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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
人の領域
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剛炎②

火属性魔術とは

属性魔術のひとつ。

水属性と土属性を苦手とし、風と氷属性を得意とする。

防御にはあまり向かい属性であるか精密な高火力が特徴。

 強い熱風があたしやアキ、風上さんに襲い掛かる。アキはフレイナを体を張って家から追い出してやけどを負った風上さんをかばいながら爆風に耐える。あたしも身を低くして飛んでくる炎から自分の身を守る。活火山の火口にいるみたいに火柱が上がりマグマが空中で冷え固まった火山弾のような火の塊が上空に舞う。

 教太は炎を防ぐ手段があった。両手の教術を盾状にすることで炎を消すものだ。でも、この爆発の中心には教太がいる。周りの木々は爆風でなぎ倒されていき、炎の熱で燃えていく。顔をあげて見たその光景はもう地獄絵図だった。

 あたりは緑に囲まれた森が一瞬のうちにオレンジ色の炎に埋め尽くされた。

「な、何よこれ?」

 あたしは目の前の現実を受け入れることが出来なかった。

 あたしは時空間魔術かなんかで活火山の火口にでも飛ばされたのではないかと思うくらい本当に一瞬で緑からオレンジ色の森に変わる。その燃える森の中に一歩一歩しっかりした足取りで歩いている灼熱の赤い髪をした女はいた。

 フレイナだ。

 あたしたちには目もくれずにただ一点を見つめている。その先にあるものの心配をあたしはする。

「・・・・・教太!」

 あたしは教太に言われて用意していたカードを取り出す。それを地面に置いて十字架をカードに向かって打ちつけるとあたしを中心に四角形の陣が発生するとあたしの手のひらの中心に水の塊が出来る。それをあたしは進行方向に向けると水が勢いよく噴き出て火を消していく。

 燃える炎の熱は水をも消し飛ばす強さだった。それでも水をかけ続けてあたしは前に進む。

 確か教太がこの辺にいた。あいつは炎は消すことが出来ても熱を炎の熱を消すはできるとは限らない。教太は炎が燃えるための空気を絶つことで炎を防いでいるんだからこの高熱は防げない。

 あたしは同じ水属性魔術を開いた手でも発動させて両手で水を消した先にうずくまる影を見つけた。

「教太!」

 教太に向かってありったけの水を掛ける。すると教太から白い蒸気が上がる。

「教太!生きてる!返事して!教太!」

 教太の体に触れるとその熱さに手を引いてしまう。人の体温じゃない。

「ひ、冷やさないと!」

 冷やそうと氷属性魔術を発動しようとする。

「邪魔だ!」

 その前にあたしは両手に宿るありったけの水を上空に向かって出してあたり一帯の火を雨を降らせるように消す。その後、氷属性魔術を発動させる。氷の槍を飛ばして攻撃する五芒星の陣の魔術だ。その氷を発射せずに教太の体に当てる。見れば、教太の両腕は真っ赤にやけどしている。体を仰向けにすると顔も頬までやけどで赤くなっている。氷で冷やしながら慌てて回復魔術を使って回復を促すけどやけど傷は引く気配がない。

 教太は呼吸をしている。氷をあてると痛むのか顔をしかめるだけ。意識がない。

 あたしは焦る。どうすればいいの?回復も治癒も施した。雨も降らせて当たりの温度も下げているし、やけどした箇所に氷をあてて冷やしている。それでも教太は苦しそうな顔したまま目を開けてくれない。

 このまま教太が死んじゃう気がして涙腺が緩む。その時に聞こえた声。

「国分教太。やはり、あんたはシンではないな」

 あたしの降らせる雨はフレイナの頭上でその熱で蒸発して蒸気となっていた。そのせいでフレイナの周りには身を隠すような蒸気が立ち込める。フレイナが近づくとあたりの温度は一気に上がり肌が焼けそうだ。あたしの腕を覆うように発動していた氷属性魔術はゆっくりと形が崩れて溶け始めた。それを見たフレイナが驚いた口調で言う。

「本当に法則に外れた属性魔術を複数使えるのか。すごいじゃん」

 とあたしをほめる。それよりもあたしの虫の居所を悪くする発言がワンフレーズ前に合った。

「教太。あんたのそんな程度のことを確認するための道具じゃない!」

「・・・・・やる気じゃん」

 フレイナの目つきが変わる。

「これ以上教太に近づくな!近づいたら殺す!」

 教太の人を殺さない強い意志。それに反する発言だ。でも、そうでもしないとあたしが殺されてしまう気がした。

「威勢がいいじゃん!あたしゃそういうのが大好きだ!」

 あたしに負けないくらい威勢よくそう言うフレイナだがそれとは逆にフレイナを纏う炎の熱が弱くなっていくのを感じた。それは熱が冷めていくように。

「でも、あんたの力は分かり切ってる」

「あんたに何が分かるのよ?」

 あたしは魔術の法則から完全に外れたことをすることができる。別の属性魔術を同時に発動することはできない。無属性魔術は魔力の余す限りいくつでも同時に発動することが出来るけど、属性魔術はそれが出来ない。それをあたしはできる。理由は未だにわからない。そんな常識はずれのあたしの力を分かってたまるものか。

「あたしの猛攻が負けるわけがない!」

「いい自信じゃん。なら、かかってきなよ。国分教太に対しては少し力を出し過ぎだって反省してる。このままだとまたミレイユに怒られる。でも、やりたいというのなら相手になったやるじゃん」

 そう言うと強い熱があたしに襲い掛かる。さっき教太に襲い掛かった炎の大蛇がとぐろを巻いてフレイナを覆う。

「準備完了じゃん。いつでもかかってきな」

 その場から動かない気だ。

「バカにするな!」

 あたしは水属性魔術を発動させる。腰に丸カンで束ねてあるカードに向かって十字架を打ちこむ。打ち付けたカードを中心に五芒星の陣が発生して水があふれ出る。その水はあたしの手のひらに吸い寄せられるように集まっていく。それを大きく振り回して水の塊をあたしの頭上に展開させる。そして、その水が小さな槍のように渦を巻いて形が変わる。それを両手で同時に発動させる。

「行け!」

 あたしが腕を振り下ろすとそれに合わせて水の槍たちが一斉にフレイナに向かって飛んでいく。水の槍は渦を巻く水圧で木を削るほどの威力がある。人が当たればただじゃ済まない。それに相手は水属性と相性のいい火属性を使って防御態勢に入っている。条件はあたしの方が勝っているはずなのだ。でも、爆破するかのように燃え盛る炎の大蛇はあたしが放った水の槍を覆うとそこから蒸気が上がるだけで何も残らなかった。

「な、なんで?」

 属性的には勝っているはずなのになんで?

「つ、土人形!」

 あたしは別の魔術を発動させると地面に3つの陣が発生して陣を中心から生えるように安易なつくりで作られた操り人形のような岩の人形が現れた。これはあたしが初めて魔術を使った時に拾った魔術のひとつ。土人形。その名の通り火属性魔術に相性のいい土属性の魔術だ。あたしの意思によって遠隔操作のできる土人形たちは燃え盛る炎をものともしないで突っ込んでいく。

「無駄無駄!」

 炎の大蛇のとぐろの隙間から見えたフレイナが指示を出すかのように手を添えると一体の土人形の足元から小さな噴火が起きたように炎が噴き出して土人形を吹き飛ばして溶かした。

「え?」

 土を溶かしてマグマのようになって土人形はもう動かなくなった。それを見越してあたしは土人形たちにジグザグに動くように指示を出して足元から攻撃してくる噴火を避けながらフレイナに近づく。

「だから、無駄だって言ったじゃん!」

 飛び掛かろうとする土人形の背後に別の炎の大蛇が襲い掛かる。大蛇は土人形を呑み込むと胃液で消化されたみたいに炎の熱にやられて溶けていく。残りの一体も同じだ。

 あたしは土人形に引きつかれている間にフレイナに向かって再び水属性の槍の攻撃を再び仕掛ける。でも、水の槍はフレイナを守る大蛇が吹き飛ばして蒸気に変える。

「まだまだ!」

 あたしは土属性魔術と水属性魔術を同時に発動させる。これはあたしにしかできない猛攻。強い強いと言われていた教術師のイサークですらも防ぐことが出来なかった攻撃。岩が砂状になって砂嵐のようにあたしの左腕に宿り、水が渦を巻くようにあたしの右腕に宿る。両手を大きく振り上げる。

水と土の猛攻アクアマッド・ヴァイラント!」

 振り上げて腕を振り下げると攻撃がフレイに向かっていく。土と水が混ざり合って泥水となった魔術は土のおかげで質量も増えた。水のおかげで攻撃のスピードが増した。この攻撃を防ぐというのならば魔術を無効化にするか土にも水にも相性のいい属性魔術で防ぐしかない。でも、それは不可能だ。だって、相性のいい属性は存在しないからだ。

「その程度であたしゃの炎が消せるとでも思ったら!心外じゃん!」

 炎の大蛇が燃え盛る炎の中から現れると水と土の猛攻アクアマッド・ヴァイラントに向かって飛んでいく。そして、二つの攻撃がぶつかると巨大な噴煙が上がる。あたしが見たのは一瞬のうちに水と土の猛攻アクアマッド・ヴァイラントの水が吹き飛び土だけとなった攻撃は無情にも炎の熱によって溶かされていた。

「な、なんで?」

 属性魔術には得意な魔術と不得意な魔術がある。例えば、フレイナの使う火属性魔術は風と氷属性と相性がいい。対して水と土属性と相性が悪い。つまり、あたしの猛攻はどちらも火属性の攻撃には相性がいい。じゃんけんと同じであたしが勝っているはずなのだ。でも、フレイナの炎はそんな法則を全く無視して属性的に不利な攻撃を防ぎ切った。燃え盛る高温の炎とは裏腹に涼しい顔をしていた。

「なんでって?あたしゃには属性魔術の法則は通用しない。火が水属性を苦手とするのは火が水のせいで消されてしまうからだ。なら、そんな水を吹き飛ばすくらいの高温の炎を使えばいい。土属性が苦手なのは火では土を燃やしても意味がない。なら、そんな土が溶けるくらい高温の炎を使えばいい。単純な話じゃん。あたしゃは強い!」

 フレイナを覆っていた炎の大蛇がフレイナの背中につく。

「行け!熱暴の大蛇(オロチ)!あの雑魚ども燃やし尽くせ!」

 ある時の声に反応した大蛇たちが吠えているように上空に大きく口を開けてから一斉にあたしたちに向かって襲い掛かってくる。

 動けなかった。その圧倒的な炎の熱に強さにその重圧に。自分の持っていた力があまりにも小さくて弱々しいことに落ち込んだ。常識はずれの攻撃とその火力に誰も敵わないと思っていた。でも、あたしは知った。上には上がいた。フレイナという女は属性弱点をものともしない圧倒的火力を使った戦い方。これがあたしの知らない領域。神の領域なんだって思った。

 迫る炎に動くことができない。このまま死ぬのかな?

 後ろには教太がいる。でも、今のあたしにこの炎の大蛇の攻撃を防ぐ手段がない。きっと、あたしもあの土人形みたいに飲み込まれて炎の熱にやられて一瞬のうちに炭になってしまう。そうなったら・・・・・・。

「ごめんね、教太。弱いあたしで」

 瞳から流れる涙は熱によってすぐに蒸発してしまう。

 迫りくる炎に飲み込まれてしまう前にあたしの頭の中で同じ光景が再生される。それはあまりにも怖い記憶が故に壊れてしまった、抜け落ちてしまった記憶。オオカミのような男に焼き殺されるあたし。

 それを思い出した瞬間、あたしはその場に尻餅をついて恐怖に震えた。

 また、同じことを経験する。体が剥がれ落ちるような炎をあたしはまた経験する。そのことに恐怖した。

「あたし・・・・・また、死にたくない」

 そう呟くとひどいやけどで動けないはずの教太があたしを守るように包み込んでくれる。そこで感じたのは炎の熱ではなく教太の体温だった。

「大丈夫だ。俺はお前を同じ方法で死なせはしない」

 それはもう死を覚悟した目だった。それでも教太に抱かれたおかげであたしは怖くなかった。

 迫る熱はあたしが巻いた水を消し飛ばして迫ってくる。

 あたしは強く後悔する。なんで異世界になんか来たんだろ?

「ちょっっっっっっっっっと!待っっったーーー!」

 という声と共にあたしたちに迫る熱が消えた。

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