表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/50

・優勝した! ざまぁした! エンドレス・キングオブペインした!

 観客たちは絶叫を上げて気絶したラスターに戸惑っていたが、そこにルイン王子とチャッティ・キャットが降りてくると、それが大歓声に変わった。


「皆様っ、たった今っ、本大会の優勝者が誕生いたしましたニャァァッッ!!」


「はい、本大会の主催者ルイン・エンデュランスとして、僕はここに宣言いたします!! 本大会の優勝者は――貴族らしからぬ戦いをするこの男っ、リチャード・グレンターに決まりましたっっ!!」


 ルイン王子がそう宣言すると、観客たちはこれまでで一番大きな大歓声を上げて迎えた。

 もはや発言者が多すぎて言葉を聞き取れないほどに、皆が思い思いに言いたいことを言いたいだけ大声で叫んでいた。


「皆さん、もう1つだけ僕の話を聞いて下さい。僕は2年前のタナトス事件には、彼、グレンター家の一族を陥れる陰謀があったと、そう確信しています」


「おい、ルイン……」


 そんな中、ルインがおかしなことを言い出した。


「僕は事件の究明に全力を捧げるとお約束いたします!! 他でもない親友っ、廃人状態からこの世に帰ってきてくれたっ、リチャード・グレンターのためにっ!!」


 観客がルインの宣言をちゃんと聞いていたのかはよくわからない。

 とにかく騒がしくて、混沌として、これで大会が終わったのだという寂しさが漂っていた。


「おい、後で話がこじれても知らねーぞ……」


「そうかもね、ラスター先生に肩入れしている貴族も多い」


「ならなんでこんなことを……?」


「君が言ったんじゃないか」


「え、俺が? 何を?」


「僕が君に師事を求めると、君は照れ隠しに出世払いでいいって答えて、なんでも教えてくれた……」


「ルイン……お前……まだあの時のことを……」


「君の名誉を回復したいんだ。親友として」


 ルインとリチャードはいい友人だった。

 プレイヤーの目から見ても、この物語は友情が運命に砕かれた悲しい物語に映った。


 俺はリチャード・グレンターとしてルインの前に立ち、昔したような不器用な笑顔を浮かべて、友情を忘れないでいてくれた友人と握手した。


「今の俺は自分のしたいように生きる自由人だが……。ルイン、お前からの頼みなら昔のようになんだって聞こう。親友よ、俺の潔白を信じてくれて、ありがとう……。お前が友達でいてくれて、よかった……」


「僕もだよ、リチャード!」


 こうして闘技大会は熱狂と友情の下に幕を閉じた。

 過去と決別した俺は自由だ。ますます自由だ。その手始めに俺は空鯨亭の前に戻ると、こう宣言した。


「今日は全部俺の奢りだっっ!! 空鯨亭だけじゃねーっっ、宿屋街全部の飲食費を俺が持つっっ!! あ、けど高級酒だけは勘弁なっっ!?」


 優勝賞金はなんと33333G。

 俺はそのうちの9割を一晩のお祭り騒ぎのためだけに融かすことになったのだった。



 ・



 それから半月、しばらくバタバタとした毎日が続いた。

 それはルイン王子が子犬みたいな目で、昔みたいにあれやこれやとお願いにくるようになったのも大きい。


 が、もう1つの原因は新流派【グレンター流ラバーカップ剣術】の創設のために忙しい日々が続いたのもあった。


「腰が甘いっ!! トイレのスッポンで敵を突くときは、こうだっ、こうっ!!」


「はいっ、リチャード師範!!」


「よいかっ、はじめはなんだこのふざけた武器は!? 俺たちをバカにしているのか!? と、思うだろうが、深いぞ、トイレのスッポン道はっ!!」


 城下に道場が作られ、そこに集った若者たちに、俺とニケ・プーマーはトイレのスッポンをサブウェポンにした戦い方を教えた。


 そう、サブウェポンだ。

 トイレのスッポンは意外と実用的な武器で、状態異常をもたらす武器として極めて有効ではあるが、さすがにそれだけではじり貧だと俺も認める他にない。


 そこで軽量なダーツで牽制や奇襲をしつつ、トイレのスッポンで精神を破壊し、剣でトドメを刺す戦法を推奨した。


「いえ滅相もありません!! あのリチャード・グレンターに師事出来る我々は幸せ者です!!」


「一生付いていきますっ、リチャード師匠!!」


 ちなみに預かったのは兵士たちの息子たちや、将来兵士や士官の道を志望する13歳以下の若者たちだ。


「道場のことは僕にお任せ下さい。リチャード様のお力になれるだけで僕、嬉しいです!」


 将来のこととなるが、いずれこの国に敵部隊の精神を破壊し、毒や麻痺、最悪は尿路結石をもたらす悪魔の部隊が誕生するだろう。


 その日を夢見て、若き門下生たちはトイレのスッポンで空を突き、また突き、払ってまた突く。

 彼らは大真面目にトイレのスッポン道を極めようとしていた。



 ・



 また一方その頃、ラスター・エッジ子爵は尿路結石に苦しみあえいでいた。

 ここ半月間、まともに食事も取れず彼は痩せこけ、24時間ずっとうめきながらも、かろうじてまだ生きていた。


「あ、あぐぁっ、く、薬っ、薬はまだぁぁぁっっ?!!」


 薬は市場から枯渇していた。

 尿路結石をたちまちに治してしまうあの薬でも、彼の病は治らなかった。


「い、医者っっ、いつ治るっ、いつ治るのだこれはぁぁっっ?!」


「子爵閣下……まことに言いにくいことなのですが、し、信じられません……。結石が、自己修復、しています……」


「な、なん……なんだとぉ……っっ!!?」


「もはや薬や外科手術ではどうにもなりません。終わりのない尿路結石……エンドレス・キングオブペインとでももうしましょうか……」


 もう治らない。

 それはもはや死の宣告も同然の絶望の言葉だった。

 ラスターは本気で自殺をも迷った。


「か、かくなる、上は……っ、タナトス……ッ、タナトスよ……ッッ!!」


 魔剣タナトスの名を呼ぶと、どこからともなく魔剣の幻影が浮かび上がった。


「タナトスッ、力をっ、力を貸してくれっ!! この恐ろしい病を治してくれっ!! か、身体の支配権を半分やるっっ、だ、だからっ、頼むぅぅっっ!!」


 魔剣タナトスは哀れな男の叫びに答えた。


「申し訳ないがラスター・エッジ……私にも宿る肉体を選ぶ権利がある……」


「た、頼むっ、これを治してくれっっ、これを消してくれええええーっっ!!」


「無理だ、物を治す力は私にはない。それに、そんな身体に宿るのは、恐ろしい……絶対にお断りだ……っ」


「そんなっ!!?」


「申し訳ないがお前との契約はこれっきりで打ち切らせてもらう。さすがに勘弁してくれ……」


 魔剣の幻影は消え、そこに治らぬ病に絶望する男が残った。


「ハ、ハハ、ハハハハ……。死のう……」


 病名:エンドレス・尿路結石(キングオブペイン)。リチャード・グレンターより全てを奪い取った男は、その所行にふさわしい末路を迎えた。


「アアアアアアアアーーッッッ!!!!!」


 [痛みの王(キングオブペイン)]は永久に我が父の仇と共にある。ラスター・エッジ子爵の英雄伝説は魔剣タナトスと共に消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ