黒と白③
「行け、教太。この道を東に行けば右京か左京が待機している、あいつらにアキナを治療してもらえ。・・・・・本当にすまない。助けが遅れて」
地面に着地した拳吉は本当に悔しそうに拳を強く握りしめている。何があったのか俺には分からないがこの国を大切に思い命を捧げている拳吉がこの町の惨状を見れば悔やむ気持ちも分かる。俺にとっては誰も殺さない殺させないのが理念ならば拳吉の理念はこの国を守ることだ。
「アキナを助けられずにすまない」
俺もこのくらい強い意思を持つべきなのかもしれない。
「拳吉様!」
声がして振り返ると袴を着た拳吉の部下がやって来た。右京なのか左京なのかは見分けは未だにつかない。
「どうした!上京!」
右京でも左京でもなかった。
「フローラ・ザイスが時空間魔術によって逃亡しました!」
「何?」
フローラ・ザイス?グレイと共にこの国にやって来た魔術師か何かか?
「やれやれですの」
女の人の声がしてその方には拳吉の攻撃を食らって戦闘不能になっている。その隣に立ってるのはグレイとは対照的な。色白の肌に銀髪の髪にクリーム色のスカートの短いワンピースを着た碧眼の瞳に整った顔立ちをした女性。本屋でグレイに出会った時に一緒にいた白い女の人だ。
「フローラ。ようやく、お前の姿を見ることが出来たぞ」
「それはそうですの。私は自分で作った兵団に戦わせるので自ら出向く必要はないですの」
「じゃあ、どうしてわざわざワシの前に現れた」
再び拳を構える。
「別にもう戦う意思はないですの。グレイと連絡がつかないので拾いに来ただけですの。もう、これ以上あなたの国では何もする気はありませんの。私とグレイはの話ですけど」
「どういうことだ?」
「さぁ~。私たちはただボスの命令でこの国に来ただけですの。MMにフレイナ、そしてあなたのような猛者がいるような国に私としてはあまり来たくない国でしたの。グレイはやる気満々みたいでしたが」
拳吉が話している最中のフローラに向かって拳から放たれる衝撃をお見舞いするが白い粉子がそれを防ぐ。グレイとは真逆の白い粒子。
「女性のお話は最後まで気ものですの。それではもてませんの」
「相手がワシの国を荒らした奴だ。容赦はしない」
フローラは大きくため息をつく。
「国分教太、そこの彼ですの?」
「あ、ああ。そうだ」
「あら、意外と男前ですの」
そう言われてドキッとしてしまう。敵なのに意識してしまう面からして耐性がない証拠だ。
「また、会いましょう。では、ごきげんようですの」
その瞬間、フローラとグレイの足元に真っ黒な穴が発生してそのまま落ちて消えた。
「時空間魔術で逃げたか」
「拳吉様追いますか?」
「その必要はない。アキナがちょっとまずい状況だ。すぐに治療をしてくれ」
「承知しました」
上京がやってきてアキナの様子を窺う。
「・・・・・ひどい」
そう呟いてカードを取り出して魔術を発動させるが、一向に良くなる気配がない。
「拳吉様!アキナ様を設備のいいところに移動させようと思います!何か乗り物を手配をお願いできませんか!」
「任せろ!」
そう言うとジャンプで飛び上がりどこかに行ってしまった。
「国分様。一体、アキナ様は何をなされたのですか?」
「え?」
「魔力切れがひどいです。生命維持の方にも魔力が渡っていません。非常に危険です」
アキが何をしたのか。
それはきっと自分の力の証明だろう。美嶋を俺の元に帰すために規格外とやれる力が自分にはあるんだとアキは美嶋に証明するために無理をしたんだ。
「バカだろ・・・・・本当にバカだろ」
この戦いで分かったことがある。
俺はまだまだ弱いということだ。




