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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
新の領域
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脱魔女の章①

 魔女だった私が朝鮮半島で迫り来るイギリス魔術結社の魔術師たちの進軍を食い止めるために派遣されていた。硬いベースキャンプの寝袋で眠っているときにイギリス魔術結社の襲撃を受けたベースキャンプに駐在していた軍は壊滅状態となった。私も必死に応戦したものの壊滅常態になった全線部隊では前線を支えることは不可能だと判断した本部は前線を下げざる指示を送った。

 その情報を得たのは敵と交戦しながら敵から逃げるように入った山岳地帯でのことだった。通信魔術が生きていたのでその情報を得ることができて前線を下げた味方のところに向かおうとした。季節は冬だった。雪は降らないものの乾いた冷たい空気が私の体を凍えさせる。体を温める程度の威力の火属性魔術を持ち合わせていなかった私は寒さで無理そうな自分に鞭を打ちながら味方のところに向かっていた。でも、結局途中で力尽きて倒れてしまった。眠気は最高潮に達して倒れて横になったことで眠気に拍車が掛かり私は目を閉じて眠りに突いた。

 だが、次に目覚めるとそこはほのかに暖かい土でできた建物の中だった。薄いシーツを欠けられた状態で眠っていた私が体を起こすと私の脇に座り込んでいた男の人が風也さんだった。私が体を起こしたことに気付いて目を覚ます足元に置かれていた刀を手に取った。

「動くな」

「えっと」

「お前はどっちの人間だ?結社か?組織か?」

 この人たちはどちら側の人なのか。結社ならば殺される、組織ならば保護される。だが、今の私はそのどちらにも当てはまる状況下にはいない。

「えっと、その」

 答えに迷っていると唯一ある土の建物の出入り口から真っ白な人が入ってきた。

「風也。この斧どこにしまって・・・・・」

 私を見てその真っ白な人、氷華さんは手に持っていた斧を私に向ける。

「起きたのね」

「答えろ!お前はどっちの人間だ!」

 私は悩んだ末に答えを出す。

「ど、どっちでもありません・・・・・・けど」

 両手を挙げてそう告げた。疑いを目は完全にははれなかったが風也さんは刀を抜き態勢から解除されて氷華さんは斧を構えるのを止めた。

「そうか」

 私の嘘はあっさり受け入れられた。

 どうやらここは結社でも組織の管轄にもない現地の人の家のようだ。私はたまたま拾われたようだ。

「あのどうやら助けていただいたようでありがとうございます」

 とお礼のお辞儀をするために正座をしようと態勢を変えようとした瞬間両手首に何か違和感を覚えた。シーツのかぶっていた両手首を見るために少し手を上げるとその両手にはそれぞれ手錠がかけられてチェーンで地面に拘束されていた。

「え?」

「お前が結社の人間でも組織の人間でもないという言い分を完全に信用するわけにはいかない。だから、しばらくはここで拘束させてもらう。俺たちの平和な暮らしのためにも」

 といって風也さんは立ち上がって氷華さんが持っていた斧を受け取って近くのもの置き場に置いた。

「そうだ。名前を聞いていなかった。名は?」

 ここで美嶋秋奈と名乗れば魔女とばれて組織側の人間であることもばれてしまう。そうなれば私が嘘をついたことになってしまう。だから、名前は完全に公開することを避けた。

「アキナといいます」

「そうか。俺は風也だ」

「私は氷華よ。・・・・・・私たちの名前からもう分かるわよね?」

 当時、戦場で魔武という新しい武器を使って暴れまくっている魔術師の存在を多く耳にしていた。イギリス魔術結社が秘密裏に魔武を開発して使いこなせる人材を非人道的に育成していた。その人物の名前には属性の名前が必ず入っている。それは敵が魔武を使った強者だということだ。

「機関出身者」

 私も直接出会ったのは風也さんたちが初めてだった。

「勝手な真似をすれば殺すからな」

「あなたの魔術道具は全部没収してるから抵抗して無駄よ」

 魔術を使えない魔女の私はただの女の子同然だ。

「逃亡軍が全線を下げた。しばらくはこの辺りも戦火に巻き込まれやすくなっている。それが落ち着くまでお前はここでおとなしくしてもらう」

 それは自分たちが戦いに巻き込まれないようにするための手段だった。

 これが私と風也さんたちとの出会いだった。

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