第42話 特別講義〜魔剣術(4)
魔剣術の特別講義も最後の訓練を残すのみとなった。
休憩終了を告げたアカルディ侯爵が言う。
「最後の訓練は防御です」
攻撃の訓練に夢中になっていた私は防御のことが頭から抜け落ちていたことに気づいてまた反省した。
私はまだまだ未熟者だわ。
でも裏を返せばまだ成長の余地があるということよね。
前向きに行きましょう。
前向きに。
「魔剣術で攻撃できてお終いではありません。魔剣術による攻撃を受けた時、それを防御するための技も身につけておかなくてはなりません。また、相手が魔力で攻撃してくる魔物であっても、魔剣術の防御の技は役に立ちます。それではまず手本をお見せします」
アカルディ侯爵と騎士のマヌエル様は私たちから少し離れた場所へ移動し、ある程度距離を取って正対し、剣を構えた。
「最初はゆっくりやりますからよく見てください」
侯爵はそう言って、マヌエル様に頷いた。
マヌエル様がアカルディ侯爵に向けてファイヤアローを放つ。
侯爵はそれを剣で弾き返した。
マヌエル様は続けざまにウインドエッジ、アイスエッジを放つ。
侯爵はそれを軽々と剣で弾く。
弾いたそれは私たちがいる側とは反対側へ飛んでいった。
次にマヌエル様はスパイラルウォーターを放った。
侯爵は今度はそれを剣で真っ二つに切り、水はそのまま侯爵の両側に分かれて飛び、勢いを失って地面に落ちた。
「次は実戦での防御の手本をお見せします」
アカルディ侯爵とマヌエル様は少し距離を広げて正対し、剣を構えた。
侯爵が頷くとマヌエル様はすぐに攻撃を始めた。
連続してファイヤアロー、ウインドエッジ、アイスアローを放ち、侯爵が素早い剣捌きで次々と弾き返し、弾き飛ばす。
スパイラルウォーターが放たれると侯爵は素早く横へ避けると同時に剣でそれを前後に真っ二つに切る。
畳みかけるようにマヌエル様が侯爵の顔や足元を狙って攻撃すると、顔へ向かってくるウインドエッジを剣で打ち払いながら素早い足捌きで足元へ向かってきたファイヤアローを避けた。
ここで実演を終えてアカルディ侯爵が言う。
「ここまで私が行った防御の技は剣とその魔石に込めた魔力だけを使ったものです。次は相対する属性による魔術で相手の攻撃を打ち消す防御の技をお見せします」
再び侯爵とマヌエル様が正対し、剣を構える。
侯爵が頷き、マヌエル様は同時発動で威力のある《火炎旋風》を放った。
アカルディ侯爵は剣身をマヌエル様に向けるようにして大きいウォーターシールドを展開し、防御する。
《火炎旋風》がウォーターシールドへ激しく衝突し、衝撃波が発生して空気をビリビリと揺らし、双方の技は消滅した。
その衝撃の凄さに私たち受講生は息を呑んだ。
アカルディ侯爵はマヌエル様と共に私たち受講生の前に戻ってきて言った。
「手本を見てわかったと思いますが、防御は相手から放たれた技を剣で受け、弾き、切り、場合によっては体を動かして避けるのが基本です。応用として相対する属性で打ち消す防御もあるということです。どちらにしても、まずは相手の放つ技を素早く見極めなくてはなりません。さらに実戦では当然のことながら戦いの場がどのような場所であるか、守る者の有無などによってどう防御するか瞬時の判断が必要となります」
アカルディ侯爵はにこやかな表情になって言った。
「では基本的な防御を練習しましょう。私の部下マヌエル君とウベルト先生に攻撃側を務めてもらいます。あなた方はその攻撃を剣で防御してください。最初の三回はどの属性の魔術か明かしてから攻撃します。その後の三回は明かさずに攻撃します。よく見て防御してくださいね。万が一怪我をした場合に備えてポーションを用意してありますから恐れず立ち向かってください。それでは皆さん、剣の魔石の魔力残量を確認してください……大丈夫ですね?では始めましょう」
私たちは名簿順に半分に分かれて、一年生と二年生の受講生の半分がウベルト先生、残りの受講生が騎士のマヌエル様の前に並んだ。
一人ずつ前に進み出て相手と向かい合う。
最初はブルーノで、彼はウベルト先生からの攻撃をすべて弾き飛ばしていた。
次は私。
ウベルト先生からの攻撃は最初の三つがファイヤアロー、ウインドエッジ、アイスエッジと続き、私はそれをすべて弾き返した。
なんとなく防御のやり方の感じが掴めたように思う。
四回め。
先生が放ったのはスパイラルウォーター。
属性の色を見て、先生が水属性の技を放ってくることは寸前にわかった。
あとはどの技かを見極めるだけ。
放たれた瞬間、スパイラルウォーターだと見極めがつき、私はアカルディ侯爵のお手本を思い出して、それを真っ二つに切った。
先生は休む間も与えず次を繰り出してくる。
次は火属性。
大きいファイヤアローが放たれ、私は体を左に少し動かしてそれを弾き飛ばした。
次は風属性。
三つのウインドエッジが鋭い音を立てて迫ってくる。
よく見て。
私は剣の角度を変えながらなんとか三つとも弾き飛ばした。
やはり側で見ているのと実際にやるのとではまったく違う。
自分に向かってくる技の怖さも実感できるし、剣で弾いた時の衝撃や反動も体感できる。
防御というものはなかなか難しい。
あらためてそう思う。
全員が防御の練習を終えるとアカルディ侯爵が言った。
「では次に攻撃と防御を交互に繰り返し行う訓練をします。私がお一人ずつお相手します。最初にあなた方はここまでの訓練によって練度の上がった得意技で私へ攻撃してください。私はそれを防御して反撃しますから、今度はあなた方がその攻撃を防御してください。お一人三回ずつこれを繰り返します。一回毎に間を置いてもかまいませんし、自信のある方は間を置かず攻撃に転じてもかまいません」
アカルディ侯爵と直接手合わせができる!
私たち受講生のテンションがぐぐっと上がる。
アカルディ侯爵がにこやかに言った。
「では始めましょう」
名簿順でまずブルーノが呼ばれた。




