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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
人の領域
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黒と白②

龍属性魔術とは

属性魔術のひとつ。

他の属性魔術と異なるのは苦手と得意が発動する龍属性によって違う。

発動する龍属性は他の属性魔術と類似である。

例えば、龍属性の火属性であれば、その特徴はすべて火属性となる。

属性魔術の波長の制約を受けないためにほぼすべての属性を龍属性で使うことができる。

 ツクヨ。

 最初はただのおばちゃんだと思っていたが実際はこの国と組織を陰で支えている重要人物だった。元々は中央局の官僚だったらしいのだが結婚後退職したらしい。しかし、今まで有力だった時空間魔術師が国外逃亡したために再びパートという形で籍を中央局に戻させたらしい。実のところツクヨの結婚相手がその有力な時空間魔術師だ。

「彼の名前はヤシマという。今現在は黒の騎士団にいる」

「黒の騎士団って組織と同じくらい勢力の大きい魔術組織じゃないか?」

 そんな組織にいるって。

「ヤシマはツクヨとふたりの息子と娘を置いて逃亡したままだ。国外逃亡の原因理由は後日手紙という形で発見された。MMへの信用性の低さが理由となっていた」

 MMとこの国の隔たりは予想以上に大きなもののようだ。

「というかさ、その時空間魔術師同士の間にできた子供も時空間魔術を使えたりしないのか?」

 特定の人物にしか使うことが出来ない特別な魔術だ。遺伝くらいするんじゃないのかと思った。

「一応、ふたりとも時空間魔術を使えるが・・・・・問題があってだな」

「問題ってなんだよ?霧也?」

 街中を拳吉の家来のひとりから聞いたツクヨが行きそうな場所を回っているが姿は一向に見えない。今はツクヨが日ごろから通っているという本屋に向かっている。

「息子の名前はタカシといったはずだ。今、イギリス魔術結社にいる」

「はぁ?」

「俺たちの組織とイギリス魔術結社は険悪な仲だ。常にぶつかり合いが起きている。そんな相手を逃亡先にしたんだ。父親と同じく不信感がMMにあったのだろう。タカシも父と母と同じように長距離移動の時空間魔術を使う有力な人物のひとりとして居場所を完全に確立している。娘の方は時空間魔術を使うが長距離移動は使えない。よって、お払い箱だ」

 息子が国を裏切って敵対勢力に逃亡したことよりも娘の方が優秀すぎる家族にいらないもの扱いされている。親が魔術師でも子供がその魔術をそのまま遺伝するというわけではないのか。無残な現実だ。

「ついたぞ」

 ツクヨが通っていたという行きつけの本屋だ。木造二階建ての古い家だ。一見駄菓子屋のようにも見えるが外にはキャスター付きの本棚が置かれておりそこには雑誌なんかも並んでいる。中に入ると一層薄暗くて何か幽霊的なものが出てきそうな雰囲気だ。それでも漫画コーナーには子供たちが集まってこれがおもしろいだのおもしろくないだの騒いでいる。

 店中を霧也と共に歩き回るがツクヨの姿は見当たらない。

「マジでどこに行ったんだよ」

 あのおばさんがいないと俺たちは元の世界に帰れない。それに早く美嶋を元の世界に帰してやらないとあいつの気がどうかしてしまうかもしれない。フレイナとどんな戦いをしたのか、俺は未だに痛みの残るやけどの痛みのせいで詳細を見ていない。でも、全く歯が立たなかったのは目に見える。あいつも俺と同じようにアキに魔術の基礎を学んでどんな属性に対してこの属性は有効なのかを分かっている。その考えが通用しなかった時の絶望感は半端ではなかっただろう。特に属性魔術を中心に使う美嶋には。

 レジには店番をしているのであろうおっさんが居眠りをしながら店番をしている。そのレジの横に立てかけてあった新聞に俺は目が行った。

『イギリス魔術結社、不穏な動き。組織への攻撃準備か?』

 と書かれていた。隣の新聞には別の記事が一面になっていた。

『黒の騎士団。近々、組織に制裁行動へ』

 これを見ると3大魔術組織と言われる3つの組織はそれぞれがいがみ合って世界のバランスを保っている。そう、MMも拳吉も言っていたが俺は実際にそう思わない。

 俺がこの世界の関係者たちの会話で聞こえた重要なこと、黒の騎士団との関係がよくない、イギリス魔術結社とは険悪。まるで組織は二つの巨大組織を同時に相手しているみたいだ。

「本当に今のままでいいのか俺は分からない」

「どういうことだヨ?」

 突然した声に俺は驚いて振り返るとそこには色黒の男が立っていた。俺よりも少し背が高い黒髪の男。黒のTシャツに黒のパーカーを重ね着している。短パンも黒で本当に真っ黒の奴だ。そんでもって不気味だ。

「なんだよ?」

「いやいや、誰もいないところで急にぼそっと独り言を言うからサ。それになんか思いつめ感じだったんだゼ」

「そ、それは・・・・・なんかこの世界はこのままでいいのかなって思っただけだよ」

 見ず知らずの奴にあまり重要なことをべらべらと話す気に慣れない。世界のバランスと言うものはMMのような力の影響力のある者が大きく関わっている気がするのだ。

 すると黒い男は二つの新聞の記事に目が行ったようでにやりと笑う。

「ははぁ~ん。あんた、組織の人?」

「い・・・・・そうだな。一応」

 否定しようとしたがそういえば勝手に加担したことになっていることを思い出す。そうか、俺もこの国の人たちから見れば嫌われ者なのか。

「そんな組織の人から見てその二つの記事についてはどう思うわけヨ?」

「そうだな・・・・・よくないと思う」

「どうよくないと思う?」

「確かにバランスを保つには力は必要だ。でも、もっと平和裏にこのバランスを手に入れることだってできたはずだ」

「平和裏って言うト?」

「要するに話し合いだよ」

 少なくとも俺たちの世界では力による行使は最終手段だ。それまで話し合いの場を設けて話し合いで平和に事を解決しようとする。その意思がこの世界には大きくかけている気がする。力と言うものが個人に分かりやすく見えているこの世界には力を行使することが当たり前になっている。だから、この世界のバランスを常に不安定なんだ。

「話し合いカ。確かに平和的かもしれない。でも、力を持っている奴らはそんなことの解決に話し合いなんて選択肢はない。力は見せつけてことに意味がある。力を持つ者同士が混在するこんな世界では力は力で押さえつけるしかない。話し合いなんて無駄だと俺は思うゼ」

 確かにそうかもしれない。魔力という負の力は混乱を招く力だ。

「グレイ。こんなところにいたのですか」

「おお、フローラ。悪いな。ちょっと、この組織の少年に組織の在り方について聞いていただけだヨ。最終的には世界のバランスについてになったけどナ」

 真っ黒な男はグレイというのか。対してグレイを探していた女性はそれは正反対な感じだ。色白の肌に銀髪の髪にクリーム色のスカートの短いワンピースだった。碧眼の瞳と整った顔立ちは本当に輝かしくて見とれるレベルだが、なんかなじんでいるというか浮いているという感じはしなかった。

「そうなんですの。私たちのような一般人には難しい話ですの」

「まったくだゼ」

 両手をあげてお手上げみたいな感じだ。

「じゃあな、組織の少年くん」

 そう言うとグレイは本屋から出ていく。フローラという女性は俺の一礼してから後追うように店から出て行った。

 なんとも色の対照的な不思議なふたりだ。でも、何だろうな。味方って言う感じはしなかった。主にグレイという真っ黒の男に関しては敵対の意識を感じた。これは俺の物じゃない。俺の中に住んでいるゴミクズの意思なのかもしれない。

「教太?どうした?そんなところに突っ立って?」

「・・・・・いや、なんでもない」

 まだ、敵かもしれないとは言わない。何の確証もないし。

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