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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
人の領域
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剛炎③

水属性魔術とは

属性魔術のひとつ。

火、土属性を得意とし、雷と氷属性を苦手とする。

攻撃力、防御共に平均を保つ万能な属性。

ただ、魔武との相性が非常に悪い。

 何が起こったのか分からない。

 美嶋が俺にありったけの回復魔術と治癒魔術、後は氷でやけどを治療してくれたおかげで体がだいぶ動かせるくらいに回復できた。医療系の魔術の技術力には本当に頭が上がらない。この回復、治癒魔術に何度助けられたか。

 それでも俺に迫る炎の熱と恐怖は消えない。初めて俺が魔術を使ったあの日に美嶋は炎に焼かれて一度死んでいる。それはまた体験させるのだけは絶対に嫌だ。

 俺は痛む体を押して炎から美嶋を守るように抱き包む。その瞬間、背中に感じたのは炎の熱。俺は確かにフレイナの炎の攻撃をそのものは真空の空間ヴァキュアー・フィールドで防ぐことはできた。しかし、その高すぎる熱と炎が地面に当たり爆発した衝撃を防ぐことはできなかった。俺は結局4大教術師のひとりの力を持っているのにもかかわらず、その4人の足元にも及ばない。

 異世界になんか来るんじゃなかったと、美嶋を連れてくるんじゃなかったと、後悔する。

 これで俺も終わりなのかと死を覚悟する。

 きっと、アキは怒るだろうな。

「ちょっっっっっっっっっと!待っっったーーー!」

 聞き覚えのある声が聞こえたと思ったらそいつは突然俺と炎の大蛇の間に現れた。黒色のジャージにマフラーというラフすぎる格好をしている征夷大将軍。拳吉だ。

「ケンカはその辺でー」

 拳吉は拳を作るとその周りが何か見えない何かで覆われる。

「終わりだー!」

 そう言うと見えない何かで覆われた右拳を振りかぶって炎に大蛇に向けて放つとその見えない何かが一気に解放さされて衝撃波となり勢いに負けて炎の大蛇が消し飛ばされる。その拳の勢いはあたり一帯に広がりあたりの火をすべて消し飛ばした。

 フレイナの身を包んでいた炎の大蛇も消された。

「あれ?将軍様じゃん。何か用?」

「何か用じゃない。フレイナ。お前は一体何をしている?」

「何ってただの腕試しじゃん」

「そんなただの腕試しでワシの大事な客人をひとり殺そうとしているのか分からないのか?」

 にらみ合う容赦。フレイナはこの国に拠点を構える組織の一員だ。組織は国から戦争の火種を連れてきたということで毛嫌いされている。拳吉は国の安泰を願って組織の拠点を置くことを許したが隔たりが埋まっていないのは組織本部の周りの状況を見れば一目瞭然だ。

「・・・・・そう思うならあたしゃを止めて見な」

 そう言うとフレイナを覆う無数の炎の大蛇が再び姿を現す。そして、拳吉を威嚇する。

「別にあんたがそういう態度をとるのならワシも手加減しないぞ」

 腰を低くして拳を構える。その姿は格闘家のようだった。

「徳川拳吉。あたしゃはあんたの強さを知ってる。ミレイユと変わらない強さを持っている。そんな強い奴と戦える。拳吉を殺せばあたしゃはさらなる高みに行ける!力って言うのは使わないと意味がないんだよ。賞味期限がある食べ物と同じで力って言うのは使わないとどんどん腐っていく。久々に本気を出せる相手にテンションが上がるじゃん!」

 火山が噴火するかのように火柱が高々と上がる。

「右京!左京!ふたりを安全なところに!」

 拳吉が二人の家来の名前を叫ぶと木の影から突然現れたふたりは俺たちを抱きかかえる。

「ま、待て、拳吉。相手は」

 だが、その声は拳吉には届かない。代わりに俺を抱きかかえる家来のひとりが答える。

「大丈夫です。拳吉様はただ徳川の血筋なだけで将軍をやっていませんよ」

「そうです。あの人は・・・・・強い」

 と美嶋を抱き上げるもうひとりの家来が答える。

 フレイナが従える炎の大蛇たちが集まって行き一匹の巨大な炎の大蛇となりあたり一体を火の海にしていく。その炎の塊は蛇ではなく龍だった。

熱暴の大龍(ワイバーン)!」

 その炎の熱は距離を開けている俺たちにも感じられる強さだ。そんな火の海の真ん中にいるフレイナはなぜ平気なのか疑問に思ってしまうほどだ。

 対して拳吉は身を低くして攻撃態勢に入る。

「解放段階2!」

 そう叫ぶとさっきは拳の周りだけを覆っていた見えない何かが全身を覆う。

「危険だ。左京!もう少し離れるぞ!」

 俺を抱える拳吉の家来がそう言う。

「了解!秋奈氏と風上氏にも避難するように下京か中京に伝える!」

 その焦り方は普通ではなかった。これから何が起きようとしているのか俺には予想できなかった。この右京と左京という二人の家来が慌てている中冷静な冷たい声が響く。

「その必要なない」

 この声にふたりは凍りついてしまったように固まり声のした方を見つめて動かなくなる。美嶋も声のする方を見ていた。俺も痛む体に鞭を打って声のした方を見ると神々しいその女はそこにいた。京和傘を同じような花魁風の着物着せた銀髪の女性に持たせて優雅にMMという女は立っていた。

「国分教太は大丈夫か?」

「た、たぶん」

 俺を抱える右京がそう答える。

「そうか、ならよい。わっちはあのどうしようもないバカを止めてくるなんし」

 そう言ってMMはゆっくりと歩み始める。山の斜面にMMの履いているような底の高い靴は歩きにくいのではないかと思っていたが、MMの足元には何か透明な平らな床のようなものがあってその上を歩いているおかげかバランスを崩すことなく進む。そして、ただ大声も上げずに名前を呼ぶ。

「フレイナ」

 すると突然、空をオレンジ色に変えるくらいの強い火が弱々しくなっていき消える。フレイナの方を見てみると俺たちと会話している時、戦っている時とは比べ物にならないくらい顔を真っ青にしていた。

「げ。ミレイユ」

 拳吉もフレイナの様子を見て振り返り体を覆っていた見えない何かが消える。

「MMか。何しに来た?」

「何しに来たって決まっておるじゃろうが。わっちのバカがバカなことをしたみたいじゃな。そのせいで城下はパニック状態じゃぞ」

 まぁ、何の変哲もない山だったこの場所でいきなり噴火みたいな爆発が起こるんだ。パニックになってしまってもおかしくないか。

「フレイナ」

「いや!ミレイユ!実はこれにはいろいろと事情があるじゃん!そう!前に言っていた奴のためにも国分教太の実力がどれほどの物かとか!」

「徳川拳吉」

 MMは完全にフレイナの言っていることを無視した。

「なんだ?」

「あのバカはわっちがきつく罰して置くなんし。じゃから、主は拳を下してほしいなんし。解放の2段階を解いてほしいなんし」

「・・・・・・分かった。だが、2度目があればどうなるか・・・・・分かっているな?」

「承知しておる」

 そう言うと自分の歩く先に見えない通り道が出来るとMMはその通り道を歩いてフレイナの元に。フレイナは口笛を吹くふりをして何かをごまかそうとしている。でも、それは無理だろう。周りの森を焼け野原にした時点でフレイナのやってしまったことは明確だ。

「フレイナ」

「な、なに?」

「飯抜きと外出禁止。どっちがいいかゆっくり決めようではないか」

「ま、待って!それはまずいってあたしゃ死ぬって!」

「死にはせんじゃろ。天下の炎の教術師フレイナが飯を食べられない程度で家から一歩も出れない程度のことくらい簡単に」

「いくわけないじゃん!ちょっと!本当に反省してるからそれだけは!それだけはー!」

 そう口げんかをしながらMMとフレイナは山をそのまま下って行ってしまった。

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