【挿話】小さなエミリアーナ、初めての冒険(1)
幼い頃の出会いにつながるお話。
三話連投。
今日はとってもいいお天気。
こういう日は冒険びよりね。
ひとりで森へ冒険に行くのにふさわしい日だわ。
今日こそはねんがんの冒険に行きましょう。
お昼ごはんをたくさん食べたから元気いっぱい。
今日のおやつはバスケットに入れてもらって、さあ出発します!
おかあさまに行ってまいります、とごあいさつして、バスケットを持って、げんかんを出たら、トニおにいさまがついて来ちゃった。
「リア。一人じゃ危ないぞ。俺もついていく」
「だめよ。今日は冒険びよりなの。だからわたしひとりで行くの。トニおにいさまは来ちゃだめ」
「お前が森に一人で行くのはまだ早いだろ」
「いーえ。わたしはもうすぐ五さいになるんだから早くありません。トニおにいさまもレンおにいさまも四さいでひとりで森に入ったんでしょ?だからわたしもひとりで行けるもん。トニおにいさまはおるすばんしててね」
「リアはまだ四歳半じゃないか。五歳までまだあるぞ」
「まだじゃないです。もうすぐです。だからひとりで行ってきます!」
わたしはむねをはってトニおにいさまにどうどうと言ったの。
そうしたらトニおにいさまはむうっとした顔になったけどうなずいてくれました。
「わかった。森の奥深くまで入っちゃだめだぞ」
「はい!」
「じゃ、気をつけて行ってこい」
「行ってまいります!」
わたしは、えっと、いよ……いき……そうそう、いきようようと歩きだしました。
ねんのためとちゅうでふりかえってトニおにいさまがついて来ないのをかくにんしたけど、いなかったから、まっすぐ森に向かって歩いていきます。
森に行く道はまわりにお花や草がいっぱい生えているからゆうわくされそうになるけれど、今日は冒険に行くのでわきめもふらずに森に行きます。
だからいつもより早く森の入り口にとうちゃく!
さあ、ここから冒険のはじまりです!
いつもトニおにいさまやレンおにいさまといっしょに歩く道を、ゆっくりまわりのけはいをかくにんしながら歩きます。
冒険だから、きけんがあるかもしれないもの。
しんちょうにまわりをかくにんするのは基本です。
と、トニおにいさまが言ってたから。
あ!
あやしいものをはっけん!
シュッと長くてまわりがギザギザの葉っぱ!
しゃがんで近くからしんちょうにかんさつしなくちゃいけないわ。
葉っぱのおもてはつやつやしててつるつるしてます。
色はこいみどり。
しんちょうにさわってみましょう。
やらわ……やら……やわらかいわ。
うらはどうなってるかしら。
まあ、白くて短いおひげがいっぱい生えてる。
おもしろいわ。
これは持ちかえってもっとくわしく調べてみなくちゃいけません。
一まいだけもらっていきましょうね。
こういう時はねこ……ねこそぎ取っちゃだめなのです。
しんちょうに……ちぎって……ハンカチにつつんで……できた。
せんりひんがひとつ!
さあ、冒険をつづけましょう。
ずんずん歩いていきます。
あ!
めじるしのとーぼくが見えました。
この大きな木はとっても長生きして、えっと、じゅみょうをむかえたから今は地面によこたわっているってトニおにいさまがおしえてくれたの。
それにかわいくって小さい草が生えているわ。
でも本当は草じゃなくて木の子どもなんだってトニおにいさまがおしえてくれたけど、本当かしら。
そうだわ。
おうちに帰ったらご本で調べてみましょう。
だからよーくかんさつしなくちゃ。
ほそーいくきに小さい葉っぱがふたつ。
色はうすいみどりね。
この小さな木の子どもがあんなに大きな木になるの?
すごいわね。
わたしが十さいになったらこの子も同じくらいの大きさになるかしら?
きっと、わたしの方がはやく大きくなるわね。
だってこの子はこんなに小さいもの。
あ!
リス!
リスが木をのぼっていったわ!
あのふさふさのしっぽをさわってみたいな。
もう高いところに行っちゃったから、えーと、次のきかいにさわらせてもらいましょう。
まわりをよーくかくにんします。
ここから先には行ったことがないから、しんちょうにかくにんよ。
今日はどっちに行こうかしら。
うーん。
じーっとまわりをかんさつして……。
右のほーがくはずーっと暗い森が続いているみたい。
まんなかのほーがくも同じみたいね。
左のほーがくはどうかしら。
うん。
ずーっと先に明るいところがありそうなふいんき……ふんいきがあるわ。
こっちに行きましょう!
そうそう。
めじるしのリボンをこの木の枝にむすんでおきましょう。
トニおにいさまが言ってたから。
ちゃあんとリボンをじゅんびして、むすびかたもれんしゅうしたからだいじょうぶよ。
あれ?
手がとどかないわ。
えーと、どうしよう。
あ、こっちの細い木ならだいじょうぶ。
リボンを…………むすべた!
それじゃ冒険をつづけましょう。
しんちょうに、まわりをかくにんしながら、ゆっくりね。
ふふ。
なんだか足の下がふかふかしてる。
歩くのが楽しいわ。
あ!
きのこ!
白いきのこだわ。
うーん。
ひとつしかないから取っちゃったらかわいそうかしら。
よーくかんさつしてこれもおうちに帰ったらご本で調べることにしましょう。
白くて……ふふ、ドレスのすそのフリルみたいなぼうしをかぶってるのね。
においは……あんまりしないわ。
さあ、そろそろ次のリボンをむすびましょう。
えっと、どこにむすべばいいかしら。
うん、この木がいいわね。
この枝なら手がとどくわ……リボンを……むすんだ!
さあ、ずんずん歩きましょう。
明るいところが近づいてきたわよ。
あら?
鳥がないてる。
きれいななき声ねぇ。
あ、とんだわ!
どこに行くの?
まって。
ちょっと鳥をおいかけたら……まあ!
左のほうがくに明るい入り口みたいなところが見えるわ。
あそこに行ってみましょう!
あ、まってまって。
ここにもめじるしのリボンをむすばなくちゃ。
冒険はしんちょうさもひつようだってトニおにいさまが言ってたから。
リボンをこの枝に……むすんで……できた!
さあ!
冒険のつづきよ!




