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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
天の領域
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法則と領域③

「これがわたくしの天使の力と黒の騎士団に入団した理由ですのよ」

 手短に話すと言っていたが結構長い話になった。だが、その文句は言っていられない。彼女自身思い出したくない内容だったはずだ。俺の過去に起こした内容とは全く似ていないが簡単に語りたくない内容だったはずだ。それを多くの人に理解してもらい二度と同じ犠牲者を出さないように行動している。それが俺とは違う所。

 それよりもだ。すごく気になる点が1点ある。

「あのさ、MMのイギリス魔術結社から脱退しことで起きた戦争は今から何年前に起きたんだ?」

「3年ですのね」

 ・・・・そうか。3年も前か。

「お前って俺よりも年上なのかよ!」

「いや、最初の感想それですの!」

 当たり前だろ。アテナは俺よりも年上で18歳なんだぞ。しかも俺よりもいや体の発展具合から見れば若干遅れ気味の美嶋よりも遅れている。いや、実験のせいで止まってしまったのだから仕方ないとしても少女という表現がはたして正当なのかどうかすら分からなくなってきた。

「あなたって本当に間抜けなんですのね」

「な、なんだと!」

「そうですのよ。目の前に刃を向けた敵が現れても敵のスカートの中しか興味がないような発言するではないですか!」

 そのことについてはノーコメントで。

「それは戦うことにかなり慣れているという証拠ですのよ」

「そ、それは」

「あなたは魔術のない世界のものであるのにもかかわらず魔術との戦闘に慣れているのですのよ。これは異常ですのよ」

 確かに魔術を知って手に入れてからの俺の生活はもう戦いばかりだった。でも、俺が戦いから背を向けた時に美嶋が死んだ。その美嶋を生き返らせるためにアキが死にかけた。

「ああ、異常さ。俺の周りで起きてきたことは常に異常だった。美嶋が死んでアキが死にかけた。もううんざり。もう周りの人が死に近づくことが我慢ならなかった。だから、俺はこの過酷な運命を受け入れて俺は戦うことを決めた。誰も死なせない戦いを俺は今まで繰り広げてきた。今もそうだ。この瞬間、あんたの団の奴らが俺の仲間を殺そうとしていると思うとすぐに飛んででも助けに行きたい。この腕が引き千切れようとも俺は行くぞ」

 力を発動させようとするがそれ邪魔するように電気が走るような痛みが走る。拳吉は耐え抜いた。俺にだって無理やりを力を発動させようとする分痛みが強くなる。血が噴き出て顔にかかる。燃えるような痛みに耐えながら白い羽を振り払う。

「止めておいた方がいいですのよ。出ないと腕が」

「そんなの関係ない!俺は俺の助けを待つ奴らがこの世界にたくさんいるんだよ!美嶋にアキに霧也にリュウにリンさんに拳吉!みんなを俺の手で守る!誰も殺さずにだ!それがたとえ無謀であろうとも俺は!俺は!」

 雄叫びと共に俺の右腕に五芒星の陣が発生する。何度も白い羽に妨害されながらも発動し黒い靄が右腕が覆うと同時に白い羽を破壊した。バチンとあたりを散り舞う羽をアテナは見つめる。

「すごいですのよ。その拘束は生半可に解除できるものではないですのよ」

「それはどうも!」

 俺は破壊の力を崖を伝わらせてアテナの翼に刺さる木の枝ごと崖を破壊した。

「え?」

 突然、解放されたアテナは驚きそのまま尻餅をついて落下する。なぜ、解放されたのかキョトンとしたまま俺のことを見上げていた。俺は自分の手首に走った痛みを気にする。今までの傾向上両手の強い痛みのせいで力が発動できないことがあった。さっきは俺の強い意思が発動を促進させたがこれからそれが出来る保証はない。ここがどこなにかも分かっていない状況ではとりあえず、上空に上がるしかない。でも、力が発動しないようではそれもできない。

「なぜですのよ?」

「なぜって?」

「どうしてわたくしを助けましたのよ?あなたはわたくしの行動を否定しましたのよ。だから、そうやって無理をして拘束から抜け出しまた。考えが合わない時点で個人というのは敵になりますのよ。わたくしと少年がそうであったように」

 アテナは共に生きようという考えだったが、アテナと共に過ごしていた少年はとにかく生きようという考えだった。その考えの違いからふたりは殺し合った。

「意見が合わないからってその時点で敵になるとは限らない」

 実際に俺はMMの味方となることを選んだ美嶋のことを敵だとは思っていない。

「それにだ、俺は敵も味方も誰も死んでほしくない」

 俺は笑みを浮かべながら尻餅をついたままの少女を撫でる。

「それが俺の平和への最善の選択だと思う。それはあんなのやっている平和活動と似たり寄ったりになればきっとあんたともいい関係が結べると思う」

 この少女が送って来た人生は俺の経験した過去よりもはるかに暗く重いものだ。そんな過去を誰にも経験させたくないという強い思いが彼女を奮い立たせている。使いたくなかったその負の力を使って。俺は魔術の存在自体が負の力だと思っていた。でも、それはこの世界に来て考えが変わった。特に拳吉によって統括されたこの国に関しては魔力を平等に分け合うことでその力の差別をなくした。だから、魔術が負の力とならなかった。実際に負の力は生活に密接に関わっている。それを負として否定するのは間違っている。負というのは彼女のような力のことだ。いや、負の力は神の法則を手に入れるために神の領域に強引に入りこもうとする人の欲。間違った欲。それが負の力だ。

「俺は行く。でも、あんたの言っていた何とかキャノンのことはしっかり頭に入れておくよ」

 そう言って立ち去ろうとするとアテナが俺の手を掴む。

「何だ?」

「手を出すのですのよ。そんな怪我をしていては誰も守れないですのよ」

 アテナは適当な枝を拾って地面に円を書いて三角形を描き円の外周に何か文字を書く。たぶん、英語だ。それから適当に白い石を三角形の頂点に置く。

「この円の中に手を置いて」

 言われるがままに円に手を置く。アテナは槍を円に打ち込むとおなじみの青白い光と共に俺の傷が癒えてゆく。

「え?これって・・・・・」

「回復魔術ですのよ。その怪我ではあなたのお仲間は救えませんのよ」

「で、でも、あんた魔術使えたのかよ!それにどうやって回復魔術を・・・・・」

「わたくしは元々魔術師ですのよ。この背中の翼のせいであまりレベルの高いものは使えませんが、それに収納魔術と言うものがあるおかげで本来の魔術はこのように陣を作って発動させるものなんですのよ。回復のような簡単なものくらい本で覚えた方がいいと団の先輩から教わった物ですので」

 この場で陣を作製して魔術を発動させたのか。そういう方法もあるんだな。

「でも、どうして俺の怪我を?」

「わたくしの判断ですのよ。わたくしはあなたを敵だとは思いませんのよ。どちらかと言えば同じ道を進む仲間だと思っていますのよ。目的、方向は違えど同じ負の力と戦う者。あなたは神の法則の力を使い、わたくしは神の領域の力を使う。お互いに神様に好かれた見たいですのね」

 確かに神に好かれたのかもしれない。そうじゃなかったら俺は神の法則を理解することもなかったし、アテナは神の領域に達する力への拒否反応がなかった。神が仕掛けた思惑のようだ。

「国分教太。町まで送りますのよ。町に来ている団員を止めることができるのはわたくしだけですのよ。いっしょに行きますのよ」

「ああ、その前に」

 右腕に破壊を司る黒い靄。そして、左腕に赤黒い龍属性土属性で出来た岩の剣を生成する。アテナは槍を構える。

「その茂みに隠れる奴らを振り払ってからにしようぜ!」

「賛成ですのよ!」

 その瞬間、茂みから影が俺たちに襲い掛かる。

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