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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
悪の領域
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青色の意志①

どうも、もはや息をしているかも不安な駿河ギンです。

続きの悪の領域です。忘れられているかもしれない少女主体のお話が半分以上を占めています。最後まで読んでくれるとうれしいです。

 声が聞こえる。

 真っ暗な空間でポッと共に光る青色の光。青色の炎。

 そこから聞こえる声は私の声だ。

『どうしたの?その不安を抱えずにここで燃やしなよ。そうすれば、不安がなくなるよ』

 それが私にとっての勇気だった。

『さぁ、すべての不安を燃やして。そうすれば、私はもっと強く慣れる。キョウ君に振り向いてくれるだけの強さを手に入れられる』

 私が弱いばかりにキョウ君には辛い思いをひとりで背負わせてしまった。だから、私はキョウ君と同じ苦しみを味わってきた。親しい友人も作らず、告白されても全部断って来た。キョウ君が味わっていたような孤独になるために。私は無の人間になるためにすべてをその青色の炎、悪魔の炎にすべてを燃やそうとした。自分自身すらも。

 青色の炎に飛び込もうとすると私の手を掴んで青色の炎から私を救う人物がいた。真っ暗な部屋にいるひとりの人物。

 キョウ君だ。

「香波は悪くない。必死に考えて行動した。それの方向が例え間違っていても俺が正しい方に導いてやる。だから、もうそんなものに頼るな」

 キョウ君が絶対に消えることのない青色の炎を踏み消した。

「ごめんな。今までひとりにして」

 謝るのはこっちだったのにキョウ君は私に謝る。

 すると真っ黒な空間の頭上で青色の炎が無数に灯った。

「俺は残りの火を消しに行かないといけない」

 キョウ君が行ってしまう。

 私は行ってしまうキョウ君の手を取る。

「さよならはやめよう。また、偶然会えるかもしれない。そんな時のために」

 キョウ君が私の掴む手を優しく離してから笑顔で告げる。

「またな」

 そしてキョウ君は真っ黒な空間の向こう側に消えて行った。青い炎を消しに行ってしまった。私が灯した炎の後始末をしに行ってしまった。また、キョウ君に背負わせてしまった。私はまだまだ弱い。それに対してキョウ君は2年という月日を経て強くなっている。2年前までは同じところで座ってお話しできる距離だったのに気付けばずっと遠くの人になってしまった。

 私もキョウ君と同じ立場の人間になりたい。キョウ君に負けないくらい強くなりたい。弱い自分は卒業して強くなりたい。

 すると再び私の目の前で青色の炎が灯って同じように炎から私が声をかけてきた。

『強くなりたいのなら私に不安を頂戴。そうすれば』

 あなたにあげる不安はない!私はあなた無しで強くなる!なってみせる!

 キョウ君と同じように青色の炎を踏み消そうとする。

「待て待て。それを消すのは勿体ないのでは?」

 聞いたことのない声が聞こえた。その瞬間、真っ暗だった目の前が明るくなっていった。


 そして、目覚めれば駅近くの公園のベンチで横になっていた。駅の方では消防車の音が聞こえて駅側の空は赤いパトライトで真っ赤に染まっていた。そんな赤い空とは違って私がいる公園は青く光っていた。私に憑りついていた青色の炎が灯っていたからだ。その近くでその炎を見つめる人物。黒に赤色のラインの入った制服のような軍服のような服装をした顔がやつれた男がいた。眼は死んだように真っ黒でじっと私を見つめる。吸い込まれそうな闇の瞳をしている。

「どうしたどうした?俺の顔に何かついているのか?」

「い、いえ。そういうわけじゃ」

「そうかそうか」

 それだけの薄い内容の会話を済ませた男は青色の炎を触れようとした。

「あ、危ない!ですよ」

 私の忠告に男の手が止まる。

「うんうん。確かにそうだ。危険だ」

 そう言って手をポケットに突っ込む。

「君君」

「わ、私?」

「君以外に誰がいるのか?」

 そうだけど。

「この炎は君の物なのか?」

 青色の炎を見つめながら言う。私の物かどうか分からない。でも、その炎は確かに私の意思に従って動いた。動いたのだ。それでキョウ君をいろんな人を危険な目にさらした。私はその現場から逃げるようにここにやって来た。それで急に頭がくらくらしてそれで気付いたらここにいた。本当はキョウ君を追いかけるつもりで歩いていたのに結局、キョウ君は私には手の届かない遠い人間で弱い私には全然手の届かない天の人なんだ。

「答えが出ないのは君自身がこの炎のことをよく知っていないのか?」

「・・・・分からないです。それよりもあなた誰です?」

 不審者なのかもしれないけど、どうにもそう感じられない。その異様な冷静さは私の不審者という疑いが妙に削がれてゆく。だから、こうして普通に話せてしまうのだ。

「確かに確かにそうだ。名乗らずしてこの場で語るのはいささかおかしい。自己紹介をしよう。俺はデニロ・マルチェという」

 名前からして外国人。でも、言葉が通じているから日本語を話している。

「君は?」

「えっと、城野です。城野香波です」

 名前を教えてよかったのだろうかと不安になりながらも自分の名を告げる。

「そうかそうか。では、城野よ。君はこの炎をどうしたいと考えているのか」

 どう考えているってそれ私の不安が集めて作ったものだ。でも、作り上げたのはきっと占い師だ。だから、所有権としてはあの占い師にあるはずだ。でも、占い師のせいで私はあの青色の炎を使えるようになってキョウ君を危険な目にあわせてしまった。

「消すべきです。その炎は」

 すると男は告げる。

「君君。この炎が普通の炎ではないことは分かって言うのか?」

「え?」

 青色の炎ガスコンロとかの炎は青色だから別に珍しいというわけじゃない。

「この炎には火種がない。この炎は一体何を燃やしているのか」

 確かにそこには燃やせる物は何もない。それなのに青色の炎が燃えているのはどうしてなのか。

「なんで?」

 男は私の目を見て告げる。何の表情も入っていないその瞳で。

「これは魔力ではない別の力で燃えている」

「ま、魔力?」

 この人は何を言っているのか分からない。本当はかなり危険な人と話しているのではないかと不安になる。

「君の世界では認知されていない力。そう、例えばこんなものか」

 男はポケットから一枚のカードを取り出すと首にかけていた十字架を打ち付けると青白い光がカードから発せられる。円の中に三角形の模様が浮かび上がってその中心から柄が出てきてそれを抜き取ると柄の部分が包帯で丸くまかれている両刃の剣のようなものが出来てきた。一体、それがどこから出てきたのか。そもそも、今目の前で起きた現象が何なのか。私にはさっぱり理解できなかった。

「何?」

「魔術。収納魔術。そして、これはその魔術のくくりから外された悪の魔術。悪魔術の武器、吸血の血刀(バンパイア・エッジ)。そして、この青色の炎は契約系の悪魔術、青炎(せいえん)

 もう、何を言っているのか分からない。私にはこの男の言うことが全然理解できない。目の前で起きていることと男が説明することが何も現実として私の中に入ってこない。でも、どこかで男の言うことが全部嘘じゃないっていうことは分かっていた。なぜなら、さっき男が行った動作に私は見覚えがあった。カードに十字架を打ち付けるという動作は占い師が私にやらせていた動作だった。あれで不安を集めていた。どうやって集めたのか。考えられることは目の前の男が教えてくれたワード。

 魔術。

「そんなものが存在する訳が」

「存在する。君たちは気付いていないだけ。知っているものは知っている。例えば、国分教太とか」

「きょ、キョウ君?え?なんでキョウ君の名前を?」

「魔術の世界では有名だ」

 魔術の世界って何?一体何なの?

 キョウ君が向かおうとしていた方向には何があるのか。青色の炎が空の上を飛んでいた。私に纏っていた青色の炎と同じものだった。その炎がどうして私の意のままに操れたのか、空で燃えていたのか。多くの疑問を解決する魔法の言葉。

 魔術。

 遠い遠いキョウ君のいる世界なのならば私はキョウ君に近づくための大切な素材になる。目の前で燃える青色の炎を私は消したかった。また、いろんな人に傷をつける元となる。2年前に人を傷つけていたバットと同じような青色の炎に私はすがろうとしている。キョウ君が遠くに行ってしまって会えないのではないかという不安。

 その不安に答えるように青色の炎は強く燃える。

「君はこの不安によって燃える炎が嫌いなのか?」

「嫌い」

「だが、この不安の炎は強くすべてを燃やし尽くすまで消えない。これを使いこなせないのか」

「無理。だって、相手は炎よ」

「炎は炎でもこれは君の炎だ。君の意思で炎は強くなり弱くなる」

 そう言われて私は念じた。弱くなれと。

 すると青色の炎はその灯を小さくした。

 本当に私の意思に答えた。

「これは出会いなのか。不安を糧に力を発揮する悪魔術。俺は君のような人材を欲しかった」

 男は手を差し伸ばしてきた。

「君のこの炎を使いこなせるように俺はさせたい。させて見たいと君は思わないのか?」

 不安を糧に燃える炎。それは私の弱さを象徴する炎。弱くなれば強くなる炎。矛盾している。

「私は・・・・・」

 私の言葉を重ねるように男が告げる。

「君は強くなりたくないのか?」

 下を向く私は思わず顔をあげる。

「強くなれるの?」

「不安の炎はすべてを燃やす。それは誰にも消すことはできない。消すことができるのは君のだけだ。そうすれば、君は誰にも負けない強さを得られる」

 キョウ君に言われた。そんなものに頼るなと。でも、私を強くする青色の炎は私の希望となろうとしている。まだ、あるかどうかも怪しい魔術とかいうものにすがって私は強くなれるのか。

「大丈夫大丈夫。俺も悪魔術を使う。だから、君も俺と同じだ。共に強くなろう」

 強くなる最大の理由が私にはある。もしも、この人の言うことが本当のことならばキョウ君の名前が出てきたのが気になる。きっと、魔術と言うものがキョウ君の強さということならば―――。

「キョウ君と―――国分教太と同じくらい強くなれる?」

 私の質問に男は自信を持って答えた。

「当たり前だ。あいつの力とは比にならない」

「キョウ君と同じ領域に行ける?」

「行ける。そのためには手を取る必要がある」

 最後に私は抵抗した。何も知らない人についていくのは危険ではないか。でも、この人は青色の炎のことを知っているような発言をした。使い方を知っているような発言をした。そして、私の目の前で見せた魔術とかいうものも私の好奇心を押し出した。

「行く。キョウ君と同じ領域に行くために」

 私はその男の手を取った。

「よろしくよろしく、城野。ようこそようこそ、我が黒の騎士団に」

 それが謎の男にして悪魔術の使い手、黒の騎士団副団長デニロ・マルチェとの出会いだった。それから私の日常は大きく変わっていく。それで本当によかったのか。不安はないと言ったら嘘になる。それに答えるように青色の炎は強くなる。

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