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誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
無の領域
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風は起きる⑨

お久しぶりです。

就活も卒研も何一つ進んでいない駿河ギンです。

最近、改名でもしようかなって考えています!(謎)

 風が吹き付ける。

 それにガラベーヤという白の裾や袖口のゆったりとした筒型のワンピースのような服がなびく。頭からは赤色の布を頭に鉢巻のようなもので固定している。エジプト付近で切られている民族衣装で周りどうかするために着ている。そんなガラベーヤが大きくなびき風が引いて振り返るとそこはどこまでも続く砂漠。誰かが前へ進めと背中を押し出すようなそんな不思議な風が起きた。

「教太?どうしたのですかぁ?」

「いや、なんでもない」

 俺は砂漠の道を進む。先導するハンナもキュリーも同じガラベーヤを着ているが俺と違い赤や青といった派手な色をしている。背中に背負っている大きなリュックサックにはこの砂漠を越えるための食料と水が蓄えられている。俺ももちろん背負っている。しかし、俺たちがどうしてこんな砂漠を越えなければならないのか。それにはいろいろと理由があるのだ。

 だが、今はそれよりも―――。

「・・・・・今の風」

「どうした?ハンナ?」

「なんか普通の風じゃなかった気がしたんですぅ。この乾いた砂の風ではなく、意思というものを感じることができましたぁ」

「意思?」

 ただの風にそんなものがあるのか?

「時に魔術は奇跡を起こすことを教太は知っていますかぁ?」

 奇跡を起こす。

 俺からすれば何もないところから火や水が出てくること事態が最早奇跡でしかない。

 しかし、ハンナのいう奇跡というものはなんとなくだが感じることはある。俺の龍属性の教術が発現したときとか無敵の短刀(デストロイ・ダガー)を始めて発動させたときとかはありえないほど底のほうから力がわいてくるような感覚は普通じゃなかった。あれが奇跡というものだろうか・・・・・。

「人は神様にはなれません。ですが、近づくことはできますぅ」

 いわゆるそれが天使の力というものだ。神の領域へ近づくことを許されたものが使う力。

「天使の力はまだまだ解明されていないことがありますぅ。例えば、発現の条件ですぅ」

「条件があるのか?」

「そうですぅ。魔術師も教術師の場合も天使の力が発動するのは特定の魔術を発動したときに天使の力は現れますぅ。それは人それぞれで法則性というものが存在しないんですぅ」

 天使の力を俺は3度目にしている。一人目は俺が魔術を始めて触れたときに戦った水属性魔術を使う傭兵魔術師、アゲハ。二人目は黒い粉を屈指して戦うイギリス魔術結社の七賢人、グレイ。最後の一人は人の欲望によって神の許可なくその領域へ踏み出した黒の騎士団の天使の少女、アテナ。それぞれがどの条件で天使の力を発動させているのか俺には到底分からない。

「イギリス魔術結社の機関はその天使の力を解明するために多くの実験を繰り返しましたぁ」

 それがアテナという少女を生んでしまった。

「機関はいろいろ面白いことをやっていたようですが、それによって多くの人々を犠牲にしました」

 その中に霧也と氷華もいる。

「私の兄は機関に連れて行かれたそうですぅ」

「え?」

 それは初耳だった。

「私が黒の騎士団に入団したのも機関に連れて行かれた兄を救い出すのが目的ですぅ」

「そうなのか?」

「そうですぅ。ですが、なかなか難しいんですぅ。機関はすでに属性戦士の製作から人工天使の力の作製に方針を変えていましたぁ。そこには私の兄のような属性戦士はもういなくなっていましたぁ」

 ハンナのような少女もただ運命に翻弄されて魔女をやっているだけじゃなかった。彼女にもたくさんの望みがある。植物人間になってしまった友人を助けるため、機関に連れて行かれてしまった兄を見つけ出すために。

「本当に奇跡って起こらないものですかねぇ。自分から望んでいては奇跡は絶対に起こらないものですぅ。だから、天使の力はまさに奇跡の力といってもおかしくないですぅ」

 天使の力は神の領域へ近づくことのできる人が一生かけても到達することのできない領域に達することのできる奇跡の力というなら自分の意思で天使の力を使っている魔術師たちはまさに奇跡を望んで奇跡を起こしているということになる。

「普通でないことは確かですぅ。彼らにはいったい何が見えているのでしょうねぇ」

「何が見えてるって?」

「きっと、それは神の領域に行かないとわかりません。神の領域に達した人はきっと私たちの考えを超える神様なんですぅ」

 彼女が言いたかったことは俺には理解できなかった。ただ、天使の力は神の領域へ近づいたものだけが使える力。そして、人の形をした最も神に近い存在だということだろうか?彼らには何が見えているのか?

 再び振り返るとそこには小さな竜巻があった。まるで生きているかのように。小動物かのように。そこで俺は不意にある人物の名前を口にしてしまった。

「霧也?」

 するとその小さな竜巻は俺の元に迫ってきてそして消えた。

「?」

 どうしてあの竜巻を見て霧也だと思ったのだろうか?あいつは今もアキと美嶋のところにいるはずだ。俺の代わりにふたりを守るために。だから、こんなところに砂漠のど真ん中に霧也がいるはずがない。

 でも、なんだろうか?

 さっき、俺の背中を押した風は妙に霧也が起こした風に感じたのはなぜだろう?

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