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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
悪の領域
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青色の意志②

 次の日、あの青色の炎による火災被害は新聞紙面を大いに飾った。他にもその火災被害の影響なのか近くの繁華街でもプロパンガスが爆発して女子高生が大怪我をしたというニュースも流れていた。多くの不可解な点があるがそれはきっと彼らが証明してくれるだろう。

 その彼らというのは私の目の前にいる。市営の団地に呼ばれた私は敷地内の公園に昨日出会ったデニロという男がいた。私をその目で確認すると何も言わずに歩き出してただついていくしかなかった。暗い団地の階段を上がって3階の一番奥の部屋の扉を開けるとその後私を見た。睨まれている気がして後退りしてしまう。すると扉を開けたまま私に道を譲ったどうやら先に入れと言いたいようだ。

 その意思を読み取って中に入る。そこはきれいに掃除のされている部屋だった。靴を脱いでリビングに進むとダイニングテーブルで新聞を広げている人がいた。私の存在気付くと広げていた新聞を畳んで挨拶を交わした。

「城野香波さんかい?」

「は、はい」

 その人物は男だった。茶髪にキツネのような糸目をしてとんがったような顔をしていて冬に着るような藍色の綿のはんてんを着ていて下はあしにぴったりとした半ズボンに素足と上半身は冬で下半身は夏といった感じの服装をした男。

「ども。ワイの名前はトモヤ・サイトーっていうんや」

「斉藤さん?」

「まぁ、実際は斉藤智也って言うんやけど、騎士団は国籍がぐっちゃぐちゃやから向こうに合わせたって言う感じや。てなわけでよろしく」

「よ、よろしくです」

 握手を求めてきたのでその手を取って握手を交わす。雰囲気からして日本人みたいだ。関西圏の人の話方をする。でも、騎士団はとか言っていたからきっとこの人もデニロって言う人と同じだ。

「まぁ、座ってくれや。今お茶出すから」

 そう言ってキッチンに入ってポットからお湯を出して急須にお茶を入れる。もうすぐ、夏だというのに出してきたのは熱い緑茶だ。飲むには熱すぎるから少し冷ましてから飲むとしよう。

 ダイニングテーブルの席に座れという雰囲気にのまれて席に座ってお茶が冷めるのを待つ。斉藤さんはそのままふーふーしながらお茶を啜った。

「さて、いろいろ説明しないとあかんな。城野さんは何もわかっていない感じやな」

「私自身もどうしてここにいるのかすら分からないです」

 なんで見知らぬ人物のしかも男の家にいるのか謎だ。私はそんなほいほい口車に乗せられるビッチな女だと思われるのは嫌だ。実際にそういうお誘いはすべて断って来た。それはキョウ君のためでもある。

「ハハハ。でも、ここに来ているって言うことは少なからず興味があったから無いか?」

「それは」

「魔術。城野さんの住む世界では絶対に存在しない仮想の力やな。でも、魔術は存在するんや。見えていないだけで理解していないだけで魔術という力はワイらを包んでいるんや。逆にこっちの世界で当たり前に起きていること。例えばテレビや」

 まるでタイミングを計るようにデニロがテレビをつけて正面のソファーに腰かけた。

「あれはどういう原理で写っているのかワイらは魔力によるものやとすぐに思うんやけど、城野さんはどう思う?」

 どう思うって、私はテレビがどうして映るのか詳しい原理を知らない。でも、斉藤さんが言うような魔力によってあのテレビが映っているわけじゃない。

「科学の力であのテレビは映っているの・・・・かな?」

「それや」

 その答えを待っていたかのような反応だった。

「ワイらにとっては魔術。城野さんたちにとっては科学。それぞれの世界で発展した技術で当たり前のように囲まれているものや。それをワイらは互いに知らない。ワイやったら科学を、城野さんやったら魔術を。それらをワイらは根本から理解できない。科学として起こっている現象をすべて魔術による現象やと思ってしまう。その科学の現象のことをワイらの世界では神の法則と呼んでいるんや。神様しか知らない誰も理解できない法則」

 斉藤さんの言いたいことは私たちが当たり前だと思っている科学をすべて魔術としかとってしまうということだろう。

「その魔術に城野さんは触れている」

「あの青色の炎」

「そや。と言ってもあれはさっきワイが言った魔術のくくりから少し外れた力やけど魔術であることに間違いはない。まずは魔術について簡単にやけど説明した方がいいかもしれんな」

 両手を綿の羽織りものに入れて椅子の背もたれにもたれて楽な姿勢になる。

「まず、魔術に必要な物は魔力や。これはそれぞれみんな持っているものや。人のよって魔力の波長に違いがってそれによって使える魔術にも制限がかかってくる。もちろん、かかわらない魔術もある。それについて簡単に説明するとやな―――」

 つまり、こういうことだ。魔力には波長が存在していて、影響を受けるのが属性魔術。7種類くらいあって影響を受けないのが無属性魔術。これは2種類あるらしい。属性魔術には優劣が存在して相性というのも存在するらしいけど、それは覚えていない。覚え方としてはゲーム感覚で覚えるのが覚えやすいということだ。そして、無属性魔術。これは特に制限はないけど中には使えない物も存在するらしいけど、その原因は未だにはっきりしていないらしい。科学にも分からないこともあるから魔術にあってもおかしくはない。それで他にも人の魔力の量を数値化したランクとか魔術を発動させるための魔方陣のレベルとか―――とかもうほとんどが頭から抜けそうだ。パンクしそうだ。

 そんな私の様子を見かねた斉藤さんは休憩をはさんでくれた。

 すると今までテレビを見ていたデニロが突然立ち上がる。

「君は魔術を知りたいのか?」

「え。そ、それは・・・・」

「この世界は住民がこの世界にないサイクルのことを覚える必要はない」

「じゃあ、なんで私をここに連れて来たの?」

「この世界に魔術の進行してきているからだ。国分教太もその被害者のひとり」

 キョウ君も。

「我々、黒の騎士団はこの世界に対する魔術の進行を阻止するべく行動を起こした」

「そんでワイらはここに住み着いているってわけや」

 トイレから戻って来た斉藤さんがそう付け加えた。

「進行を食い止めるために騎士団ももっと人を送りたいんやけど、それやと魔術師をこっちの世界に送り込んでくる他の組織とやってることが変わらんくなる。そこでこっちの世界で起こっていることはその世界の奴に解決にさせようって言うことになったわけや」

 それが私ということか。

「城野さんにはこっちの世界に進行する魔術師の撃退が主な任務になるやろうな。と言っても最初はそこのデニロが指導係として付きっきりやろうな」

 気付けば、斉藤さんと話している時と同じテレビの前のソファーに座ってテレビを見ていた。たくさん話す人というイメージは感じられないから別に驚きはしない。でも、この人と長らく一緒に過ごせと言っているのは何か嫌だ。それに。

「どうしてそんな使命を私が負わされているの?」

 理不尽に感じる。

「国分教太と城野さんは知り合いなんやろ?」

 素直にうなずく。

「なら、彼に敵だと思われない。これは利点や。あいつは強い」

 それは私も知っている。キョウ君は本当に強い。弱い私を助けてくれた。あの青色の炎から私を救ってくれて強くしてくれる。どんな風に魔術と関わっているのか知らないけど、きっとそんな魔術による強さよりも心の強さがキョウ君の本来の強さなんだ。

「それと相手にする魔術師にとっては混乱するような魔術を城野さんは使えってことやな」

「混乱するような魔術って」

青炎(せいえん)。君が使った青色の炎や。魔術のくくりから外れた悪魔術っていう奴や」

 悪魔術。その名を聞いていい印象なんてない。

「要するに魔術とは少し違う力やしすぐにどうこうできるって言うほどの力やないんや。やから、城野さんの強さは最初から保障されていると言っても過言やないんや」

「ちょっと待って。いろいろ話がぶっ飛んでいて訳が分からないんだけど。えっと、斉藤うさんは私に何をさせたいの?」

 斉藤さんはすぐに答えた。

「こちらの世界に来る魔術師の撃退やな」

「どうして私がやる必要があるの?それってやることで私に何か利点でもあるの?」

「利点か・・・・ちょいと難しい話やな」

 いきなり戦えと言われても私はただの女子高生なんだし無理に決まっている。例え、あの青色の炎を操れたという一つの理由だけで私は自分の身を危険にさらすようなまねができるわけがない。

「そやな。利点としてはひとつ。国分教太と接触する機会が増えるってことやな」

「え!」

 思わず喜んでしまった。その表情を見た斉藤さんは笑みを浮かべた。

「城野さんは国分教太とは親しい仲やけど、あまり会う機会がない。まぁ、そうやろ。あいつは常に多忙や。多くの魔術師から狙われて常に命の危機に直面している」

「な、なんで!」

「誰も知らない神の法則」

「・・・・がどうしたの?」

「彼が使う力はその紙の法則によって守られた力と言われているんや。魔術の法則上は起こすことのできない属性魔術の同時発動や物質破壊の力。どれも魔術というくくりでは説明のつかいような力や。故に誰もがその力を欲するんや。簡単に言えば普通やない」

 普通じゃない。

「魔術には人の魔力を他人に移すことのできる技術があるんや。こぞってその力を狙って魔術師がわざわざ異世界にやって来るんや。その度に国分教太は死にかかっているんや」

 キョウ君の今は無理だというあの答え。もしかすると私を本来は存在するはずのない魔術との戦いから私を巻き込まないため。あれはフラれたんじゃない。キョウ君が2年前にも見せている自己犠牲。すべてを自分で背負って他人には重荷を背負わせない。2年前は人殺しの罪。先輩をあそこまでの悪魔に育ててしまった私の責任もすべてを背負った。そして、今は訳も分からない魔術という力のそれも神の法則とかいうものに守られた特別な力をひとりで背負っている。

 キョウ君はいつもそうなんだ。

「私はキョウ君のことが好き。この世界できっとふたりもいないかけがえのない存在。重い過去をひとりで背負って私を救ってくれた救世主みたいな存在。その重りの他にまた別の重りを背負っているんだったら今度は私がその重りを背負うのを手伝いたい」

 キョウ君の意思に背く形となる。魔術に関わらせないようにしたキョウ君の配慮から。だけど、もう守られるだけは嫌だ。私には青色の炎おかげで強さが保障されているけど、魔術という世界がどんな世界なのか分からないのが不安だけど私はキョウ君の背負う重りをいっしょに背負いために私は戦う。

「斉藤さん」

「決まったか」

 息を飲んで答える。

「私も戦う。キョウ君のために私に戦う術をください」

 斉藤さんは嬉しそうに立ち上がり熱く握手を交わす。

「おおきに。ほんまにおおきに。ワイもあんまり交渉とかは得意やないんやけど、決めてくれて助かるわ」

 本当にうれしそうだった。

「ようこそ。我ら黒の騎士団に」

 これがあの青色の炎の事件の事後の話。そして、私は魔術と出会って関わることを決めた話。黒の騎士団の新人団員として入団した話でもある。

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