第9話 クラス分け
入学式後、新入生たちは式直前に通知されたクラス分けに従って各クラスルームへと分かれていく。
今年の入学試験における特待生得点トップ合格者の四人はラウル、トーニオ、ブルーノ、そして私。
一学年三クラスのため、トップの四人は名前順にクラス分けされ、私とブルーノが一組、ラウルがニ組、トーニオが三組となった。
あとは得点順に特待生のクラス分けがなされ、各組七人ずつの特待生がクラスルームの前方に席を占めることになる。
私が自分の席につくと、左隣の男子生徒が声をかけてくれた。
「君が特待生得点トップ合格者のエミリアーナ嬢だね?俺はブルーノ・ガッティだ。よろしく」
私も挨拶を返した。
「そういうあなたもトップ合格者だったわね?こちらこそよろしく。私のことはエミリアーナと呼んでほしいわ。あなたのこともブルーノと呼んでいいかしら?」
「ぜひとも」
ブルーノが私の目を見て口元に少し笑みを浮かべる。
そのブルーノの目を見て、私はなぜか不思議な気持ちになった。
なんとなく見覚えがある人に思えるのだけど。
黒髪にこの緑の瞳。
どこかで見た記憶があるような……。
「代表挨拶も素晴らしかったな」
「どうもありがとう」
そう返事をしながら考えてみる。
ガッティ子爵家といえば貿易都市カタラーニアで海の魔物や海賊討伐を担う一家。
カタラーニアには叔父様が住んでいらっしゃるし幼い頃一時期預けられた先だから……。
その時担任の先生がクラスルームに入ってきたので、私は意識をそちらへ向けた。
またあとで記憶を辿ってみよう。
先生から今学年での授業スケジュールが説明される。
本格的に授業が始まるのは一週間後から。
またクラス対抗の催し物が年にニ度開催される、とのこと。
クラス単位ですることといったら、その催し物と教養科目の授業くらいしかないみたい。
そもそもこの学園では選択式の科目の方が断然多いから、クラス分けも便宜上、程度の位置付けのようね。
でも同じクラスになったのも何かの縁。
きっとこのクラスでも気の合うお友達ができると思うわ。
選択式の科目といえば、一般生徒は自分の進みたい道に必要な科目を決めるだけですむ。
例えば、騎士を目指すなら剣術。
中央での活躍を目指すなら、それに加えて帝国語や共通言語のリエラント語などの語学、マナーや文化芸術、ダンスなどが必要。
そして受講科目を決めてしまえば、この一週間は余裕を持って過ごせる。
でも特待生はこれからの一週間が忙しい。
まずは特待生だけが受講できる特別科目の中から受講したいものを決めて、試験を受け、受講許可を得る必要がある。
かなり高度で専門的な科目ばかりなので、その分野における基礎的な知識が身についているかどうか試験結果で判断される、というわけ。
私が受講したいのは、すべての属性に関してより高度な技術を学び実践する魔術学、古代から現代に至るまでを網羅する薬草学、古代魔術史、魔道具設計、魔石の高度利用、それから……。
ちょっと欲張りすぎかしら。
でも機会を逃すわけにはいかないでしょう。
闘志が湧いてきたわ。
さあ、いよいよ本番ね。