結社の軍勢②
「どうだ?」
「ダメですね、コマンド総指揮官」
と若い遠視系の教術を使う女がそう告げた。
「聖翠のバルカンは戦死。後に送った後続も一人を残して戦死しました。敵は魔女のほかに魔武を持った男がいます」
「魔女がいるのか・・・・・・」
この戦争が始まって1年が過ぎようとしている。魔女は逃亡軍が日本に入ったころに突然現れた少女のことだ。幼い容姿からは考えられないほどの魔術の知識を有しており、その魔術の知識を最大限に活用し、我々結社の進行を大いに妨害する。あの七賢人は第2のクロス・ハイドンを退けたというだけあって、魔術における戦いの実力は結社にいる並み居る歴戦の魔術師を多く葬ってきた。その魔女がいるとなると厄介だ。さらに気になるのは魔武を持った男のことだ。
「バルカンは魔女によって殺されましたが、残りは魔武を持った男にやられました。風の魔武を使うようです。まさに風のように味方を・・・・・」
「そうか」
後続部隊の魔術師たちは実力がないわけじゃない。この戦争の中で生き延びてきたものたちだ。そんな魔術師を風のように殺すとは普通じゃない。我軍勢にも魔武を所持した魔術師はいるが、なんせここ最近発明されて実装されたばかりで上手く使いこなすにいたっていない魔術師がほとんどだ。魔武は結社が発明した武器だ。敵にはいくらか渡ってしまっているという話も聞くが使いこなすのには時間がかかる。だが、その男は後続部隊の魔術師をほぼ全滅させたというのだ。ひとりで。魔武を使って。
「機関出身者か」
「あの魔武の扱いに慣れた感じはおそらく」
ユーリヤの阿呆が機関という施設を作って自分たちの言うことしか聞かない魔武という最新の武器を使える魔術師を育成しようとしていたが、機関内部の反乱によりその機関出身者のほぼ全員が魔武を所持したまま脱走してしまった。捕らえようと後を追った魔術師のほとんどが魔武に使い慣れた属性戦士にまったく抵抗できずに殺されてしまった。
魔女と機関出身者という分かっているだけでも超えるには非常に難しい壁。
「君、地図を」
近くにいた部下に地図を持ってこさせて地面の上に広げる。
「この先に村があるな」
「はい」
逃亡軍の前線部隊が壊滅してまもなく2週間になろうとしている。その間、後退したはずの残存勢力を終結させて自分たちの防衛線が構築されるまで我々の進行を妨害するためにはどこかで自分たちも拠点となるところで我々のやってくるのを待ち構えるはずだ。そうなると敵の拠点は近くの村となる。
「君」
遠視系の教術を使う女を呼ぶ。
「魔女と魔武を使う男以外に敵の姿は見えたか?」
「いえ、ふたりだけでした」
即答で答えたということは確実なことのようだ。
だが、あれだけの規模の攻撃をたったふたりだけで行ったとは考えられない。それに先頭の部隊だけを攻撃するだけで魔女が撤退するとも考えられない。攻撃はまだ続く。
「固定砲台照準を合わせろ」
「どちらに?」
コマンド総司令官は地図のある場所を示す。
「ここだ」
それはヨナたちが住む村だった。




