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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
真の領域
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刺す殺気は何処へ②

 長くて薄い金色の髪につく水滴をバスタオルで丁寧に拭き取って更衣室にある。髪の毛を乾かすための乾燥機でくしで髪をときながら髪を丁寧に乾かす。この乾燥機はレベルの低い火属性魔術を常に発動させている。奥に火属性魔術師がいて交代制で魔術を発動させているとのことだ。ご苦労なこと思いながらだと髪を乾かし終わると白の下着を着て黒タイツを履いて青のスカートを履く。スカートの腰にはベルトを通して十字架付きのウエストチェーンをつける。上はインナーを着て白のワイシャツを着て紺のセーターを着てコートを羽織り、荷物を手に持って更衣室から出る。行き交う人々の目線を気にせずにまっすぐ公衆浴場を後にする。

 和気藹々とした和やかな雰囲気が漂っている。ここでことを起こすことにためらいを覚えてそのまま立ち去る。馬車とバスと人が行き交う大通りを避けるようにして暗い路地に入る。

「おい。待てよねーちゃん」

 目の前にガラの悪そうな男たちが3人。その青い瞳で睨むと男たちは逆に興奮したように笑顔を見せる。

「ここいらで見ない顔だな」

 ただ、無言で睨む。

「ねーちゃんきれいだね。これから俺らと遊ばな?悪いようにはしないからさ」

 一人の男が体に触れようとするところを体をひるがえして躱す。

「おいおい。別にちょっと遊ぶだけだって。つっても朝までは帰れないかもしれないけどさ」

 ぎゃはははと下品な笑い声をあげるガラの悪い男たち。ここでようやく口を開く。

「別に私は初対面のあなたたちを見た目だけで生理的に無理だとは決めつけるつもりはない。それはあなたたちに失礼であると私なりの優しさよ。でも、こんな強引なアプローチに女性が応じると思っているのならあなたたちはただのバカよ」

 少し挑発するように言いつけるとひとりの男がカチンと来たのか寄ってくる。

「おいおい。女だからって容赦しねーぞ」

 手を掴もうとするのを再び躱す。

「逃げるんじゃねーよ!」

 拳を振り上げて殴りかかってくる。が、その男の目の前から突然白い鳩が飛び込んできた。

「わぁ!」

 その突然の白い鳩のせいで男はその場で尻餅をついた。白い鳩は近くの建物の屋根に止まる。

「どこから出てきやがった!邪魔しやがって!」

「邪魔させたの」

「はぁ!?って、え?」

 男が見たのは剣。銀色の両刃の中央には紺色の下地にブルーライトの模様の入った細剣にも似た剣が握られていた。それは本当に突然だったのだ。

「どこからどうやって取り出しやがった!」

 普通ならばこういう大きなものを取りだすときは収納魔術と言うものを使う。簡易魔術で魔術師ならだれでも使うことができる。発動させるときには必ず陣が青白い光を発する。が、ガラの悪い3人の男はそれを見ていない。そう、それは突然現れた。

「女性に対していきなり拳を振るって来るなんて見た目といっしょで私の嫌いなタイプね」

「なんだと!」

 剣を振りあげて拳を振るった男に向かって閃光のごとくその刃を突きつけた。一瞬で間合いを詰められたにビビッて尻餅をついた。

「は、はぁ?」

 冷ややかな目で残りの男たちも睨む。

「この剣は人の血を吸っている。この剣に血を吸われたくないのなら立ち去れ」

 怯えた3人の男たちはへっぴり腰で逃げて行った。それを確認して剣をカードの中に仕舞う。同時に屋根に待機していた白い鳩が私の元に飛び寄って来た。

「相変わらず、優しいのであるな」

 月明かりをバックに建物の屋根に立つ男。上半身裸でしたパンツ一枚。こんな真冬に寒くないのかと思う。褐色の肌に髪は脳天にもっさりとあるだけ。だが、脱いで見せつけるだけあって肉体は屈強だ。

「・・・・・この地で下手に戦いを仕掛ければあの女が黙っているわけがない。だから、結社は私とあなただけここによこした」

「そうであるな」

 軽く跳んで目の前に飛び降りてきた。

「・・・・・汗臭いわ。近寄らないで」

「お前が出てくるのが遅いからな。筋トレを1セットこなしたばかりなのだ」

「腹筋、背筋、腕立て伏せ、スクワット、懸垂を全部100回ずつだっけ?」

「そうである」

 もはや芸術と言ってもいいほど深い堀が出来た筋肉には汗の熱気が感じられて近寄りがたい。

「公衆浴場にでも行ってこれば?」

「・・・・・何のために拙者が外で待機していたのであるか?」

 外側からの攻撃から対処するため。浴場という場所で水着姿になるということはほぼ無防備ということになる。何も警戒されずにはいるには周りに合わせる必要がある。そのための待機だ。

「それで見つかったのであるか?」

 屈強な男が訪ねてきたことに答える。

「見つけたわ。やはり、結社から貰った写真とは少し髪型とかを変えてきている。それに男に似せて生活をしていたみたい」

「なるほど、道理で見つけ出せないわけである」

 月明かりがふたり明るく照らす。

「では、決行は明日としよう。隠れ家の目星もついているのであるか?」

「ええ」

「なんなら今すぐ奇襲するであるか!」

「お風呂入ったばっかりでさっぱりしているから明日ね」

「・・・・・のんきであるな」

「この国の雰囲気を壊すわけにはいかない。こんな平和で笑顔が普通に飛び交うようなこの国を私は壊したくないわ。私の師匠がそうであったように私も人に笑顔を広めたい」

「そのためにも世界の混乱に巻き込むかもしれないとかいう力の根絶に互いに力を入れようではないか」

「ええ。明日、特異点、レナ・エジソンの暗殺を決行するわ」

 ふたりは夜の町の中に消えて行った。

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