贅沢な絶望
幸せだなぁ、と思う。
悲しめて、苦しめて、今が辛いと思えて。
幸せでたまらないなぁと、心の底からそう感じる。
自殺。
そんなことを、何度も考えたことがある。
誰かに相談して、笑われたり、慰められたり、嘘だと言われたり、何も発さずに、見つめられたりしたことがある。
認識は、そんなものらしい。
死ぬという道が見えるのは、生きているからだ。
もし、血の滲むような努力をしないと生きていけないなら。
そんなこと、考えることすらできないだろう。
想像すらできないだろう。
生きるのが当たり前なっているからこそ、私は死にたいと思える。
選択できる。
なんて幸せなんだろう。
見渡すと、小さくなった景色が見えた。
目が悪いから、ぼやけて、あまりよく見えない。
そのせいなのか、いつも、目つきが悪いと言われている。
ちゃんと見ようとすることは、そんなに駄目なことだろうか。
私が見えないのは、どうでもいいんだろうか。
…まぁ、めんどくさくて眼鏡を作らない私にも、非はあるか。
自分が何をしたいのかを悩める。
自分が何者であるかを考えれる。
好きなものは、嫌いなものは。
全部全部、綺麗だ。
適当な服で外に出たせいで、少し肌寒い。
…あぁ、服を選ぶことが出来る、幸せだ。
寒さに震えながら、私はふと、自分の滑稽さに口角が上がってしまうのを止められなかった。
贅沢だ、あぁ、贅沢だ。
それを感じない方法があるから、私は苦しんでいる。
着るものを選び、選んだ結果として失敗し、その失敗を噛み締める時間がある。
ポッケに手を入れた。
入れたばかりの中は冷たくて、でも、少しずつあったかくなって、そこからはもう、出られそうになかった。
体の向きを変えて、歩き出す。
ぼやけた視界が絶え間なく、私に飛び込んでくる。
私は、眼鏡をかけるのが怖いのかもしれない。
はっきりと見えてしまうのが。
世界というやつは、私が知らないだけで、喜びも、悲しみ、どちらも存在してるんだろう。
それを想像することは、私には出来ないことだ。
見ることは、出来るかもしれない。
でも、それをしたら、それをして、もし、今より深くに潜ってしまったら。
それが、怖くて。
不意に、視界の端でなにかが光った。
それは、硬貨かもしれないし、ガラスの破片かもしれないし、空き缶のプルタブかもしれない。
どれでもないかもしれないけど。
体の向きは変えず、頭の向きだけ変えた。
私の目つきが、険しくなっていく。
知りたいなら。
それの横を通りすぎて、向き直す。
あぁ、これでいい。
目つきが緩み、眉間の皺がこの世を去った。
「あぁ、なんて幸せだろう。」




