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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
悪の領域
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目の前のことを①

 龍属性。俺の中に眠っていた新しい力。最初は土属性の形状で現れて運命により与えられた破壊の力がまったく通用しない相手に俺自身を守ってくれた。そして、今度は上空から落下してしまいそうになった時に俺の体を浮かせてくれた。そのおかげで棍棒の攻撃を空中で華麗に躱すことが出来た。さらに空中である程度の停滞をすることもできた。

 それは龍属性の風属性。霧也とかが使う風は白い筋状のものが風として何とか視認できる程度だったのに対して俺の起こした龍属性の風は左腕から湧き上がって体を纏うように赤黒い筋のような風が竜巻のように流れる。

「おわっと!」

 少しでも耐性が崩れる落下してしまいそうだ。ぎりぎりの状態で俺は空中に浮いていた。そんな俺の様子を見上げるMMの手先たちはその様子に一瞬だけ見とれているようだったがすぐに切り替えて上空の俺に向かって魔術で攻撃をしてくる。

「ちょっと待て!」

 コントロールがうまく利かない。左右に避けようとするとバランスを崩して、地面を背にするようにして落下する。

「くそ!」

 空中で龍属性の風と原子の衝撃波(アトミック・ショック)を使って空中で態勢を立て直して足が地面に向くような態勢に戻すと目の前に火の玉が見えた。

「おい!ちょっと!」

 とっさに右手で真空の空間ヴァキュアー・フィールドを作り出して火の玉を相殺する。変に空中でバランスを崩して右に左に揺れ動いたおかげで他の攻撃を食らうことはなかったようだ。それでも落下していることには変わらない。

「もう一回!」

 もう一回、龍属性の風で空中で停滞しようと赤黒い風を前面に展開するも体がふわりと浮く感覚がつかめないまま落下して行く。それどころか風属性を使っていることをいいことに地上の着物を着た白髪の女が手のひらに炎の玉を作り上げて俺を狙っていた。風属性が展開している中に火属性魔術を打ち込めば、風を送り込んだことで火属性の威力が増してしまう。つまり、今の俺は火属性魔術を使う魔術師にとって格好のいい餌となっている。

「やばい」

 これ以上龍属性の風を使うのは自殺行為だと判断していつもの力に切り替える。原子の衝撃波(アトミック・ショック)でもこれだけの高さから落下の勢いを殺しきれるかどうか分からないがやってみるだけだ。

 両手で原子の衝撃波(アトミック・ショック)を起こすべき両手に元素を集めようとするがそこで妙なことに起きた。左手に元素が集まってこない。右手にはいつも通りに集まって来る。

「なんでだ!」

 確かに龍属性が使えるようになってから左手でいつものシンの力を一度も使う機会がなかった。あまり意識していなかったが、右手では龍属性は使うことはできなかった。これは単純に俺が龍属性を使うのが慣れていないせいだと思っていた。でも、それは違うみたいだ。両方同時に使えるにも関わらず何か法則みたいなものがある気が直感的にした。

 それを考えるのは後回しで今はあの火の玉の攻撃を避ける。

 飛んできた火の玉を右手だけで起こした原子の衝撃波(アトミック・ショック)で体を飛ばして躱すが回避する先が読まれていて飛んだ先に長刀を構えた着物を着た赤髪の女がいた。

「嘘だろ!」

 再び右手に元素を集めるタイミングでも状況でもない。すぐさま、左手で龍属性の岩で作った剣でその長刀の斬撃を防ごうとするがその長刀は雷を帯びた。風属性は土属性と相性がいい。つまり、俺の赤黒い岩の剣はいとも簡単に破壊されかねない。俺はフレイナみたいな規格外じゃない。防げない。

「わたくしを忘れては困るますのよ!」

 長刀を構える女の周り白い羽が纏わりつく。白い羽が長刀や女の体に触れた瞬間、バチバチという電撃が走って女はその痛みに魔術を解いてしまう。俺の上空で天使のような白い翼を広げた少女。黒の騎士団に所属するアテナという少女は黒と赤を基調とした軍服を着ていてその手には槍が握られている。

 彼女の持つ人工天使の力のひとつに魔術の発動を妨害するものがある。それがあの白い羽。今の赤髪の女は痛みで魔術が発動できる状態じゃない。そこに大きな隙が生まれる。

「隙ありだ!」

 岩の剣で長刀を弾き飛ばす。女はそのまま地面に落下して行くが、俺は斬撃を与えた衝撃で一瞬だけ空中で静止した。その瞬間を狙うかのようにアテナは降下してきて俺の手を掴んで引き上げて抱きしめると一気に上昇する。

「このまま逃げ切りますのよ!」

 大小で別れる4枚の翼を羽ばたかせて一気に上昇する。強い風圧が俺の顔面を襲い目を開けていられなかった。少しの間目を閉じていて次に開いたらそこは雲の上だった。

「どこまで上がるんだよ」

「ここまで上がれば追ってこないでしょう。それにですのよ」

 上空で停滞したアテナは雲の切れ間から地上を見つめる。そういえば、俺たちが飛ばされた森は町からどの方角にあるのかすらも分からないのだから上空に上がればどこに中央局の天守閣があるかとか組織の本部があるのだとかを確認することができる。

 俺のその考えの通り雲の切れ間から城下が見えた。

「降りますのよ」

「了解」

「・・・・・・」

「どうした?」

 急に黙って。

「いつまでわたくしに抱きついているつもりですのよ!」

「あ」

 顔を真っ赤にしたアテナが主張する。自然と俺は小さなアテナの背中まで手をまわしていて完全に体同士を密着させていた。

「いや、お前みたいな地平線みたいな体を密着させても何も」

「落ちろ落ちろ!」

「ごめんごめん!嘘だから!それはマジでやめてくれ!」

 背中までまわして手を解いてアテナの腕をしっかり掴む。

「次にわたくしの体に密着してきたら男として二度と生きられないようにさせてあげますのよ」

 それはマジでやめてほしいです。

 それでもアテナは俺の手をしっかり握ってくれた。優しい奴だ。そのままゆっくりと城下に向かって降下して行く。

「それにしてもMMの動きが早かったな」

「そうですのよ。まさかと思いますけど、わたくしが最初から最後までつけられていたのでしょうか?」

 そうだろうか?

 アテナは天使の力を使って常に飛んでいるんだ。そう簡単に追跡できるとは思わない。

「国分さんはどちらの味方ですのよ?はやり、中央局の徳川拳吉?」

「そうとも言い切れないんだよな~」

 リンさんとリュウが言っていた拳吉率いる中央局が戦力を欲していて俺がその突破口になるだのと言う話だ。拳吉はまっすぐな男だ。そんな曲がりくねった作戦を立てられるような奴じゃないのはここ数日共に過ごしただけで分かるし、何よりもあいつは戦力うんぬんよりもこの国の平和を望んでいる。そんな奴がわざわざ見せつけのために戦力を欲するとは考えにくい。だが、リンさんとリュウの言うことだから完全に否定もできない。

「俺はアキの味方なんだ」

 そのままのことをアテナの告げる。

「アキとは?」

「みんな魔女って呼んでる女の子だ。今は魔術すらも使えないくらい魔術師としての力を失ってるけどな」

 力のないアキのためにも俺が力を手に入れてMMよりも強いということを何とか証明できれば美嶋も俺のところに戻ってくるはずだ。

「そうなんですか・・・・・彼女はもう」

 前を向いたまま無表情でつぶやいた。あまり、俺たちの情報を流すのもよろしくない気がする。考えが合致する訳でもないが、あの状況で俺たちの目的がたまたまかみ合って今はこうして行動しているが、組織とは敵対関係にあるし何よりも黒の騎士団という魔術組織を信用していい組織なのかも分からない。だから、あまり内情について語るのはやめておこう。

 話題を変える。

「そういえば、どうして一発で俺が国分教太だって分かったんだ?」

 初めてアテナと出会った時に俺のことをすぐに国分教太だと言った。

「あらかじめ、顔を写真で見ていたのですのよ」

「写真?」

 俺の写真がこんな異世界にも出回っているのかよ。俺ってそんなに有名になっているのかよ。元の世界では無で抜け殻みたいだったのにこっちの世界は存在感がかなり濃い。うれしいようなうれしくないような。

「でも、イギリス魔術結社は俺の顔を知らないみたいだったぞ」

 現にグレイと初対面で話した時は何も危害を加えられなかったし、あいつも俺がシンと同じ黒い靄を使うのを見てから俺が国分教太だと判断していた。アテナはそれを見ていない。

「それもそのはずですのよ。最近、黒の騎士団に新団員が入団してきてその方が国分さんの写真を持っていたので見せてもらいましたのよ」

 俺の写真を持った新団員って。

「おい!それってまさか俺の世界の奴じゃないだろうな!」

「勘がいいですのね」

「ふざけるな!俺はあの世界で魔術の影響を受けさせないようにどれだけの戦いを強いられたと思ってるんだよ!」

「知りませんのよ。わたくしたちにとって有力な情報と戦力になると思って導入した団員ですのよ」

 アテナは俺の主張を気にせず少しずつ高度を下げていく。

 黒の騎士団は世界の警察とか言って世界の平和と秩序を守っているとか言っているくせに世界を混乱させる要因である異世界の異人を連れてくるなんて何を考えているんだよ。だが、もう関わってしまったのなら仕方ない。過ぎたことをどれだけ言っても行ってしまったことをとやかく言っていては何も進まない。それよりも気になるのは俺の写真を持っていたということだ。

「その新団員って誰だ?」

 アテナは隠す気がなかったようですぐに答えた。

「第一分隊所属、城野香波」

 その名前を聞いた途端、耳に流れていた風を切る音が聞こえなくなった。聞いたことのある名前だった。いや、いつか再会を誓って別れたかつての想い人と同じ名前だ。同姓同名なのか?それはきっとない。アキと美嶋みたいな奇跡の組み合わせが二度もあってたまるか。確かにあの悪魔術の青炎(せいえん)を使った名もなき魔術師と戦う前にその魔術師と同じ炎を香波も持っていた。あの後、どうなったのか全然気に留めていなかった。すぐに蒼井率いるマラーという非魔術師(アウター)との戦いに巻き込まれてしまったせいだ。俺がすぐに青炎(せいえん)のことで香波に接触していれば香波が魔術を関わることもなかったのに。

 関わらせてしまった。魔術と関係のない人を巻き込んでしまった。その深刻な表情を浮かべる俺を見たアテナが尋ねるように呟いた。

「やはり城野さんと親しい仲だった見たいですのね。こっちとしてはかなり都合のいいことでしたのよ」

 世界の平和と秩序。それはこの魔術世界に限られた話。それは黒の騎士団の信念。仲間意識は強いところも平和を強く望むアテナのことを否定はしない。むしろ肯定する。味方に付いてもいいと思っている。でも、魔術という本来ない力を関係のない少女を巻き込んだことは許されることじゃない。

「ちなみに言いますと城野さんは自らの意思でこの世界に足を踏み入れましたのよ。わたくしたちは強制しておりませんのよ。彼女が断ればわたくしたちはそこできっぱり諦めるつもりでしたのよ」

「だが、香波は承諾した。魔術と関わらせるきっかけを作ったのはお前たちだ。あの世界に魔術という力はあってはならない」

 いや、神の法則上存在しているが誰も気付かないだけだ。気付かせてはならないんだ。それこそ世界のバランスと言うものが壊れる元だ。

「確かにそうかもしれませんのよ。ですが、わたくしたちが出会った時にはすでに魔術と関わっていましたのよ。国分さんは覚えがあるのではないですか?」

 青色の炎。そして、占い師と名乗った名もなき魔術師によってすでに魔術という力に触れてしまっているのは分かっている。だが、それ以上の踏み込みをしなければ香波は魔術に関わることもなかったはずだ!そう言いかえす前にアテナは告げる。決定的なことだ。

「城野さんがこちらの世界に足を踏み入れる強い要因がありますのよ。それはあたなですのよ。国分さん」

「お、俺?」

 身に覚えがまったくない。俺は香波が青炎(せいえん)を纏っていた時は教術を使っていない。関わっているという素振りも見せた覚えはない。

「どうも、彼女は自分を覆う炎のことを国分さんが知っている感じがしたと言っていたらしいですのよ。女の勘っていうのは鋭いものですのよ」

「それって隠していたのに香波にはバレバレだったって言いたいのか?」

「その通りですのよ」

 雲を切って雲の下に出る。城下が少しずつ大きくなってきた。

「わたくしとしては悪魔術を使う者の入団は反対でしたのよ。これ以上この世界に負の力を増やしてならない。ましてや、魔術と関わりのない世界の人間に」

 歯ぎしりが聞こえた。アテナも決して香波を肯定していない。魔術の悪の部分が大きく吐出している負の力である悪魔術を嫌いのはアテナ自身が負の象徴だからだ。どうも合致しないがどこかでかみ合っている俺とアテナの意見。俺が思うにこいつとは最後まで味方として過ごせない気がした。どこかでこの仲を決定的に砕く何かのきっかけがあれば彼女とは敵になる。そんな気がした。

「そもそも、ですと城野さんは異世界に逃げ込んだ魔術師の排除または拘束を主な任務として異世界に帰される予定ですのよ」

「そうなのか?」

「はい。近年、異世界に逃げ込む最重要魔術師が後を絶ちませんのよ。例えば、魔女の美嶋秋奈とか」

 魔術師たちの逃亡先として異世界は都合がいいのかもしれない。まずは自分たちの常識が通用しないということと行くためには時空間魔術を、それもかなり上級魔術でないといけないという移動手段の少なさが原因だ。

「異世界に逃げた魔術師たちがその身を休め、さらに異世界の未知の技術を用いた魔術を用いるとなれば世界の混乱につながりかねませんのよ。特に非魔術師(アウター)に関わるような物の場合は大問題ですのよ」

 MMも警戒していたことのひとつだ。たぶん、あまり出回っていないのだろう。マラーという仮面の女が魔術無効化武器を作り出したということは。

「それだではありませんのよ。今の世界の情勢は少しの刺激で崩れかねないくらい微妙なバランスの中で成り立っていますのよ。今の現状のままではそのバランスが崩壊していつ戦争が起きてもおかしくないのですのよ」

 戦争。MMと拳吉と話したことで身に染みて実感した言葉。

 MMのいう世界のバランス、これはつまり戦争のない争いのない世界を構築するための情勢のことだ。拳吉も世界のバランスが崩壊すれば自由のない負の世界、闇の世界がおとずれると。誰もが気にするバランスと言うものがそれほど大切なのか俺には分からない。だが、バランスと保つというのは現状維持でそれが一生続くというのはありえないことだ。

「バランスを崩す要因は少しでも排除するそのための城野さんですのよ。彼女の使う悪魔術はあまりにも不確定要素の多い力ですのよ。そんな力の影響があるというリスクを背負ってまで異世界に逃げようという魔術師も少しは減るだろうという考えですのよ」

 その言い方だと香波は魔術と関わるが俺の住む世界限定での活動ということになる。俺が魔術師の侵入を許さずに侵入した魔術師の排除に香波よりも先に動けば魔術に関わらずに済む。

 そんなことできるのかって言われたら、できると俺は言う。それが俺の理念だ。

「間もなくですのよ」

 目を進行方向にやると中央局のある天守閣が見えてきた。

「とりあえず、飛ばされたところに下りますのよ」

「了解」

 ゆっくりと降下して行く。

「この後、国分さんはどうするつもりですのよ?わたくしはあなたを拘束する気はないので味方を拾ったら一度日本を出て団と連絡を取って今後の指示を仰ごうと思いますのよ。もしも、MMの不信感が強く近くにいることを拒みたいというのならば多少は力になりますのよ」

 どうするべきか。このまま組織のひざ元にいればMMに利用されるだけで元の世界に帰るための手段も見つけられない。そもそも、MMが俺を異世界に帰す気がないよう思える。俺が必要なんだ。例の国を破壊するという魔術に俺は必要不可欠だ。もし、MMたち組織もその魔術を使うことを考えているのだとしたら俺はこの国に留まる事はできない。しかし、この国には美嶋もいればアキもいる。ふたりを放っておくわけにはいかない。

 二つの考え。利用されることを拒み日本を飛び出すか二人の女の子のことを思って留まるか。俺としては後者の選択が固い。

「とりあえず、今は」

 答えようとした時だった。

 ドーンという地鳴りのような音が聞こえた。その余波が俺たちを送れて襲う。余波に揺られて空中で左右に振られて振り落とされそうになるがアテナは4枚の羽を器用に使って態勢を水平に保つ。

「何ですのよ!」

 俺も爆発した方向を見ると組織本部の教会から噴火のように火柱が上がっていた。その火柱の熱の影響で教会が揺らいで見える。そのあたりの気温が炎の熱で一気に上昇していることを示していた。そんな高温の炎を使う奴を俺は知っている。

「フレイナか」

「・・・・あの炎の教術師ですのね」

 知らない方がおかしい。それだけ有名で強い教術師だ。

 そんなフレイナがあれだけの炎を出しているということは。

「戦っている」

「まさか!うちの団員と!」

 可能性としてはそれしかない。

 その次の瞬間、ドンドンと地響きにも似た音が教会の中から聞こえて次の瞬間、ドカンと教会の壁が内側から吹き飛ばされた。教会の外壁のレンガが空中を舞って同時に人影が見えた。だが、砂埃でうまく見ることができないし俺の人並みの視力では見えないがアテナには見えた。

「マルチェ!それに城野さんまで!」

「はぁ!」

 なんで香波がこの世界に?確か俺の住む世界で任務に就いているんじゃないのか!

 いや、今はそれどころじゃない。

 教会の開いた穴から巨大な炎の塊が出てきた。それは鳥のような形をしている。その炎を使っているは間違いなくフレイナだ。しかも、俺が見た形状とは全く違う。やばい。香波がやばい。

 炎の鳥はその口に炎を集め出した。

「まずい!アテナ!あの炎の鳥に攻撃しろ!」

「し、しかし」

「俺は自分で飛んで香波を助ける!あいつは俺にとっても大切な・・・・友人だ!」

 想い人と言う単語が咄嗟に出てこなかった。俺はまだ香波と関係を修復できるだけの領域に達していないからだ。再会を誓ったあの時はこんな形での再会を予期していなかった。こんな形でも再会してしまうのはやっぱりどこかで俺たちは縁があるんだ。だから、助けないといけない。

「やれ!アテナ!」

「分かりましたのよ!」

 アテナが俺を離したのと同時に俺は右手に元素を凝縮させて左手に赤黒い風を集めて同時に開放する。ミサイルのようにフレイナと香波と思われる人影の間に風のごとく向かっていく。そんな俺をアテナの槍が追い抜く。白い羽が生えた槍はミサイルのように炎の鳥が集めていた炎の玉を直撃すると集めていた炎が暴発した。そのおかげでフレイナの攻撃が中止された。そのフレイナは炎の鳥の中にいた。その正面には見ることが出来た少女の顔を見て確信した。

「香波!」

 俺は飛んでいる進行方向に向けて原子の衝撃波(アトミック・ショック)と龍属性の風を放って勢いを殺して地面に滑るように着地する。一瞬こけそうになったが弾むように飛んで何とか態勢を立て直すとちょうど香波の正面に立つことが出来た。

 まずは。

「そこまでだ!フレイナ!」

 俺とは比べ物にならないほどの力の持ち主であるフレイナの前に俺は立ちふさがる。

 それから俺はゆっくり振り返ると今にも泣きだしそうに口元を押さえた少女との2度目の再会。恐怖の体験と俺を見た途端の安心感によって感情が一気に爆発しそうだった。

「もう大丈夫だ、香波」

「きょ、キョウ君」

 これが俺と香波の100回中の99回に当たるのだろうか?それは分からないが、俺の戦いは始まったばかりだ。目の前の炎がさらに強くなる。

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