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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
真の領域
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魔術師の手品①

「・・・・・分からん」

「何やってるの?」

 翌日、妙な疲れが抜けきらない中起きる。サイトーに完全にベッドが占領されて床の上で丸くなるようにして眠りについていたせいで体の節々が痛んだ。ハンナは俺たちがここを初めて来た時と同様に散らかされた部屋の隅に布団の塊となって眠りについていた。

 今度の俺のやることと言えば、とりあえずシンについて知ることだ。眠れば、シンもといゴミクズのいる無の空間へ行くことができるかと思っていたんだが行くことはなく朝を迎えた。俺の意思で一度も行ったことはない。ゴミクズの声は厳しい戦いの中で何度か聞こえていたがあの無の空間へはイサークの一件以来一度も訪れていない。あの空間でなければ、真剣にゴミクズと話すことはできない。シンを知るということも難しくなる。というわけでどうするかと考えているだけでも時間が無駄だと考えた俺は少し俺の知る神の法則に触れることにした。というわけでプレハブ小屋の外に設置されていたベンチとテーブルで元の世界から持ちこんだものを広げている。途中、サイトーと香波が買い出しに出かけると言って出かけてしまったのを確認した後にそれを何なのかとレナに尋ねられたので答える。

「学校の宿題」

 その化学の宿題だ。俺にとっての神の法則の一部である化学を知ることが神の法則を知ることにつながるのではないかと考えたからだ。そうすれば、ゴミクズがどうやって神の法則を知ったのか情報が得られるかもしれないという考えからの行動だ。他に理由があるとすればいい加減に夏休みの宿題に手を付けて行かないと元の世界に帰った後が大変そうだからだ。アキと美嶋も俺と同じように学校の宿題を持ってきているはずなんだがやっているのか分からない。アキはしっかり者だから陰でコツコツやっていそうだ。美嶋は・・・・・・たぶんやっていないだろうな。

「ふ~ん。教太の世界ではこんなことを勉強しているんだ」

 と興味津々に見つめる。

「・・・・・あ、物理もあるんだ」

 レナの言う神の法則だ。俺の苦手な科目でもある。今は波の性質とか言うのをやっている。魔力にも人それぞれに特有の波長を持っているから関係性があるようにも思える。

「これって誰でも勉強できるの?」

「学校に行っていれば聞かないっていうことはないと思うぞ」

 実際に中学生の時に理科の時間に物理を少しやった記憶がある。すごく地味で印象は薄いが理科の実験の中では一番地味だからこそ覚えている。台車を坂道から滑らせて重りをつけるとスピードが上がるだの上がらないだのなんでこんなことやるんだよって思いながら隅っこで見ていた。

「学校で教えてくれるんだ」

「ああ。こっちの世界では教えてくれないのか?」

「教えてくれない・・・・・のかな?僕は学校に行っていないから」

「え?なんで?」

 と聞いてしまったと俺は思った。イギリス魔術結社から住む場所も家族も追われて性別を偽って隠れ暮らしているレナに学校何ていうものに言っている余裕があったとは到底思えない。聞いて後悔するがあっさりとレナは答えた。

「家の家訓で学校には行かない方針になっているんだ」

「え?」

「僕らに神の法則に関する資料を残したトーマス・エジソンは学校に行っても的外れな質問ばっかりで授業全体を妨害してばかりだったから学校を追い出されたらしくて、それを不服だと思ったトーマスはそれ以降エジソン家の人は学校に行かせなかったんだよ」

「なんだよ、それ?」

 確かにエジソンは足し算引き算の問題を出題された時に出した質問はどうしてリンゴを使うのはもしも運んでいる最中にリンゴを失くしたどうするんだとかいう質問ばかりをしていたと俺の知識の中にもある。が、こちらの世界ではそれを不服に思ったのか一族全員を巻き込んで学校嫌悪の体制が出来上がっていた。

「理不尽だよね」

 まったく、理不尽だ。

「どちらにしても魔術世界の学校では物理を習わないのは確かだよ」

「やっぱり」

「概念は存在すんだけど、それを広めようとしないんだよね」

「え?」

「資料には重力を見つけたニュートンとかパスカルが見出したパスカルの原理とかフックが発見したフックの法則とか魔術が誕生する17世紀以前に発表された物理法則はたくさんある。それを歴史の資料にすら乗せられていない。これっておかしいことだよね?」

 いくら魔術が進んでいると言っても全くそのことが知られず広まっていないのは確かにおかしい。まるで誰かが広まることを拒んでいるように思える。レナが追われている理由も物理学に関する情報と知識を持っているからだ。レナを狙っているのはイギリス魔術結社だ。彼らが魔術を発見して広めている。

「・・・・・魔術以外が広まることがそんなにタブーなのか?この世界は?」

 魔術について詳しいわけではない非魔術師(アウター)のレナに聞いても答えが分かるわけでもないがレナは俺の向かいの席に座って俺の宿題の冊子を眺めながら答える。

「タブーじゃないの?僕が追われている理由も多分そのせいだし」

「あ」

「サイトーから聞いているんでしょ?なら、気を使わなくてもいいよ」

 笑顔で俺に告げるがその表情は作りものだってことはわかる。本当は辛いのを隠している。家族を失われて故郷を追われて今も自由を殺して隠れている。彼女のために何かしてあげたいと思ってしまう自分がいる。でも、やることが多すぎるし何よりもイギリス魔術結社という巨大な組織と神の法則という巨大すぎる問題に俺が対処できるレベルを超えている。

「僕は戦うから」

「戦うって?」

「この魔術世界と」

 また、デカい相手だな。

「この魔術世界は魔術師や教術師はもちろん僕ら非魔術師(アウター)の知らないことがたくさんある。それを必死に隠そうしているのはイギリス魔術結社」

 レナが追われている理由もその隠していることが要因だ。

「レナはどうして物理の知識を持っていることが狙われる原因になるか分かるか?」

 知っていても殺すまでやるのは行き過ぎな気もする。いくらタブーだからと言っても過去に重力や圧力を見つけだしてそこに法則性があることを見つけた偉人たちと同じような人が現れて新しく法則を作り出す可能性があるはずだ。それを完全に食い止めるのは人をひとりひとり管理する以外方法はない。そんな方法存在する訳がない。

「原因は・・・・・たぶん昨日教太に言ったエネルギー論だと思うんだよ」

 熱エネルギーとか運動エネルギーとかか。あまり聞かれるとせっかく一晩立ってバカ太が教太に戻ったのが逆戻りしそうだ。

「すべてのエネルギーは魔力エネルギーから変換されて発生しているって言ったよね?」

 魔術を発動する時に魔力を流してその魔力が火属性魔術の火に代わるように魔力エネルギーが熱エネルギーに代わったとかいう奴だったか・・・・・。

「魔力エネルギーから熱エネルギーを作り出してその熱エネルギーは運動エネルギーに代わりえるんだよ。例えば、魔術でお湯を沸かしてそのお湯でプロペラを回すことが出来るとか。もっと言えば、そのプロペラが回ることで電力を作り出すこともできる。電力は電気エネルギー。つまり、すべてのエネルギーは蜘蛛巣みたいにつながっていると僕は思っているんだ」

 俺が日常的にコンセントを刺して電気で扇風機を動かしたりIHとかでお湯を沸かしたりと熱エネルギーから運動エネルギーを発生させてそれから作り出した電気エネルギーで物を動かしたり熱を起こしたりしている。それはすべてのエネルギーから別のエネルギーへ変わっているということだ。

「それはきっと魔力エネルギーだって同じだ」

 そこで俺はようやくレナの持つ考えがぶっ飛んでいることに気付いた。イギリス魔術結社がレナの物理法則という神の法則を広めさせないように必死になっている理由。それはMMも懸念していた世界のバランスに通ずる問題だ。

「運動エネルギーが魔力エネルギーに変えることが出来れば魔術が発動できる」

「・・・・・やっぱり、教太はバカ太じゃなかった」

 悪かったな。

「僕がこの話をして最後まで聞いてくれたのは君が初めてだよ。それで今の考えにまでたどり着いたのも」

 俺が初めて。いや、誰も考え付かないことだろ。魔術世界では魔力は魔石という資源か魔術師、教術師が持つものしか利用できないとされている。工業的に使用しようとすれば、魔力の使用制限のない魔石に頼るしかない。そのために電力とかは常に不足気味だとアキが言っていた。その魔石を作るために魔術師から魔力を奪って人工魔石とかいうものまであるんだ。だが、そんなものが必要なくなる概念が隠れていた。

 エネルギー論。魔力は熱から運動から作り出すことが出来る。簡単に言ってしまえば、自転車でライトの明かりが作り出せる感覚で魔力を作れてしまうのではないかというものだ。

「それって不味くないか?」

「何が不味いの?」

 レナがキョトンと首をかしげる。レナは非魔術師(アウター)たちが密かに魔術師たちに恨みを募らせていることに。彼らには魔術師に対抗する手段がないから今は何も起きていないが今後、魔力を簡単に作れるようになれば魔術を使う非魔術師(アウター)たちが復讐を仕掛ける。この魔術世界は殺戮の地獄と化す。

「教太?」

 心配そうな眼差しで見つめる。

「顔色が悪いよ」

「あ、ああ」

 俺はどうすればいいのか?レナをこのまま放置すれば非魔術師(アウター)たちに魔術師と戦う武器を持たせてしまう。彼らの執念は魔術師を勝る。実際に魔力を奪われて魔術無効化武器を手にした仮面の女マラー一味は俺たちを追いつめた。アキなんて死にかけている。そんな概念をはたしてこのまま野放しにしていいのか?この魔術世界にはたくさんの人々が暮らしている。俺の住む世界と同じように。あの居酒屋でそれを俺はひしひしと感じた。あの人たちのことを思えばレナの概念を否定して破棄させた方がいいのかもしれない。だが、新しい者への探求心はそう簡単に止められるものじゃない。魔術を知った俺がそうであったように。

 なら、どうするべきか?

「消すのが一番安易で確実な方法よ」

 声が聞こえてレナが思わず振り返って立ち上がる。俺も座ったまま声のした方を目を送る。そこには薄い金色の髪に白い肌の女性。茶色のコートで体格までは分からないがゆっくりと顔をあげて見えたその顔は可憐で美人だ。吊り目のような青い瞳で俺たちを睨む。いや、俺たちではなくレナを睨んでいた。

「レナ・エジソンね?」

 レナは答えることなく俺の背中に隠れる。その手は小刻みに震えていた。

「否定しないということは間違いなさそうね。一応、聞くけど投降する気はない?」

 ゆっくり歩み寄ってくる女性から感じられるのは敵意のみ。しかも、それは俺を透過してレナに注がれている。だが、俺にはレナを守りたい。彼女は普通の女の子なんだ。アキたちと同じ。

 レナの姿をアキと合わせると余計に守りたくなった。

「おいおい。一方的に突っつき過ぎだろ。こいつが怯えてるぞ。まずは名前を名乗れよ」

 間に入るように立ちふさがると女は足を止める。

「そうね。そこのレナ・エジソンもきっと知らないだろうから教えてあげるわ」

 コートを脱ぎ捨てると黒のタイツに青のスカート。腰から十字架がぶら下がっているウエストチェーンがあり白のワイシャツを着て紺のセーターを着ている。そして、その投げ捨てたコートが俺たちの視界を一瞬遮るとその女の手には剣が握られていた。

「え?」

 思わず声を出してしまった。まるで手品のように現れた剣は銀色の両刃の中央には紺色の下地にブルーライトの模様の入った細い剣を突きつけるように構える。まるで騎士のように。

「私はイギリス魔術結社の七賢人は第5の代理であるキュリー・シェルヴィー。以後お見知りおきを」

 剣を手に取った時の圧と七賢人であるという宣言から察するに彼女はレナを追いかけてきた追手だ。そして、同時に俺が歯が立たなかった七賢人は第6のグレイよりも上位に値するキュリー・シェルヴィーからは強者の雰囲気が漂っていた。

 まだ、シンの力の向上の意向を決めただけで何もしていない。いや、これがいつも通りなのかもしれない。

「下がれ」

 レナに言ってから左手に力を込めると手首を中心に青白い五芒星の陣が発生して左手を覆うように赤黒い岩が覆うがそれが手のひらについとられるように集まって剣を生成する。

「龍属性の教術。おもしろいわ」

 さすがに相手も驚いていた。法則上は何も問題のだが教術として使用されているところは魔女のアキでも見たことのないことだ。その生成した赤黒い岩の剣を構える。

「こいつは渡せない」

「交渉決裂か。分かっていたことだけど」

 細剣を構える。

「あなた名前は?」

 イギリス魔術結社の一員であるが俺の顔を見て俺がイギリス魔術結社が狙うシンの力を持つ国分教太だってことは分かっていないようだ。だが、七賢人を名乗る以上手加減している状況じゃないことは確かだ。

 結局、俺は戦いの中でしか強くなれない。リュウに龍属性の強化してもらった時と同じように。

 同じように右手にも力を込めると同じように手首を中心に青白い陣が発生すると肘から手先にかけて黒い靄に覆われる。靄とそうでない空間の間に黒い灰のような物も同時に漂う。破壊の力だ。それを見たキュリーはその眼を大きく見開いた。

「・・・・・破壊の力」

 驚きと共に知っているような口ぶりで剣を構える身を低くした。剣を持っていない方の手を腰の方に回して構える。答える必要も無くキュリーは俺の名前をつぶやく。

「国分教太とかいう少年ね。あのシンさんの力を受け継いだ人」

「レナよりも俺の方がイギリス魔術結社としては重要なんじゃないのか?」

 レナへの注意を俺の方へと向けさせようと試みる。

「別に私はレナ・エジソンを殺すように命を受けているからそれ以上のことをする気はないわ。それにこの剣になるべく人の血を吸わせたくない。シンさんとは数カ月の付き合いだったけど、どれだけ強いかは肌に感じて今でも覚えているわ」

「え?」

 シンと数カ月過ごした?確かに他の奴らよりも黒い靄を使った時の反応が早い気がする。そもそも、先に龍属性の教術を見せている。普通ならそこでこの黒い靄も龍属性魔術の作用だと考えるのが妥当な気もする。それを何も怪しまずにシンの力の保持者だと認識して持っていた情報から俺が国分教太だと判断した。

 こいつは何者だ?

「シンさんの力を相手にするのだから手加減はできそうにないわ。初めから本気で行く!」

 地面を蹴って薄い金色の髪をなびかせて一気に俺の元に接近してくる。そして、手に持つ剣で俺を突き切ってくる。その斬撃を赤黒い岩の剣で防ぐ。そのまま受け流すように俺の頭上を滑るように斬撃が通る。ぶつかり合う細剣と赤黒い岩の剣の接触で火花が散る。押し上げるように剣をはじいて距離を取る。だが、キュリーはそれを許さないとすぐに切り替えして突っ込んでくる。基本はフェンシングスタイルのフォームで突くようにして俺に攻撃を加える。それを赤黒い岩の剣で防ぐ。隙を見て破壊の力で剣を破壊しにかかるが、身をひるがえして剣を引いてかわす。一旦距離を置いてから再び剣を突いてくる。その攻撃と行動から破壊の力から剣を守っている。しかも、魔術らしきものも使ってこない。

 距離を置いて剣の間合いに近づこうとするときに一瞬だけキュリーと目が合った。その眼で俺を見ていた。岩の剣を黒い靄を。

 再び鍔迫り合いになって押し弾いて距離が空くとキュリーはゆっくり剣を大きく回すように動かして自分の顔の前で立てる。今度は自分から向かって来る気がない。今までの戦いの様子から分かる。

「様子見かよ!余裕だな!」

 右手の元素を集める。集めた状態で今度は自分から突っ込む。岩の剣で斬りかかるとそれを素直にキュリーは剣で受け止める。そこに右手に集めた元素を向けて一気に解放させる原子の衝撃波(アトミック・ショック)でキュリーを吹き飛ばそうと攻撃を加えるがまるで跳ね返ったように俺の方に原子の衝撃波(アトミック・ショック)の衝撃波が飛んできて吹き飛ばされる。

 肺が潰されるような感覚に襲われて一瞬呼吸が出来なくなる。地面を何度もバウンドして止まる。

 どうして俺が吹き飛ばされた?

 その疑問は立ち上がってキュリーの方を見るとキュリーの左手には手のひらサイズの手鏡が握られていて分かった。俺はその魔術を知っている。

「反鏡・・・・・魔術」

 笑みを浮かべると剣先を再び俺に向けてその場で素振りのように突くモーションを連続で繰り返すと氷の針が俺に向かって飛んできた。

「マジかよ!」

 破壊の力を発動させて氷の針を破壊して難を逃れるが、その隙を見て再び一気に近づいてきた。すぐに動ける状態じゃない。今の右手は破壊の力が働いている。ならばと、破壊の力を地面に伝わらせてキュリーの足場を破壊する。大きな砂埃が起こる。すぐにキュリーが砂埃を切って出てこない。何か魔術を発動させたようにも見えないから破壊された穴に落ちたようだ。今の内に距離を置いて―――。

 ジリ。背後で足音が聞こえた。

「教太!後ろ!」

 レナに言われる間もなく赤黒い岩の剣を振り抜こうとするがそれよりも早くキュリーの蹴りが俺を蹴り飛ばされる。普通の女の蹴りではない強力な蹴りで俺は何度でも地面をバウンドして通りのゴミ箱に激突してゴミをまき散らしてようやく止まる。

 俺はすぐに立ち上がる。レナから遠ざけられるように飛ばされたからだ。そのキュリーはゆっくりと怯えるレナに近づいていた。

「させるか!」

 龍属性の風属性の赤黒い風と原子の衝撃波(アトミック・ショック)を使って体当たりをするつもりでキュリーに一気に近づく。が、阻まれた。ガンと何か壁に激突して額を切って血が出る。

「な・・・・んだ?」

 キュリーは答える。

「物理結界よ。今の体当たりはどう考えても物理攻撃でしょ」

 余裕そうな表情を見せる。痛む額の痛みに鞭を打つ。

 激突の衝撃で倒れそうに体から踏み込んで掛けて岩の剣で斬りかかりに向かう。

「うおおおおぉぉぉぉ!」

 その攻撃をキュリーは受け止めて鍔迫り合いになる。同時に立ち位置も変えさせる。レナが背後に来るように。

「足元を破壊された時にどうやって俺の背後に近づいた!」

「どうやってって透明化を使ったまでよ」

 その魔術は知っている。俺が初めて魔術師と戦った時、ウルフに不意打ちをする時にアキが使っていた。攻撃を跳ね返した反鏡魔術、剣を突いたときに発生した氷の針、体当たりを防ぎ守った物理結界。どれも俺の知っている魔術の類だ。ただ違うのは―――。

「いつ発動した!」

 鍔迫り合いで押し弾く。するとキュリーは笑みを見せた。いたずらを仕掛けている美魔女のような笑みを浮かべて答えた。

「手品よ」

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