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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
人の領域
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出立①

魔術とは

魔方陣と十字架を使いことによって発生する現象のこと。

人の中に宿る魔力を糧に火や水を起こしたりする。

魔術世界においては生活必需となっている。

 持ち物は着替えに歯ブラシに・・・・・シャンプーとかもいるか?でも、さすがに家のを丸々持っていくわけにもいかないから持ち運べる小さい奴を買ってくる必要がありそうだな。

「・・・・・ってこれだと旅行みたいじゃないか」

 俺こと国分教太はほぼ物置と化した自宅の自室にいる。クローゼットからボストンバックを引っ張り出して着替えとかいろいろその中に詰め込む。

「そういえば、夏休みの宿題とかも持っていないとまずいな」

 そういって学校用の鞄から夏休みの課題の冊子を数冊乱暴に詰め込んで筆記用具も後から入れる。

 何ら旅行と変わらない持ち物。必要ないのは現金と連絡手段の携帯電話くらいだ。でも、一応持っていく。向こうで使えるかもしれない。向こうというのは魔術の世界である。いわゆる異世界だ。俺は異世界にとある人物と交渉しに行くのだ。それはマラーこと俺の数少ない友人である蒼井空子の処遇についてだ。彼女を含む周りには多くの非魔術師(アウター)がいる。非魔術師(アウター)は魔術師に対する憎悪が強く恨んでいる。彼らの爆発力は戦争が起きてもおかしくないくらいらしいのだ。それが爆発しないのには彼らに力がないからだ。蒼井たちはそんな非魔術師(アウター)の力になりうるものを作り出した。それが魔術無効化武器。魔力が絡むものをすべて無効化してしまうそれは魔術の世界のバランスを崩壊する危険なものだ。アキたちの属する組織のボスMMからは今すぐ蒼井たちを殺せとの命令だった。アキたちは殺したというウソの報告をしたが信じてもらえなかった。俺は今までひとりを除いて誰も殺していない。いろいろと理由があるのだが、話すと長いので割愛する。ともかく、それを貫いていることが上にも知れ渡っていたらしく信じれ貰えない原因となった。

 俺は詰め終わった荷物を枕にして部屋の隅で横になる。

 俺と直接話したい。魔術の世界において知らない者はいないという教術師本名ミレイユ・ミレー、愛称はMM。どんな人物なのか全く予想が出来ない。アキたちの味方ということにはなっているが実際どうなのか分からない。今回の訪問も真っ向からぶつかりに行くようなものだ。

 俺の持つこの力もチート級で充分恐れられているが、MMはそれと同格かそれ以上だ。そんな巨大な緊張感と共に異世界に行くのだが・・・・・。

「なんか緊張感が日に日に薄れてる気がするのは俺だけか?」

 夏休みに入って1週間たってもうすぐ8月になろうとしている。物置と化している俺の自室にもエアコンだけは動いてくれているだけに快適だが床で寝るという寝心地の悪さと家族に対する俺への態度での居心地の悪さからすると最悪だ。

 夏休みはどこでどう過ごそうか悩んでいたが、ちょうどいい暇つぶしの場所を見つけてホッとしている。正直、こんなところに長期間いたら気がどうかしてしまいそうだ。

 俺と家族の間にできた溝は2年前の事件がきっかけでそれからお互いに改善する気がさらさらない。だからと言って得に困ったことはないからいいんだけど。

「トイレにいこ」

 そう思って置かれている物の間を縫って扉を開けて外に出ようとすると途中で何か当たって開けるのを邪魔される。

「なんだ?」

 でも、その抵抗は軽く押せば扉は開いた。するとそこにはお盆におにぎりとペットボトルのお茶が置かれていた。そういえば、晩飯をまだ口にしていない。

 するとバタンと急に隣の部屋の扉が閉まった。隣の部屋は妹の文香の部屋だ。

 あいつが?いや、俺の起こした事件のせいで苦しい思いをしたのはあいつも同じだ。人殺しの妹ってね。ここ2年まともに話したことないのだが、このおにぎりはどういうことだ?

「・・・・・毒とか入ってないよな?」

 匂いを嗅いで確かめ。

 すると隣の部屋の扉が突然開く。ピンクの寝間着姿の文香が出てきた。若干、頬を赤くしながら俺の方を一瞬だけ見てそれからそっぽを向くように目線を外す。俺の真横を通って行く。1階に行くには俺の部屋の前を通らなければいけないからだ。

「毒なんて入ってないから」

 それだけを俺に告げるとそのまま1階に走り去ってしまった。

 2年ぶりに文香の声を訊いた。

「あいつってあんな大人の女の声してたっけ?」

 聞かれると怒られそうなので小さな声でぼそっと言う。

 おにぎりにかみつくとそれは塩が利きすぎてしょっぱかった。でも、全然不味くなかった。思えば、一番文香が俺とこの2年間関わっているかもしれない。家族として。会えば俺のことを見る。おやじのような完全無視でも母さんのような超他人行儀も出ない。少し兄貴に反抗するただの妹と考えれば普通なのかもしれない。そう思うとなんか涙が出てきた。

 溝が少しずつ浅くなろうとしているのかもしれない。

「帰って来よう」

 異世界に行ったらちゃんとこの世界に、この家に戻って来よう。おにぎりを食べきりお茶を飲み干してから書置きをして自室に戻る。書置きにはただありがとうと書いた。

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