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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
真の領域
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青炎の悪魔④

 風夏は全身に風を纏わらせて空を飛ぶ。対して俺は建物の間を原子の衝撃波(アトミック・ショック)と龍属性の風属性を屈指しながら飛んで風夏の後を必死に追いかける。このままだと香波が危ない。あんな姿を見れば誰だって厄を呼ぶ悪魔だって分かる。特に戦いを食らう風夏は迷うことなく香波に牙をむく。その前にどうにかして止めなければならない。すると風夏は下を見て降りてきた。俺を見たわけではない。通りの方に目をやっている。

 俺も近くまで来て止まるとそこにひとりの20代半ばくらい男がいた。

「状況を教えなさい、火宮」

 火が名前の中に入っているということは風夏と同じ機関出身者。

「はい。ただいま戦っているのはデカい男の方が七賢人らしいです。第何までは特定できませんでした」

 戦っている相手は七賢人だと。キュリー以外にも七賢人がいることに驚きだが、遠目から見た青色の炎といっしょに香波も見えた。少なくとも香波は生きているがこのまま放置し続ければ強力な七賢人の前に香波が殺される可能性がある。風夏よりも先に。

「それと戦っている相手は黒の騎士団の悪魔術を使う少女です」

「キツネ目をした男がいっしょにいたっしょ?」

 そうだ。香波といっしょにサイトーがいたはずだ。オーストラリアに来る前にあれだけ人数を相手にして勝っていたサイトーなら七賢人と対等に―――。

「いえ、自分は確認していません」

 え?

「通報を受けて自分が駆け付けた時にはすでに七賢人と悪魔術を使う少女だけでした。あたりには青色の炎が広がっていて町がめちゃめちゃになっていました。一般人の避難は完了しましたので後は」

「わたしがやる」

「待て!」

 飛んで行こうとする風夏の手を掴む。

「邪魔をするな、国分教太。わたしの邪魔をするというならばお前を戦いを広げることを容認する分子として先に殺す」

 殺気立つ風夏に思わず手を離してしまいそうになるが再びぎゅっと握り直す。今までに体験したことのない重圧だった。俺の恐怖や緊張感は常にゴミクズが緩和していたが風夏から発する重圧からくる恐怖に俺を支えるゴミクズまでも怯えているように思える。

「離しなさい。これはわたしの戦いを潰すという私的な理由ではない。あの炎をこのまま野放しにしておけばこの国にどんな被害が及ぶか分からない。それだけ犠牲者が出るか分からない。これはあなたの言う誰も殺さないという意思にも沿ったものっしょ。なら、この手を」

「離さない」

 風夏の言うとおり香波を止めることであの青色の炎の被害者を出さないための手段だ。だが、それでは助からない人物がいる。それは香波自身だ。いくら悪魔の力に触れてしまったからと言っても香波は俺の大切な友人だ。魔術と全く関係のない世界から連れ込まれた被害者だ。

「なんだ?その眼は?」

「わたしから真っ向から勝負する気?」

 真っ向から勝負して風夏には勝てない。絶対に。でも、俺は風夏の手を離さない。

「頼む」

「何を?」

「香波は・・・・・俺が止める。力以外の方法で風夏のいう戦いという奴を俺が止めてやる」

 風夏は驚愕したようにキョトンとしてぷっと笑う。

「なんだよ!笑うなよ!」

「だって、何を無理なことを言っている?力以外で戦いを止める?あの青色の炎が見えない?」

 風夏の指差す方に見える青色の炎を見ればその炎の毒々しさと邪悪で混沌とした様を見れば、問答無用で力で押さえつけて消すしかないように思えてしまう。だが、俺は一度あの青い炎を教術に頼らずに沈めた経験がある。あの時は比べ物にならないほどの強く邪悪な炎だが―――。

「やってやるよ」

 声が震えているのが自分でも分かった。それを風夏は指摘せずに俺の言葉を聞いた。

「止めてやる。戦いで戦いは止めることはできないことをあんたに証明するために。誰も殺さない意思を貫き通すために」

 風夏の握る手を離してゆっくりと香波の元へ原子の衝撃波(アトミック・ショック)と龍属性の風属性を使って飛んでいく。風夏は追いかけてくることはなかったが何かをつぶやいた。

「風也みたいなことを言う」

 風夏を纏う風の音でしっかり聞き取ることはできなかった。

 振り返るのを止めて前を向く。

 青色の炎の塊が見えてきた。

「香波。待ってろ。今すぐ不安の沼からお前を引っ張り上げてやる」

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