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贅沢な絶望

作者: マーク
掲載日:2026/04/26

幸せだなぁ、と思う。

悲しめて、苦しめて、今が辛いと思えて。

幸せでたまらないなぁと、心の底からそう感じる。


自殺。そんなことを、何度も考えたことがある。

誰かに相談して、笑われたり、慰められたり、嘘だと言われたり、何も発さずに、見つめられたりしたことがある。

認識は、そんなものらしい。


死ぬという道が見えるのは、生きているからだ。

もし、血の滲むような努力をしないと生きていけないなら。

そんなこと、考えることすらできないだろう。

想像すらできないだろう。

生きるのが当たり前なっているからこそ、私は死にたいと思える。

選択できる。


なんて幸せなんだろう。

見渡すと、小さくなった景色が見えた。

目が悪いから、ぼやけて、あまりよく見えない。

そのせいなのか、いつも、目つきが悪いと言われている。

ちゃんと見ようとすることは、そんなに駄目なことだろうか。

私が見えないのは、どうでもいいんだろうか。


…まぁ、めんどくさくて眼鏡を作らない私にも、非はあるか。


自分が何をしたいのかを悩める。

自分が何者であるかを考えれる。

好きなものは、嫌いなものは。


全部全部、綺麗だ。

適当な服で外に出たせいで、少し肌寒い。

…あぁ、服を選ぶことが出来る、幸せだ。

寒さに震えながら、私はふと、自分の滑稽さに口角が上がってしまうのを止められなかった。


贅沢だ、あぁ、贅沢だ。


それを感じない方法があるから、私は苦しんでいる。

着るものを選び、選んだ結果として失敗し、その失敗を噛み締める時間がある。


ポッケに手を入れた。


入れたばかりの中は冷たくて、でも、少しずつあったかくなって、そこからはもう、出られそうになかった。


体の向きを変えて、歩き出す。

ぼやけた視界が絶え間なく、私に飛び込んでくる。

私は、眼鏡をかけるのが怖いのかもしれない。

はっきりと見えてしまうのが。

世界というやつは、私が知らないだけで、喜びも、悲しみ、どちらも存在してるんだろう。


それを想像することは、私には出来ないことだ。

見ることは、出来るかもしれない。

でも、それをしたら、それをして、もし、今より深くに潜ってしまったら。

それが、怖くて。

不意に、視界の端でなにかが光った。


それは、硬貨かもしれないし、ガラスの破片かもしれないし、空き缶のプルタブかもしれない。

どれでもないかもしれないけど。

体の向きは変えず、頭の向きだけ変えた。


私の目つきが、険しくなっていく。

知りたいなら。


それの横を通りすぎて、向き直す。

あぁ、これでいい。


目つきが緩み、眉間の皺がこの世を去った。


「あぁ、なんて幸せだろう。」

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