにいい店を知っている」

「本当ですか、風也さん」

「ああ、肉がうまくて最高の店だ。よく梨華と行っていた」

 なるほど、ふたりでな。

「ならさっそく行こうじゃないの」

「ちょっっっっっっっっと!待ったーーーーーー!」

 どこから聞こえた声なのか分からないくらい遠くに響く男の声がした。

「げ」

「うわ~」

 なんか急に霧也とアキが嫌そうな顔をしたのはなぜだ?

「どこから聞こえたのよ?」

「こ・こ・だ~!」

 振り返るとその声はMMのいる組織本部にほど近いレンガ作りの建物の屋根にいた。両握り拳を天高く上げて首から布のようなものがそよ風を受けてなびいている。しかし、夕日のせいで影しか見えない。

「ようやく見つけたぞ~!」

 そういうと男は足のばねを利用して跳び上がると空中で後方伸身宙返り4回ひねりを加えてながら俺たちのところまで飛んできた。高さは10メートルは普通にある。そんなところから飛んできた。

「あれ?普通なら死ぬんじゃね?」

 すると霧也が冷静に答える。

「大丈夫だ。あの程度死にはしない」

 そういうと男はそのままどんと地面に着地すると周りの煉瓦の地面が剥がれる。男は長い髪をちょんまげのような感じでまとめてある黒髪の男。顔を上げるといっしょに首に巻いてあったマフラーも空気抵抗を受けながら上がる。全身の服装は黒のジャージで身長は俺とあまり変わらないくらいで本当に日本人って言う顔をした若い男。年は霧也とあまり変わらないくらいだろう。

 両手を腰に当ててよく通る大きな声で叫ぶように話す。

「あんたが国分教太か~!」

「は、はい。そうですけど」

「そうか!そうか!アハハー!」

 バンバンと背中を何度も叩かれる。何だ?こいつ?

「おお!そうだ!そうだ!まだ、わしの自己紹介がまだだったな!」

 そういうとバック転をしながら数メートル下がる。

「世界のはるか東に位置する極東の島国!その小さな国でありながら世界にその名を轟かせる日本!そのひのんの・・・・・カット」

 途中で噛んでしまったのか話を止めた。

「くそ~、こういつも感じなところで噛んでしまうのだよな~。よし!テイク2!行くぞ!」

「はぁ?」

 同じ反応を美嶋もする。

 するとその男は俺の目の前にまでやって来た。

「え?そこから?」

 すると男は同じようにバック転をして数メートル再び下がる。

「世界のはるか東に位置する極東の島国!その小さい国でありなななら世界に・・・・・カットー!」

「またなの」

「やっぱり、どうしてもうまくいかないな。のどの調子でも悪いのか?おい!右京!」

 するとどこから出てきたのか袴を着たサムライのような細くて弱そうな男が現れた。

「のど飴ですね」

「ありがとう!」

 男は右京という男からのど飴をもらうとそれをかみ砕いた。飴ってそうやって食べる食べ物だっけ?

「よし!喉!良好!では!行こう!テイク3!」

「まだやるの?」

 つーか、結局あんた誰なんだよ。てか!また俺の正面まで来てバック転するところから始めるのかよ!

「はるか東のあ!セリフ間違えた!もう一回!」

「いい加減にしろよ!何度やる気だよ!」

「何度でもだ!行くぞ!テイク4!」

 俺の前まで来てバック転する。

「世界のはるか東に位置する極東の島国!その小さな国でありながら世界にその名を轟かせる日本!その日本を誰よりも愛する!この国において知らない者はだれ一人といない!最強無敵、泣く子も黙る混沌無敵の男!それがワシ!ワシのなみゃえは・・・・・カット」

 あっとちょっとで名前だったぞ!後、無敵って2回言ったぞ!

「テイク5!」

「まだやるわけ!」

 美嶋もご立腹だ。

「世界のはるか東に」

「ああ、バック転はもう省略するのか」

「おお!忘れていた!」

「教太のバカ!」

「え?俺のせい?」

 すると俺の正面まで来てバック転をする。失敗する。再び俺の前まで来てバック転をする。今度はちゃんと決まる。

「世界のはるか東に―――」

「で、アキ。あいつ誰?さっきから鬱陶しいんだけど、知り合いなのか?」

「は、はい。一応そうですね」

「アキナ」

「なんですか?風也さん」

「後は頼んだ。飯代は後で俺が全部出すから!」

 そういうと風属性魔術を発動させて飛んで行ってしまった。

「待ってください!私も行きます!」

「それだけは許さん」

「それだけは許さないわよ!」

 俺と美嶋でアキを捕獲する。こんな気違いみたいな奴と取り残されるのは嫌だ。絶対に嫌だ。

 アキはため息をつきながら渋々残ることにしたようだ。でも、その気持ちわかる。

「おい!聞いていたか!」

「聞いてるわけないでしょ」

「そうか。ならもう一度!」

「テメー!美嶋!」

「あ、あたしのせい?」

 当たり前だろ。

 バック転してから何度目になるのか数えるのも面倒になるが自己紹介を始める。

「世界のはるか東に位置する極東の島国!その小さな国でありながら世界にその名を轟かせる日本!その日本を誰よりも愛する!この国において知らない者はだれ一人といない!最強無敵、泣く子も黙る混沌無敵の男!それがワシ!ワシの名前は徳川拳吉だー!」

 その瞬間、ドーンと背後で色のついた煙がタイミングよく爆発して上がる。

「さすが、左京!なかなかのタイミングではないか!」

「はい。ありがとうございます」

 今度は別の袴を着た小柄の男が出来てきた。左京というらしい。

「で、結局のところ誰なんだ?」

 アキに尋ねる。

「いつもこう長々と突き合わせておいて重要なところが抜けているんだから」

 アキがイラつきながら小言を言うところを始めて見た気がする。

「あの人の名前は自分で言っていましたけど、徳川拳吉さんと言います。ここに向かう際に見えた天守閣にある政府の中央局の長です。つまり、この国を治める将軍様です」

「「しょ、将軍かよ!」」

 美嶋とハモる。それもそうだ。だって、将軍だぞ。

「アキナの言うとおりだ!ワシはこの国を治める第34代征夷大将軍の徳川拳吉だ!よろしく頼むぞ!」

 そうか。俺の世界では幕府はすでに潰れてしまったけど、この魔術の世界においてはまだ徳川幕府が生き残っているのか。ということはこのやたらとめんどくさいジャージの男が徳川の子孫ということかよ。

「え?徳川家康の子孫なの?」

「そうだ!」

「でも、家康って鳴かぬなら泣くまで待とうホトトギスって言うのあるくらいだから、もっとどっしりと構えた口数の少なさそうなイメージがある」

「教太。その発言バカみたいに見えるわよ」

「う、うるさい!」

 イメージだ!イメージ!

「それで拳吉さんは何の用ですか?私たちはこれからごはんなんですけど」

 こうも分かりやすく相手を拒否するアキを見るのは何か新鮮だ。

「それを聞いてワシはぴんときた!ワシとこれからいっしょに食べないか!」

「嫌です」

 アキが即答で拒否した!

「ハハハ!そんなこと言わずに行くぞ!」

「アキ。無視されたぞ」

「いつものことです」

 ため息を吐くアキ。

「じゃあ、行きますよ」

 そういうと拳吉が歩いていく方とは逆の方向にアキが歩き出したので俺たちもそれに従う。なんかそっちの方がいい気がした。

「待て待て!どっちに行くんだ!」

 そんな声が聞こえると俺たちの頭上を回転しながら飛び越えてきて目の前に着地する。

「ワシの行きつけの店がある!そこに行くぞ!」

「嫌です」

 また即答だと!どんだけ拳吉のことが嫌いなんだよ!

「そう言わずに行くぞ!中京!上京!下京!この者たちをワシの行きつけの店に案内をしてくれ!」

 そういうと4人のさっきとは別の袴の男たちがどこからともなく現れて俺たちを囲む。

「アキ。こうなったらどうすればいい?」

 アキは暗い表情をしながらため息をついて答える。

「もう、無理です」

 あ、諦めた。

「後で逃げた風也さんどんな制裁を与えようか考えておかないとな~。アハハ。ハハハ」

「おお!アキナも楽しく笑っておる!ワシも楽しくなってきたぞ!」

 おい。空気読め、将軍。

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