表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰も知らない神の領域  作者: 駿河留守
次の領域
102/192

前へ進む⑤

 なぜか分からないがアキナは目を覚ましてからしばらく泣いていた。なぜ、泣いているのか分からないが、しばらくリンの胸の中で涙を流しきって息を整えて普段どおりのアキナに戻る。

「あ、あの突然取り乱してしまってすみません」

 改まるように謝る

「急にどうしたの?」

 リンが再び尋ねるが、

「いえ。何でもありません。―――お別れをしたので、それで」

 お別れって誰とだ?このたった数分の間に何があった?

 転生魔術の発動が終わった数分後に俺は目を覚ました。特に外傷はなくぴんぴんしていたが、アキナが目覚めるのに小時間かかった。その間に何があったのか分からないが、いつものアキナと違う気がするのは気のせいだろうか?

「それよりも風也さんは魔術を使えますか?」

「ああ、そうだった」

 アキナのことで自分のことをまったく気にしていられる状況ではなかった。

「とりあえず、魔術が使えるかどうか」

 収納魔術を発動してみる。するといつもどおり青い白い光と共に陣の中心から日本の兼が出てきてそれを抜き取る。ブレイに作ってもらった風属性と雷属性が施されたチェーンで繋がっている二本の刀の魔武だ。

「魔術は発動できるのね」

 リンも安心したように柔らかな声になる。

「使える属性はどうです?」

「試してみる」

 とりあえず、風属性の陣が一番近くある右手で握る魔武に向かって力をこめると刃を中心にして青白い光と共に五芒星の陣が浮かび上がると刃に風が宿る。風属性魔術は発動してくれた。

「よかったです。風也さん自信が持っている方の魔力はちゃんと残っているみたいですね」

「そうだな」

 ほっとするアキナだがそのことに俺自身が一番ほっとした。慣れ親しんだ属性魔術が使えるままであることが今度の俺の戦うスタイルを変えずに済むというのはかなり大きい。

「なら、雷はどうだ?転生魔術が予定通りの効力を発揮したのなら俺の中にアキナの魔力はないはずだ」

 つまり、もう雷属性の魔術は発動できないということだ。

 俺が左手に握る魔武に魔力を流そうとする前だ。

「それに関しては確認の必要はないと思います。風也さんの中にあった私の魔力はしっかり伝承されているはずです」

「・・・・・なぜ、言い切れる?」

 思わず尋ねてしまったのは自信に満ちた言葉だったからだ。

「えっと、ですね・・・・・確証はないんですけど、きっとそのはずです」

 アキナにしてはあいまいな言い方だったが一応確認のために左手に魔力を流すが、何も起きなかった。代わりといっていいのかチェーンを伝わって右手に握る魔武の魔術が発動した。属性はもちろん風だ。

「確かに俺の中にあったアキナの魔力はなくなっているな。それでアキナのほうはどうだ?」

 と聞くまでもなくリンから貰った適当な収納魔術を発動させていた。どうやら、転生魔術は成功したようだ。しかし、アキナはそのことに対して素直に喜んでいるようには見えなかった。深く真剣に何か考えていた。

「どうした?アキナ?」

「い、いえ。少し考え事・・・・・」

 やはり、雰囲気がいつもと違う気がする。

「とりあえず、ランク測定してみようか。下手したら前よりもランクがいいかもよ」

「そうですね。風也さんに生命転生術を施したときは私も全盛期だったのでその半分の魔力を風也さんは有していることになるので、転生を繰り返すことで多少魔力がそがれることがあるかもしれませんけど前よりもいいかもしれないですね」

 リンが適当な木の枝で地面に円を描いてその中に三角形を描く。そして、アキナは今に会ったメモ帳を一枚切ってきてリンの元へ。リンが十字架で描いた陣に魔力を流すと魔術が発動してアキの周りに青白い稲妻が走るとアキナの持つ紙にランクが示される。

「・・・・ランクはEですね」

 前はFだったから以前よりかは魔力の総量は増えている。魔力剥奪制度もぎりぎりのラインで剥奪されないラインと保っている。これで俺の中でもうひとつ安心が増えた。

「Eですか・・・・・」

「どうしたの?何か問題でも?」

「いえ、私の全盛期のランクはAだったので伝承の際の損失なければDはあってもおかしくないんですけど・・・・・・ないなら仕方ないです」

 ランクがEとDでは大きく違ってくる。魔術師のランク分布で見るとCとDが最も多い。そのせいかそのランクで使えるオーソドックスな魔術のレベルは3だ。ランクC、Dの人口が多く使用頻度が高いレベル3の魔術は種類も豊富だ。だが、ランクEというのはそのレベル3の魔術を発動できるかどうか怪しいレベルだ。

「どっちにしても以前の私、つまり魔女のままでは何も変わりません。私は変わらなければなりません」

 真剣に先を見据える言葉だ。

「とにかく、今は久々に発動できるようになった魔術の感覚を取り戻すことを考えたほうがいいと俺は思う」

 難しいことを考えるのはその後でも遅くないと思う。

「・・・・・そうですね」

 何か不服そうだったがアキナはそう返事をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ