性悪レイラン②
レイランといっしょの空間にいても話がちっとも進まないので顔を真っ赤にさせて怒り狂うキュリーさんを外においてレイランと俺が部屋の中心にあるテーブルに向かい合うように座る。
「では、改めまして始めまして教太。あたしはレイラン。一応、イギリス魔術結社に籍を教術師よ~」
「ど、どうも」
話が進まないとはいえこんな怪しげなおっさんとふたりっきりになるのはなんか嫌だ。すごい不安だ。
「とりあえず、奥にベッドがあるのよ~」
「誰がいっしょに行くか!」
男同士なんてごめんだ!
「冗談よ~。教太ちゃんには好意を抱く奴がいるのよね~」
「え。いや」
「名前はあら?3人も?うん、全員と別れてあたしと魅惑の世界に」
「誰が行くか!」
その世界は確実に地獄だ!
「もぉ~、あたしはこんなに教太ちゃんの愛してるのに」
「俺はお前のことがほんの数分の間に大嫌いになったよ!」
「でも、教太ちゃんオカマと仲いいじゃな~い」
「あれはオカマだが性別的にはオカマじゃない!」
たぶん、レイランの言うオカマというのは俺の友人の本名がオカマという不良モドキのことだろう。
「つか、俺の頭の中覗かれる?」
「もうすでに覗きまくりよ~」
怖い・・・・・。
「つか、なんであんなにキュリーさんと仲悪いんだよ」
キュリーさんには隣にいて欲しかった。
「あたし女って嫌いなのよね~」
「なんで?」
「意地汚いし、すぐに捨てるし、男を見下すし、気に入らないものがあるとすぐに蹴落とすし、うざいし、キモいし、ゴリラだし、豚だし、キュリーだし」
「なんで私が女の悪口の中に入ってるのよ!」
窓を開けて声を張るキュリーさん。
「はいはい、聞き間違いですよ~」
と笑顔で窓を閉める。
「とにかく、あたしは女が嫌いなのよ。だから、男を好きになるためにこうなった」
どこで道を踏み間違えればこうなる・・・・・。
「レイランが女嫌いなのは分かったから」
「男好きなのも?」
「ゴメン、ソレ、ゼンゼンワカンナイ」
助けて・・・・・・。
「さて、おふざけとキュリーの呪いの藁人形に釘を刺したところで」
「あなた!私の見えないところで何やってるのよ!」
窓を開けて声を張るキュリーさん。
「はいはい、見間違いですよ~」
と笑顔で窓を閉める。
「本題に入りましょうか~。あなたは何が知りたいの~」
「いや、俺の記憶を見ているなら分かってるでしょ」
俺の何もかもを。
「でも、意思や意図というのは記憶から分からないのよ~」
じっと俺を見る瞳は虹色に輝いているように見えた。きっと、それが教術の発動とそうでないのを見分けるためのコツなんだろう。
「シン・エルズーランの痕跡を探してる。シンが昔エジプトいたらしいんだ。何か知らないか?」
「また、そんな大物の過去を探してのは・・・・・まぁ、教太ちゃんの記憶を見て察するわ。キュリーゴリラも」
「誰がゴリラよ!」
窓を閉める。
「あなたをかくまってここまで来たのね~」
たぶん、俺の記憶を見て俺がイギリス魔術結社から狙われている身であることを理解してくれているようだ。そのうえでここに来ている理由もたぶんレイランは分かっている。記憶を俺の頭の中を覗いているのだから。
「10年近くこの町に暮らしているけど、シンのような大物がこのあたりに住んでいたという話やあたしが今まで見てきた他人の過去からもないわ~」
「・・・・・そうか」
そう簡単に見つかるものでもないよな。やっぱり、初心に戻ってひたすら聞き込みをしていくしかないのか?
「でも、ある人物の記憶の中にシンに関する面白いものを見たことがあるわ~」
「シンに関する?」
それは興味深い。
「シンといえば神の法則に守られた教術を使うのはもちろん教太ちゃんも知っているわよね~」
「もちろん」
それを解明するためにもシンの痕跡を探しているんだ。
「神の法則に似たようなものが記載されている遺跡を最近、ピラミッド遺跡のほうで発見されたって言うものよ~」
「神の法則に似たものって?」
「風を起こし、雷を起こし、水を起こす。この地域いったいは雨が少ないのよ~。そこで人々は神に雨を欲した。すると現れた神は持っていた杖を掲げて風を起こして、雷を起こした。つまりこれは嵐を指しているのよ~。で、水を起こした。つまり、雨が降った」
天気を操っているということか・・・・・。
「魔術で天気って変えられるのか?」
「できないわ~」
魔術にはできないことがある。ひとつはキュリーさんの言っていた未来予知。他にもあるようでそのひとつが天気の操作か。
「といっても天気を晴れから雨に変えるように自由に空模様を変えるような魔術がないだけで、実際には変えようと思えば変えられるはずよ~。例えば、ものすごい強力な風属性魔術であたりの雨雲を集めたり、ものすごい強力な火属性魔術で水を一気に蒸発させて雲を作ったり」
どちらにしても強力な属性魔術が使えなければならないということか。レイランが見た誰かの記憶には風と雷を起こしたといっていた。その結果、雨が降ったというならその神様とやらは風属性魔術と雷属性魔術を、しかも超強力なものを使ったということだ。それはまさに魔術師の常識にない神の法則といっても過言じゃない。
「そこを調べようと思ってるの~?」
「一応な」
ここにシンが神の法則を知ったきっかけが存在するかもしれないんだから。
「なら、気をつけたほうがいいわ~」
「なんで?」
「豚キュリーも聞いておきなさ~い」
「誰が豚よ!」
今回ばかりは窓を閉めるわけには行かない。
「教太ちゃんを守るには悔しいけど、豚ゴリラ糞ゴリラキュリーに頼るしかないわ~」
ゴリラ二回言ったよね?キュリーさんも怒らないでね。
「結社が来ているわ~。新しく見つかった遺跡調査のためにね~」
「ちょ、調査ね」
怒りを必死に抑えたところさすが大人だ。
「それなりの人員を裂いているところを見るとかなり大規模な感じよ~」
そう考えるとその遺跡というのはイギリス魔術結社からしても重要性の高いものということだ。
「調べに行くなら気をつけたほうがいいわ~。あの女もいるかもしれないか~」
「あの女?」
「糞ビッチ豚ゴリラゴミクズキュリーなら知っているわよね~。古代魔術関係を知りたがっている結社の人員を」
「・・・・・・・」
言葉を発していなくても分かる。キュリーはその人物のことを知っている。
「分かったわ。気をつける。行くわよ!教太!」
と強引に中に入ってきて俺の手を引く。
「おいちょっと!」
「こんな空気の悪いところからさっさと出るわよ!」
まぁ、あれだけ悪口言われてたらここにはいたくないだろうな。まぁ、とりあえず。
「情報ありがとう!レイラン!」
「また来てね~」
たぶん、二度とこない。




