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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
天の領域
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法則と領域②

 セミの鳴き声だけがただひたすら聞こえる森の中で俺とアテナはふたりで妙な態勢でいる。俺は崖にもたれるように立ち、その俺の肩に足をのせて同じように崖に背もたれる。俺が見上げるとスカートの中が見えてしまう。それが恥ずかしいアテナが俺の顔面を蹴る。ちょうどいいところに俺の顔があるからだ。でも、そのせいで俺が態勢を崩してしまうと枝に刺さった翼に痛みが走る。こうして互いに小競り合いが続き疲れ果てているのが現状だ。

 俺の顔はアテナが蹴るせいで傷だらけの泥だらけだ。アテナの方は白い翼がさらに真っ赤な血に染まっている。

「こ、ここは一時停戦をしよう」

「賛成ですのよ」

 息を切らしながら賛同してくれたありがたいことだ。

「・・・・・ひとつじゃなくていろいろ聞きたいんだけどいいか?」

「顔をこちらにあげなければ答えられる範囲で答えてあげますのよ」

 まだ、怒っているようだ。そろそろ許してくれてもいいと思う。

「どうして俺たちはこんな森の中にいるんだ?えっと、あ、アテナさん?」

「アテナでいいわ」

 よかった。どう呼んでいいものか直前になって迷ってしまった。本人でお墨付きの呼び捨ての許可がもらえたので遠慮なく。

「アテナ」

「なんですの!」

 どうしてそんな怒っている口調なんだ?意味が分からないんだけど?理不尽さを感じる。

「それで何で森に?そして、どうしてあんたの翼がそんな怪我を負っているんだ?」

「・・・・・わたくしの羽の力がどのようなものなのかあなたはその身で実感していまして?」

 この両手首を拘束している白い羽の力のことか。

「魔術と教術の発動の妨害。後、瞬間的な衝撃波の発生とか?」

「まぁ、その通りですのね。わたくしの白い羽の力は攻撃力と相手の無力化が主な使用用途ですのよ。今、あなたの手首にあるのがその無力化の方ですのよ」

「力を発動しようとすると電気が流れたような激痛が走って力の発動を妨害しているってそれを俺たちがこの森にいる関係性がまったく分からないんだが?」

「通常ならばこの羽の妨害がある限り魔術、教術のような魔力を使うものの類は使うのは電気のような激痛に耐え抜く以外に方法はありませんのよ。でも、この痛みに耐え抜くのは不可能ですのよ。命が危うくなるという危機感に誰もが魔術と教術の発動を止めるはずですのよ。あの男を除いて」

「・・・・・拳吉のことだな」

 たぶん、アテナは頷いた。

「徳川拳吉は魔術、教術にも属さない力の使い手でも魔力を使うことには間違いありませんのよ。彼はわたくしの羽の力によって力の発動には激痛が走るはずですのよ」

「でも、拳吉は発動していた」

 白い羽で出来た壁を突き破って来たとき。バチンという音が何度も響いていたし、血も出ていた。とてつもない激痛に襲われていたはずだ。それでも拳吉は俺を救うために痛みに耐えていた。

「ですが、生き物と言うものは命の危機に体が自然と安全な方面に動いてしまうものが普通ですのよ。拳吉もはじめは羽の効力によって力の発動には至っていませんでしたのよ。ただ、あの掛け声の瞬間その発動無力化の効力を弾き飛ばすような力が発動しましたのよ」

「そ、それは?」

「解放段階4と」

 拳吉の強さはあの解放段階によって左右されるようだ。俺が今まで見て来た拳吉の力の中では一番高かった解放段階は3。それでもかなり強力だったのにもかかわらずそれを超える力を使ってきた。

「羽の力の無力化は確かに働いていましたのよ。でも、その無力化を越えるとてつもない魔力の量によって無力化が追いつかなかった。それよりも拳吉の強い意思によって彼の攻撃はわたくしを襲いました。ですが、解放段階4というのは制御が難しかったようで近くにいた国分教太、あなたごとわたくし拳吉は吹き飛ばしましたのよ」

 おいおい、あのバカ将軍のせいで今こんな目に合っているのかよ。何がこの国の民のことを第一に思っているだよ。危うく俺が死ぬところだったじゃないか。・・・・・待てよ。

「あの拳吉のことだ!俺の安否を気遣ってすぐに俺たちを探しに来るはずだ!俺たちを吹き飛ばしたのは拳吉だ。どこの方角にどのくらい飛んで行ったのか拳吉なら分かるはずだ」

 それで適当に右京あたりを使って探させるはずだ。いや、あの場には風属性長距離移動のできる霧也に時空間魔術を使えるリンさんもいるんだ。なのにどうして拳吉たちは俺たちを探しに来ない。もう、見つけられていてもおかしくないはずだ。

「すぐに見つからないのはたぶんわたくしのせいですのよ」

「アテナのせい?」

「・・・・・わたくしはこの国に単独で潜入しましたのよ。それに当たって団から定期的に連絡が入ってきて状況の報告をしますのよ」

 連絡って一体どうやってするんだ?そもそも、このアテナという少女が魔術を使うのか教術を使うのかすらも俺は知らない。あの翼は体と一体になっているみたいだからグレイの時のような魔術、教術によって作り上げた翼ではないようだ。

 そんな俺の疑問を余所にアテナは続ける。

「連絡できる状態ではない時、いわば先ほどのような戦闘状態の場合は団の者がわたくしのいる座標から魔力探知をかけてわたくしの生存を確認しますのよ。戦闘終了後にわたくし自ら直ちに連絡をすることが義務付けられていますのよ」

「その座標を確認するための手段ってなんだ?」

 それがきっと連絡する手段と同じだろう。

「通信魔術ですのよ。あなたは一度も使ったことがないのですのか?」

「いや、そんなことはない」

 宿泊研修に向かうときに魔術の発動なしにカードに触れただけで霧也と会話したのを覚えている。でも、それで位置の特定ができるなんて知らなかったけど。

「今、わたくしはその通信魔術のカードを持っていませんのよ」

「え?」

「拳吉に吹き飛ばされるときにそれらの荷物を入れたウエストポーチがどこかに落としてしまったみたいなんですのよ」

「それだと団の奴らがアテナの生存が確認できなくなるんじゃないのか?」

「そうですのよ。その場合、団はどのような動きをするか知っています?」

 俺が知るわけないだろ。俺はこの世界の住民じゃないし、組織同士のいざこざについてもこの世界に来て初めて知ったことだ。つまり、1週間前くらいに初めて知ったことだ。

「その感じだと知らないようなので教えてあげますのよ。団長は・・・・・ああ、わたくし黒の騎士団のボスですのよ。団長はわたくしたち団員を家族のように大切に思いかけがえのない存在として大切に扱ってくれますのよ」

 アテナその後、照れたように実際にわたくしも本当の娘のようにゴニョゴニョと言葉を濁す。

 それから口調を元に戻す。

「そんな団長がわたくしの生存が確認できないとなるととる行動はただひとつですのよ」

「アテナの捜索か」

「ご名答ですのよ。おそらく、もう複数の団員がこの国に入ってきていてもおかしくありませんのよ」

 だから、拳吉たちの助けが来れない。黒の騎士団の妨害を受けているせいで。

「待て!おかしくないか!」

「何が?」

「俺とアテナが飛ばされてまだほんの30分程度しかたっていないぞ!それにしてあまりにも行動が早すぎないか!そもそも、そんな突然この国のしかも国家の中枢部である中央局のある市街地のど真ん中にいる拳吉たちを妨害するなんて不可能じゃないのか!」

「不可能ですのよ。でも、あれを使えば可能です」

 あれとはひとつしかない。美嶋が最も恐れていた展開。

「時空間魔術だな。でも、あれは条約で敵地の急襲には使用禁止だって!」

「原則禁止なだけで完全な禁止とはしておりませんのよ。黒の騎士団の理念は世界の警察。世界の平和と秩序のために活動をする団として原則禁止の事項でも破ることは決してありませんのよ。でも、団長は団員の、家族のためなら団の理念に反していることである条約を破るだけの覚悟のある人です。徳川拳吉が自国の民のために身を削るのと同じ理屈ですのよ」

 アテナが見えていないのにもかかわらず、それだけのことを自信満々に言うということはこのことは嘘ではない事実の可能性が高い。

「だったらさ、その平和にこれ以上の犠牲者を出さないためにもアテナは俺のこの手の羽の拘束を解くべきじゃないのか?」

「それはできないですのよ」

「どうしてだよ?」

 黒の騎士団がアテナを探すために拳吉たちを妨害しているということは戦闘状態であるということになる。戦闘状態である方が犠牲者が多く出る。彼女の言う平和とはまったくベクトルが違う。平和とは戦わないことが大前提だ。にもかかわらず、アテナは俺の拘束を外そうとしない。俺が信用できないという理由があるかもしれない。でも、可能性的には俺の拘束を解いた方がことは平和裏に収まるはずだ。少なくとも俺は逃げずにアテナを助けるつもりでいる。

「国分教太、あなたの拘束し行方をくらますことでこの世界の最大の危機が遠ざかることを意味していますのよ?」

「・・・・・お、俺が世界最大の危機ってどういうことだよ?」

 シンの奴はこの力を使ってそんな悪いことをしていたのか?

 確かにこの破壊の力は何だって破壊することができる。でも、その破壊できるものには上限がある。それは大きさだ。そんな世界の危機になるようなこと、例えば無敵の槍で大陸を破壊するような大それたことはこの力ではできない。だから、アテナの言う危機の意味が分からない。

 アテナはしばらく悩んでから答える。

「あなたは陣の作成について聞いたことはありますか?」

「一応、ある程度のことは」

 アキの魔術講座を受けた時に教えてもらった。陣にはレベルが三角、四角、五芒星、六芒星、八芒星という順にレベルが上がっていく。円の中にそれらを線で刻んでいく。途中に重なるところにそれぞれの魔術に必要な物を置いていく。それから外側に英語で必要事項を書き込んで完成する。基本的に陣は本などの資料を使って作成して収納魔術を使ってカードの中に仕舞って発動するのが主流らしい。教術師である俺には無縁である。

「陣がどうしたんだ?」

「イギリス魔術結社のことは知ってますか?」

「知ってるよ。組織と対立している魔術組織だろ。あのな、俺は基本的なことはアキとか霧也とかから学んでるんだ。そのくらいの基本事項は大丈夫だ」

 たぶんだけど。

 アテナは分かりましたのと挟んでから話す。

「わたくしたち黒の騎士団があなたを拘束するのにはある理由がありますのよ。それは今の3大魔術組織によって保たれている安泰を簡単に破壊する恐ろしい魔術によるものですのよ」

「その魔術ってなんだよ?俺は教術師だ。魔術は発動できないぞ」

「そんなことは知っていますのよ。バカにしないでほしいですのよ」

 俺はついさっきバカにされた。

「イギリス魔術結社はとある強大な魔術を発動しようと計画していることを団は突き止めましたのよ」

「強大な魔術?」

 その魔術と俺の関係性が見えてこない。ここで口を出すと話がそれと思った俺はアテナの話を黙って聞く。

「カントリーディコンプセイションキャノンという契約系の魔術ですのよ」

「な、な、なんだ?その長い名前の魔術は?」

「この世界に住んでいないのなら知らないはずもないですのよ。ですが、この世界に住んでいるものならば一度は耳にしたことのある魔術ですのよ」

「そんな常識的な魔術なのか?」

「そんなことはありませんのよ」

「じゃあ、一体?」

「カントリーディコンプセイションキャノンは英訳で国分解大砲と言いますのよ」

 なんだよ。その物騒な名前は。

「名の通り。撃ち出された弾丸が着弾したその国は跡形もなく消滅しますのよ。そこにいる人はもちろん動植物その土地そのものが跡形もなく消えてしまうんですのよ」

「消えるってどういうことだよ」

「そのままの意味ですのよ。そうですね。実例をお話ししますのよ」

「じ、実例って?」

「カントリーディコンプセイションキャノンは一度発動し、二度その砲弾をこの世界にはなっていますのよ。一度目の着弾地点は大西洋に浮かぶ小さな島。ポルトガル領のその島に魔術師たちが集まり独立を宣言しましたのよ。小さな島でしたが、独立を宣言した領海には大量の魔石が海底資源として眠っていましたのよ。魔石が独占されると恐れたイギリス魔術結社はある実験も兼ねてある古代魔術兵器の使用に踏み切りましたのよ」

「それがそのカントリーなんとかかんとか砲」

「カントリーディコンプセイションキャノンですのよ。なんで途中で日本語が入ってきてるんですのよ」

 うるさい!さっき知ったばかりの名前をそんなすぐに覚えられないだろ!

「それでその何とかキャノンを撃ってどうなったんだよ?」

「・・・・・イギリス某所から撃たれたその砲弾が着弾した瞬間、マグマにも似た火柱と共に破裂音と衝撃波が発生しました。しばらく天災のような異常気象が着弾地点で続き収まったころにイギリス魔術結社の使者が様子を見に行きましたのよ。そこには何もありませんでしたのよ」

「何もなかった?」

「島も何もかもが消え去っていましたのよ。その島には1500人ほどの人が住んでいたはずなのにそこには島も何も爆発によって飛び散ったであろう家屋の破片も木々の破片も島の残骸も何もかもが消えてしまっていたんですのよ」

 おかしい。アテナの話ではその何とかキャノンの砲弾は着弾して爆発したと言っていた。なら、爆発によってなにかその島の証拠が残るはずだ。それすらも破壊したというのか?

「このカントリーディコンプセイションキャノンは射程の制限もなく、また魔力の装填で何度でも撃ち放つことが可能ですのよ。その気になればこの世界事消すことも可能な魔術なのですのよ」

 その規模があまりにも強大過ぎて実感が沸かない。

「何よりもイギリス魔術結社が問題視していたのはその島の領海内に眠っていたはずの海底資源までもが消えてしまったことですのよ」

「は?」

「つまり、カントリーディコンプセイションキャノンはその国の存在した形跡、財産等をすべて破壊する兵器ですのよ」

 すべてを破壊する兵器。それはまるで俺の持つ力に似ている。触れたものを何でも破壊する。その力が強大かつ凶悪化した物がその何とかキャノン。

「2度目はどうしたんだ?」

「2度目はイギリス某所で撃たれたその砲弾はロンドンに放たれましたのよ」

「え?」

 イギリス魔術結社は自ら発動した魔術で滅んだのか?いや、現にグレイとフローラという幹部クラスの奴がいるのだからまだ健在なはずだ。財産から何もかもを奪うその砲撃を凌いだということになるのか?

「2度目の砲弾は誤射でしたのよ」

「ご、誤射だ!?」

「はい。イギリス魔術結社が創立した魔術学校の生徒が誤って撃ち放ってしまいましたのよ」

 おいおい、そんな危険なものを子供が扱えるようなところに置いておくなよ。

「ですが、その砲弾は着弾する前にある男によってそれを免れましたのよ」

「ある男?」

「ロズ・エクハルト。イギリス魔術結社の七賢人は第5の男ですのよ。そのロズによってカントリーディコンプセイションキャノンの砲弾は着弾せずに済みましたのよ」

 そのカントリーディ何とかキャノンを誰もが知るということはそういうことなのか。世界でも名高い魔術組織が危うく滅亡しそうになったからだ。

「その時にカントリーディコンプセイションキャノンの存在が危険と判断したイギリス魔術結社は破壊をしたのですが・・・・・」

「また、発動しようとしていると?」

「はい」

 意味が分からない。一度、自国を滅ぼしかけた強大なその魔術兵器をなぜもう一度使おうしているのか分からない。また、自分の国を滅ぼしかねないぞ。

「発動には魔術師と教術師、そして神の法則に守られし教術を使う者。資料にはこの者を神の術を使う者として神術師と呼ばれていますのよ。この3人の人物を陣の重ね点に置くことでカントリーディコンプセイションキャノンは発動しますのよ」

「つまり、その神の法則で守られし教術使い、神術師として挙げられる人物が」

「シン・エルズーランですのよ。そのシンが死んでしまった今、次の候補はあなたですのよ。国分教太」

 だから、俺の力が世界最大の危機ということか。俺以外に神の法則に守られた教術を使う奴はいない。俺さえいなければそのキャノンは発動しない。

「黒の騎士団としてわたくしはあなたの命の保証をし、安全に元の世界に送り帰しますのよ。その前にシンの力を抜き取り破壊するという工程がありますが・・・・・」

 セミの鳴き続ける森の中で聞いたこのことが本当に事実なのか俺には分からない。そもそも、そんな大それた兵器があるということすら俺には分からないことだ。世界の平和を保つためにはその古代魔術兵器の発動は阻止しなければならないということは分かる。だが、それにしてはやり方が強引すぎる気がする。

「MMにはこのことを話したのか?拳吉には?」

「MMには話しましたが取り合ってくれませんでしたのよ。わたくしたちがカントリーディコンプセイションキャノンを使うのではないかと疑われたので」

 確かにその可能性はある。それでこの国が狙われたらひとたまりもない。

「拳吉には言ったか?もし、その最強キャノンが実際に存在して知っているのだとしたら拳吉ならこの国のためにやむを得ず俺のこの力の破壊くらいは手伝うはずだが?」

「わたくしたちはここまで組織と国の政府が独立して自治していることを知りませんでしたのよ。なにせ、この国は未だに鎖国状態にありますので」

 ああ、そういえば江戸時代はずっと鎖国状態だったな。ほぼ寝てた歴史の授業でそんなことをつるっぱげな先生が言っていた気がする。

「MMもその鎖国状態のこの国を利用して組織の情報を完全にシャットアウトしている感じですのよ。組織にいる有力な教術師はMMとフレイナの他にどのようなものがいるのか全く分からないんですのよ」

 そんな状態でよくひとりこの国に来たな。それだけこのアテナという少女は手練れということになる。

「ここまでの話を分かっていただけました?わたくしがあなたを拘束する理由が正当であるということ。ですから、あなたの拘束を簡単には解くわけにはいかないですのよ」

 だからと言ってこのままアテナを助けに来たという黒の騎士団の奴らをほおっておくわけにはいかない。もしも、アテナのような手練れがやってきた場合はどうなるか分からない。あの場で一番頼りになる拳吉はアテナによってかなり怪我を負っている可能性が高い。黒の騎士団の連中がみんながみんなアテナのような平和意識で動いているとは限らない。

「俺はアテナの話を信じたうえで話す。俺はこの力をあんたらに渡す気はない」

「・・・・・話聞いてましたの?あなたは国を世界を一瞬で消し去ることのできる魔術の発動の人柱なんですのよ!イギリス魔術結社があなたの身柄を手に入れた瞬間、あの結社はカントリーディコンプセイションキャノンを使い脅しをかけてくるはずですのよ。この砲弾を着弾させたくなければいうことを聞けと」

「そうかもしれない。でも、平和を望んでいるという割にはなんだ?この強引な対応はどうなんだ?結局、あんたもMMたちと同じだ。力があることをいいことに弱いものを押し付けて踏み潰していうことを聞かせる。この世界の奴らはみんなそうだ。力、力、力、力。力が魔力という形で目に見える形であるだけでこの差はなんだ!こんな力だけが支配する世界で平和なんて!」

「黙りなさい!」

 崖に刺してあった槍を引き抜いて俺に向けてくる。

「力がすべて?確かにこの世界では魔術が教術が魔力がすべてですのよ!それが生み出したのは人の欲が生み出した負の力!その負の力を振るうしかない体になってしまったわたくしの身にもなってほしいですのよ!」

 力を振るうだけの体ってどういうことだよ?

「あなたは知らないはずですのよ。この世界において戦争が起こるというのはわたくしのような負の力によって呪われた者たちが多くいるということですのよ」

 呪われた者?

「確かあの二刀流魔武を使う風属性使いの男。風上と風也と呼ばれていましたのね。彼は機関の出身者であることは名だけで明白ですのよ。わたくしも彼と同じですのよ」

「え?」

 霧也と同じ?ということはこのアテナという少女も機関の出身者なのか?いや、今までの機関出身者は氷華、雷恥、火輪のようなそれぞれ使う属性が名に刻まれている。でも、アテナはそれはないしそもそも使っている魔術、教術が属性魔術ではない。

「一体どういうことだ?」

「・・・・・これを聞けばわたくしがどうしてこのような強引な方法であなたを拘束したのか分かるはずですのよ。いや、正直拳吉等がいたあの場においてわたくしの生い立ちを話すべきでしたのよ」

「どういうことだ?」

「この天使の翼は天の領域に達した天使の力によるものではありませんのよ。人が人の領域から天の領域に飛び立たせようとし失敗した哀れな天使。それがわたくしですのよ」

 何が言いたいの全然わからない。

「あなたは黙って聞いていればよいですのよ。時間は取らせませんのよ。わたくしのこの負の力である翼を手に入れた話ですのよ」

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