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お転婆エミリアーナは好奇心のままにつき進む 〜私は悪役令嬢だそうですがヒロインにつきあっている暇はありません  作者: 帰り花


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第45話 学園祭(1)

フォンタナ王立学園では、一学期の終わりに学園祭が開催される。


クラス単位で独自の商品を作ったり、各地域の名産品に付加価値を付けて販売し、売り上げを競い合う催しだ。

原資は学園側が一定額を準備し、学園祭後、利益分は寄付に回されることになっている。

資金力に物を言わせるやり方ではなくて、限られた予算で工夫を凝らし、付加価値を付け、いかに独自性や地域色を出すかが腕の見せどころ、というわけ。

本格的な商売と違って人件費は考えなくていいので、生徒の頑張り次第で商品の価値を高める余地がかなりあるのもおもしろいところ。


この学園祭は季節柄、学園内の庭園に咲き誇る様々な花も売りのひとつ。

そのため学園花祭りの愛称でも知られていて、毎年王都の住人や生徒たちの家族、友人、知人が大勢訪れて賑わいを見せている。




私たちのクラスではひと月半ほど前から学園祭のための準備を進めていた。

メインの商品は魔石の加工端材、いわゆるクズ魔石に魔術で付加価値をつけ、可愛い小物やアクセサリーにしたもの。


クラスメイトのロレッタは魔道具を作ることが大好きで、率先してクラスメイトたちが考えたアイデアを商品化すべく奮闘中。

自分の手で何か作り出すことが好きなクラスメイトたちも加わり盛り上がっている。


他のクラスメイトたちは自分の持ち味を活かして、原材料の仕入れや商品の値付け、売り場作り、学園祭当日の売り方や見せ方などに知恵を絞っている。



そして私はというと、オリジナルの美肌オイルを商品化することになっていた。

クラスメイトたちのアイデアで私が作る美肌オイルに付加価値を付けて、学園祭に来た人しか買えない今回限りの商品として売り出すことにしている。

 



その企画はルーナのひと言から始まった。


「ねえ、エミリアーナ。あなたの肌って毎日屋外で剣術の稽古をしているのに、ほとんど日焼けしていないのはなぜなの?」

「それは自分で作った専用のオイルを使っているからよ」

「自作のオイル?どんなふうに作っているの?」

「マッサージオイルに良く使われるジジュの実から絞ったオイルをベースに日焼け止め効果や美肌効果のある香草をブレンドして、魔力を注ぎながら作っているの。調剤師が作るみたいにね」

「それ、作るの大変?」

「作業自体は慣れているからそれほど大変ではないわ」

「それじゃ、そのオイルを学園祭で売ってみない?」

「え?でも何の変哲もないオイルよ。物には自信があるけれど、学園祭で売れるかしら?」

「付加価値をつけて学園祭に来た人だけが買えるオリジナル美肌オイル、というような触れ込みで売ればいいのよ」


側で私たちの会話を聞いていたクラスメイトたちも乗り気を見せて言う。


「私もエミリアーナの肌のことは気になっていたのよね。てっきり高額な高級クリームでも使っているのかと思っていたけれど、自作のオイルだなんて驚いたわ。どんな使い心地なのか気になるわね」

「私も。使ってみたいから、学園祭に家族を呼んで買ってもらうの。それを私が分けてもらうなら自分たちの商品を自分で買うことにはならないから大丈夫でしょう?」

「そのオイルには香り付けしてるの?」

「いいえ。ほとんど無臭よ」

「だったら花や果皮の香りをつけたら素敵じゃない?」

「うちの領地はバラの栽培で有名だから、バラの香りをつけてもらえたら素敵だわ」


といった風に盛り上がったので、私はひとまず材料の原価計算をしてみることにして、翌日再び商品化できるか皆で考えてみることになったというわけ。



その翌日。


「原価を計算してみたけれど、少量にして小さめの瓶にしないと売りに出せないわね。顔や首筋だけに使うなら十回程度、手や腕にも使いたいとなるとせいぜい二、三回の量というところね」

「だったら思い切って顔や首筋だけに二、三回使える最少のサイズにして、例えば五種類の花や果皮の香りをつけて、それを五本セットで売る、というのはどう?」

「五つの香りのオイルセットね。それならお好みの香りを見つけてもらうのも良し、お試しにどうぞと勧めやすくもなるし、誰かと分け合うこともできるわね」

「素敵ね。うちの領地の特産品に柑橘類の花の香料があるの。それを使って欲しいわ」

「うちはバラの香りを用意できると思うからそれもぜひ使って欲しいわ」

「それなら花祭りの趣旨にも合うし、各地の名産のアピールにもなるわね」

「ええ。香料はそれなりに高価でも、一本あたりにすればそれほど原価には影響しないんじゃない?そして特産地直送の香り、という付加価値もある。どう?」

「できればパッケージも花をデザインした可愛いものにしたいわね」

「説明書きにそれぞれの産地の花のアピールも入れたらどう?次につながる売り方にならないかしら?」


といったぐあいに盛り上がってしまい、そのまま学園祭で売り出すことが決まってしまったというわけ。



ゆくゆくは父親の後を継いで領主となる立場で経営学を学んでいるブルーノたちが全体の予算管理をしているので、私たちは彼らと予算交渉をし、確保した金額から割り出してオイルのセットを百二十個作ることにした。




ロレッタたちが作ったクズ魔石を使った小物やアクセサリーは、音が鳴る、振ると香りがほのかに漂う、太陽光下と月光下では石の色が変わる、といったさまざまな効果を付与したイヤリング、ブレスレット、ハットピン、小さなぬいぐるみ、蓋付きの小物入れなどさまざま。


透明度が低いものや曇った色のクズ魔石は綺麗に着色した上で使っていて、付与した効果が薄れてもずっと使い続けることができるように工夫してある。


さらに流行を取り入れた素敵なデザインのものも多く力作揃いで、出来上がったすべての商品が並べられた光景は圧巻だった。


ロレッタたちのアクセサリーや小物と私たちのオイルは狙う客層や価格帯がそれほど被らないため、当日は幅広い客層を集められそうで、売り子を務めるクラスメイトたちが並べ方や見せ方をあれこれ考えている。




こうして準備期間はあっという間に過ぎ、とうとう学園祭当日となった。


朝早くから、校門から校舎へと向かう道の両側に一年生と二年生が各クラス毎に割り当てられた場所へ販売用ブースを整えていく。


私たちのブースも商品を並べ、花や貝殻の装飾で売り場を華やかに飾りつけ、売り子担当のクラスメイトたちがお客さまを迎える準備をし、皆で頑張りましょう、と気合を入れていると、たちまち開門時間となった。


晴れ渡った青空のもと、たくさんの人たちが楽しげな表情で校門から入ってくる。


私たちのお店も最初のうちは様子見の人が多かったけれど、だんだん商品が売れ出して人も多く集まってきてくれた。



今日は私の出番はほとんどない。

商品作りに携わったクラスメイトたちは今日は裏方に回り、他のブースへ敵情視察に動くことになっている。


販売や品出し、並べ替え、呼び込み、売り上げの管理などを担当するクラスメイトたちが今日の主役だ。

やるからには他のクラスより売り上げも利益も多くあげたい、と皆熱心に動いている。



しばらくして最初に敵情視察に出ていたクラスメイトたちが戻ってきた。

皆で情報を共有したあと、私はロレッタと一緒に敵情視察に出た。


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