2.気になる女
鈴木の仕事はいくつかあるが、その主な仕事覧に佐藤の回収がある。猫のようにふらっといなくなり、すぐ近くで昼寝をしていたとか、木の上で昼寝をしていたとか、どっかのオフィスの敷地内で昼寝をしていたとかは割と日常茶飯事。
年がかなり近い佐藤の世話を任されるのは以前はブーイングものだったが、最近は佐藤の態度が軟化しているのでなかなか楽しい。……、最近言葉のギャップ差を感じつつも。
「俺って実は……、古い人間……?」
自転車をこぎながらたどり着きたくなかった思想にたどり着く。相変わらずの、少々拝借した自転車で今日はピンクのママチャリだ。大丈夫、用が終わったらすぐに近くに放置する。
佐藤は最近よく寝転がっているはずの土手にはいなかった。土手を現在のすみかとしている佐藤に、目印を付けてくれと言った結果、最近はタンポポが群生している近くに寝ているはずだが。
「めんどくせぇ……」
自転車から降り立つと、あたりを見渡して……。一人の少年を見つけた。土手をずいぶん降りた先、綺麗な川に沿って設置されている柵に寄りかかっている。
「おい、佐藤」
振り返る佐藤は、今日はキャップを身につけていた。昨日のキャスケット帽はどうしたのだろうと、帽子をじっと見つめている鈴木に、佐藤はもそっと話しかける。
「昨日いい女の子見つけたんだ」
「女の『子』?」
「嘘、女だった」
受けた印象からうっかり言ってしまったが、おそらくあの女は「女」として振る舞っているのだろう。
「どんな子?」
にやにやとしている鈴木にため息をつくと、佐藤は自分の頭をたたく。
「身長は165位」
「田中と同じ位か」
「俺の千里眼と透視眼でバストは84」
「お、なかなか」
「ウェストは61」
「おふぅっ。すげ……」
「ヒップは88」
「……いい女だな」
うんうんとうなずき鈴木に、佐藤は睥睨する。鈴木のポケットから問答無用でケースに入っているタブレットを口に放り込んだ。
瞬間、突き抜けるすさまじい刺激と冷気が口の中に広がる。悲鳴ともつかぬ声を上げながら、佐藤は口を押さえてしゃがみ込んだ。
「どうだ、眠気覚まし用のタブレット。キクだろー?」
「……」
射殺すつもりでにらみつけると、鈴木はそれをあっさり受け流し、行くぞーと言って自転車まで引きずった。