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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
天の領域
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龍の意志⑤

 演習所から一気に時空間魔術で移動をする。移動先は下京の指定された場所で真っ黒な穴を抜けた先は中央局のある天守閣へと続く橋の上だった。周りが深い堀で囲まれている天守閣をつなぐ木製の橋の上に俺たちは移動してきた。最初に俺。次にリュウ、最後にリンさんという順番で時空間移動をしてやって来た。移動先にいたのは黒髪に日本時らしい顔をしたジャージにマフラーを従えたこの国の最高権力者である征夷大将軍の徳川拳吉と元の世界で共に戦ったぼさついた黒髪に鋭い目つきをした男風上風也こと霧也がいた。半そでのワイシャツにズボンといった格好をしている。

「霧也。もう、怪我はいいのか?」

「ああ、完治とは言わないがアキナ程じゃない」

 霧也は前回のグレイとフローラの奇襲によって重傷を負った。どうも不意打ちを食らったらしく前回は全く戦っていないらしい。たぶん、それに責任を感じてこの場にいるのだろう。

 拳吉は全身から魔力を吹き出させることができるらしく、それで強力な防御と攻撃、さらに強靭な運動能力を得て戦う。将軍でもあるのにもかかわらず最前線戦うこの国の守護神ともなる。

「それで黒の騎士団が俺を拘束しようとしてるってどういうことだ?」

「まだ、ワシも詳しい話を聞いたわけじゃない。だが、どうも組織の本部の方に黒の騎士団の使者がやってきているらしい。そこでいきなり教太を拘束させろと言ってきたらしい」

「MMが機転を利かせて状況の判断がつくまでは教太をどこかに隠せと言われた」

 いや、訳分からない。俺は一体何を悪いことをしたんだ?

 確かに俺の中には誰も知らない神の法則によって守られたシンの力がある。しかも、それを俺は使いこなしている。それが悪いのか?確かに前の世界にいた時はこの力を狙って多くの魔術師に襲われた。

「この力って本当に貴重なんだな」

 俺がボソッとそう呟く。いろんな組織に狙われて散々な目にあってきたこの力を俺が手にすることは運命だった。過激な運命を受け入れる覚悟はあるかとゴミクズに言われた。結果的にその覚悟を受け入れてよかったのかどうか分からない。

「ともかく、教太はワシら中央局で預からせてもらう。そこの組織のお二人さんはそうMMに伝えてほしい」

「ちょ、ちょっと待てや」

 リュウが俺と拳吉の間に入る。

「俺は一応教太の護衛を頼まれとるんや。教太の力をつけさせるための訓練もしてたんや。俺らはMMの上司であって徳川拳吉、あんたの部下じゃない。俺らは俺らで教太の護衛を続けさせてもらうで」

「お、おい!リュウ!」

「教太ちゃん、ここは引き下がれないよ」

 そう言ってリンさんも前に出る。

「あなたは前から気に入らなかったの。いつも偉そうで上から命令しかしてこない」

 いや、将軍だしね。

「教太ちゃんを自分だけのものにしたいと思っても無駄よ」

「何を言っているんだ?ワシが教太を独占しようとでも?」

「そうするつもりやないんか?近年、中央局は有能な魔術師、教術師の不足に悩まされていることは知ってるで。その数少ない有能な魔術師のひとりのツクヨがいなくなってさらに戦力として不安が高まっているのを教太を使って抑制しようとしているのは見え見えやで」

 確かにリュウに言われるとそうかもしれない。組織には4大教術師のMMとフレイナ、それに魔女と恐れられてきたアキに数少ない龍属性の使い手のリュウに時空間魔術の使い手のリンさん。他にも多くの魔術師、教術師を所属していてもおかしくない。

 対して中央局は人材不足で拳吉以外に強い力を持つ物は少ない。

「それがどうした?教太は世界は違えどこの国の国民であることは間違いない。ワシにはその国民を守る使命がある!MMのような何を考えているのか分からない女が統括している組織に国民を置いておくわけにはいかない!」

「何が置いておくわけにはいかないよ。アキナちゃんはずっと組織に所属して戦い続けていたのよ。あなたはアキナちゃんにも同じことが言えるの!」

 リンさんの言うとおりだ。俺を保護のために組織から遠ざけようとしているのはよく分かる。でも、なぜ同じことをアキにもやってあげなかった。同じ疑問はきっと霧也も思っているはずだ。

「アキナはずっと国外にいた。国を守護するワシはこの国から出ることが出来なかった。助けに行こうにも行けなかったんだ」

 確かにそうだったかもしれない。でも、何だろう。俺の中で芽生えた突然の不信感。拳吉は純粋でまっすぐで疑いという言葉が無縁のような男だ。そして、この国のことを第一に思っていることも俺は知っている。でも、なんだ?この不信感は?

「アキは一体どこで魔女になったんだ?」

 俺の突然の呟きに誰もが振り返りそして答えない。

「そんなことはどうでもいいんだ。そんな風にして互いのいい訳を聞くのはもうたくさんだ。俺は一応組織の人間だ。そういうことになってる。でも、組織の籍を置くことになったのはアキのためだ。でも、俺は組織を信じない、MMを信じない。それなら自分のすべてを尽くして俺の大切な友人を守ってくれたアキのために俺は戦う。俺はMMの味方でも拳吉の味方でもない。俺はアキの味方だ」

 どっちの勢力につくとか俺には関係ない。俺は俺自信の意思でアキに従う。

「俺も教太の意見に賛同しよう」

「霧也」

「俺も教太と同じ境遇だ。アキナには命を救われている。それに教太自身にも借りがある。その借りを俺はまだ返した覚えはない」

 借りというのはたぶん氷華のことだ。霧也の恋人で同じ機関の出身者。俺は彼女を悪魔術の呪縛から救ったことがある。

「じゃあ、どうするのか?ワシらに聞かせてほしい。教太はこれからどうするんだ?ワシら中央局に助けを乞うか、それとも組織に助けを乞うか?選べ」

 この場にいる皆が注目する中、俺は答えを迫られる。無難に考えれば拳吉側の方が安全だ。MMのような怪しいたくらみは一切存在しない。でも、拳吉自身は俺を国民として守ると言っているが中央局の戦力不足のために俺を取り込もうとしている考えもある。リュウとリンさんの言い分を否定しなかったんだ。きっと、口に出していないだけでその考えはある。

「俺は・・・・・・」

「あなたはわたくしのもとに来るべきですのよ」

 声は突然、足元の橋を破壊して現れた少女からだった。突然の襲撃に誰もが反応が遅れた。橋を突き破って奇襲してきたのは4枚の羽を従えた銀髪の少女。碧眼で俺たちを軽蔑するような瞳とその容姿はまさに人の領域を飛び越えた天使のような輝きを放っていた。

「国分教太。黒の騎士団、第2分隊所属、アテナ・マルメルがあなたを拘束しますのよ!」

 天使は俺に襲い掛かる。

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