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お転婆エミリアーナは好奇心のままにつき進む 〜私は悪役令嬢だそうですがヒロインにつきあっている暇はありません  作者: 帰り花


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第52話 森で実験(2)

移動した先は木が生えていない開けた場所で、そこに小型結界装置が作り出した結界が張られていた。


装置を中心にしてドーム型の結界が張られているようだ。



私はその結界の中に入らせてもらった。


特に抵抗感なく入ることができ、息苦しいこともなく、鳥の囀りや葉擦れの音もちゃんと聞こえる。


結界はそこに何かあるなとわかるけれど、ほとんど透明で視界は良好。

四、五人くらい余裕で入ることができる広さ。

高さは一番高い所が私の身長で二人分くらい、といったところ。


でも身を守るために気を張ることなく、作業に集中したり、のんびり体を休めるには十分快適な大きさだ。



トーニオが再現を目指す小型結界装置は魔物の侵入や攻撃を防ぐだけでなく、剣で襲撃されてもそれを弾き、風雨まで防ぐ結界を張ることができる。

つまり物理的な攻撃全般を防ぐための結界だということ。


それだけ頑丈な結界を張るためにはかなり多くの魔力が必要で、今回の実験のために魔石を三個用意して魔力を充填してきたそうだけど、それが一番大変だったらしい。


フォンタナ王立学園には対魔物用の結界が張られていて、その結界装置には常時魔石に大気中から魔素を取り込む仕組みが組み込まれているけれど、それは小型結界装置が盛んに利用されていた時代には無かった技術。


だから今回、魔石には人の手で魔力を充填してきたそうで、トーニオ自身は魔力量が少ないためあまり役に立てず、魔力量が多いブルーノや他の生徒たちに協力してしてもらってなんとかなった、とトーニオがぼやいた。


「昔は本当に今より魔力量の多い人がたくさんいたんだな、と実感したよ。僕ではこの装置に使う魔石一つに目一杯魔力を込めるのに一日やそこらじゃとても無理だからね」


魔石は大きめで、上限まで充填すれば丸一日装置を稼働し続けられるそうだ。


使い切る前に魔力を補充してやればもっと長い時間連続して使用できることになる。


「でも魔力をたくさん必要とするのはこの装置の性能を考えれば当然のことでもあるんだ。エミリアーナ。この装置のもう一つの機能を見せるからいったん結界の外に出てもらえるかな?」

「ええ」


私は結界の外に出た。

入る時と同様、出る時には何も感じない。


トーニオは装置を何やらいじってから言った。


「それじゃ入ってみて」

「はい」


私はまた結界に入ろうとした。


「え?壁?入れないわ」


トーニオは破顔して言った。


「凄いだろう?人の出入りもコントロールできるんだよ。この結界は」

「まあ!そんな機能まであるの?」

「そうなんだ。さっきまで君が入ろうとしたそのあたりだけ結界の強度を下げておいたんだけど、今は周りと同じ強度に上げてある。強度を上げると人も結界内には入れなくなるんだ」

「どうしてそんなことができるの?」


その理由をパッと思いつかなかったのでトーニオに聞く。


「実はこの小型結界装置は多数の多角形パネルから成る結界を張っているんだよ。それでほぼ半球体の結界にしているんだ。だからどの部分の強度を弱めるか強めるか装置側で設定できる、というわけなんだ」

「!」


私はただ驚くばかり。

トーニオはまた装置をいじって結界の外に出てきた。


「失われた技術って凄いのね。それを復活させたトーニオは本当に素晴らしいわ」

「優れた技術が眠ったまま、というのはなんというか、悔しいからね」


そう言ったトーニオは誇らしげな表情だった。




小型結界装置の追加実験を始めたトーニオたち三人を残して、私は小川のほとりに戻った。


そして課題のポーション作りに取りかかった。

まずは目薬のポーションから。

使う薬草三種類は持ってきたものを使う。

それに小川の水を使って、まずは鍋で煮込む方法で作る。


次に同じ材料を別の鍋に入れ、手を浸して魔力を注ぎ、全体に巡らせ始めたが、薬草ごとに成分の抽出時間が異なるので、雑な作業にならないようかなり気を使うことになる。

煮込むより時間もかかるし、集中して作業し、作り終えた時には少し疲労感を覚えた。


でもこうして練習を重ねていけば慣れていくだろうと思う。


続けて植物毒の解毒用ポーション作りに取りかかる。

これも持ってきた薬草五種類を使い、まず鍋で煮こむ方法で作った。


作り終えたところで私はいったん休憩を入れることにした。

おやつを食べて英気を養わなくちゃ、と思ったから。



馬車の近くまで戻ると、ピッポが椅子を二つ並べておやつの準備をしてくれていた。

一つの椅子にはテーブルクロスが敷かれサンドイッチと飲み物が並んでいる。


あの折りたたみ型の椅子はテーブル代わりにも使えるのね。


「お嬢様。準備を致しておきました」

「ありがとう、ピッポ」


私はもう一つの椅子に座ってサンドイッチを食べ始めた。

視線の先、木の向こう側の少し開けた場所でトーニオたちが作業をしているのが見える。


とても楽しそう。


見に行きたいところだけれど、まだ課題のポーション作りが残っている。


まずはそれをきちんとやってから、よね。


私は好奇心を抑え、サンドイッチを食べ果実水を飲み終えると小川のほとりに戻り、課題の続きに取りかかった。


鍋に五種類の薬草と小川の水を入れ、手を浸して魔力を全体に巡らせて成分を抽出しながら撹拌する。


薬草の種類が増えた分、魔力も時間も使うが、休憩を入れたおかげで集中して作業ができた。

上手くすべての成分を抽出し切れたし、質の良いポーションが作れたと思う。



私は満足感に浸りながら道具を片付けて、出来上がったポーションを持ち、馬車まで戻ってそれをピッポに積み込んでもらい、それから好奇心を満たすためトーニオたちが実験している所へ向かった。


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