表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お転婆エミリアーナは好奇心のままにつき進む 〜私は悪役令嬢だそうですがヒロインにつきあっている暇はありません  作者: 帰り花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/100

第40話 特別講義〜魔剣術(2)

イメージの仕方を変える?


アカルディ侯爵は皆の疑問に答えるように言った。


「例えばファイヤアローですが、矢の長さを変えたり矢尻の鋭さを変えたり炎の大きさを変えるイメージを持つことは難しくないでしょう。それとは別に、剣との融合において矢を剣に纏わせるのか、絡みつかせるのか、切先から湧き出すようにするのか。矢は最初から最後まで常にまっすぐのものである、と決めつけてしまうのではなく、こういったイメージを持つことで攻撃の幅が広がり深みが増してきます」


なるほど。

皆も感心した様子で侯爵の言葉を聞いている。


「魔剣術における矢、刃などは、本来の武器の形状にとらわれず、もっと自由に捉えてもいいのですよ。それが魔剣術の利点でもあります」


皆、自分なりのイメージを考えだして試したくなってきたのがわかる。

私もあれこれ試したいやり方を思いつき、早くやってみたくなった。



「ではこれから十分間。先ほどと同じ技を、今言ったようにイメージの仕方を変えて放つ練習をしてください」


私たちは再び線上に立って剣を構える。


「では、始め!」


アカルディ侯爵の掛け声とともに私たちは再び的へ向けて得意技を放った。



私はコツが掴めてきたと感じたアイスアローを先ほどと同じように放った。

続けて切先から細くて硬く鋭い矢を直接、的へ射るイメージで放ってみると、アイスアローの威力と切れ味が増したことがわかった。


おもしろくなり、今度は氷の粒を細いロープ状にして剣に巻きつけ、剣を振り抜くと同時に全体を凍らせて放ってみた。

同じようにニ度、三度と放つうちにタイミングが掴めてくる。


四度目、螺旋状の細いアイスアローを的の真ん中に射ち込むことができた。


飛び方が異なっておもしろいし、アイスアローやスパイラルウォーターにも応用ができそうだ、と思う。


次に同じやり方だけど巻きを少なくして同様に放ってみれば、剣を振った直後、ロープ状の氷の粒はまっすぐな矢の形に凍りつき的に刺さる。


さらに剣に乗せる感じで平たい形のアイスアローを放てば、アイスエッジに似た感じになるし、工夫次第でいくらでも攻撃の幅が広がることを私は徐々に実感してきた。



「はい、そこまで!」


え?

もう十分経ったの?


そう思うほどにこの十分間は濃い時間だった。



「この後、いくつかのグループに分かれて訓練をします。そのグループ分けをする間、休憩としますので、各自水分補給や魔力切れ対策をしてください」



私は水分補給をしながら、隣の的で練習していたブルーノとどんな風にイメージの仕方を変えてみたのか、お互いに教え合った。


「確かにおもしろいし、幅が広がるな。ただ……」

「そこだけに意識を取られると良くないと思った?」

「そうなんだ。やっぱり基礎、土台がしっかりしていることが何より重要だと思ったよ」

「私もそう思ったの。そこを疎かにしたら小手先だけの魔剣術になってしまうな、って」

「素晴らしい。あなた方は達観しているようですね」


急に声を掛けられて私たちは声の主の方を向いた。

そこにはアカルディ侯爵が立っていて、私たちをにこやかな表情で見ていた。

私たちは慌てて姿勢を正した。


「「恐れ入ります」」

「君たちは魔剣術のおもしろさと怖さをきちんと理解しているようですね。何よりです」


そう言ってから、アカルディ侯爵は皆に向かって休憩時間終了を告げた。



「ではこれからグループ分けをします。まず魔力量が少なめの人を最初のグループとします。名前を呼びますから、呼ばれたらこちらへ来てください」


魔力切れ寸前となり、ポーションのお世話になった受講生たちが最初のグループに振り分けられた。

受講生全二十七人中九人がこのグループだ。


「君たちにはポーションに頼ることなく魔剣術を使えるよう、一撃で仕留める技術を磨く訓練をしてもらいます。狙った位置へ正確に放つだけでなく、その一撃のために過不足なく魔力を使えるよう、魔力量をコントロールする術を学んでください」


なるほど。

それは魔力量が多い人にも当てはまるけれど、魔力量が少なめの人ほど重要性が増す技術だろう。


「それでは次に、使える属性が複数ある人を二つめのグループとします」


このグループに振り分けられたのは六人。

私もそのうちの一人だ。


「このグループのメンバーは皆魔力量が多いようですので、複数属性同時発動の訓練をしてもらいます」


同時発動?!

おもしろそう!

難しいだろうけど、一度でもいいからぜひ成功させたい!


「残る十二人を最後のグループとします。君たちには技の種類を増やす訓練をしてもらいます。使える属性がひとつだけでも技の種類を増やすことで多彩な攻撃はできますからね。もちろん増やすだけでなく練度も上げるよう練習してください」


最初のグループは一つの的に三人ずつ、次のグループは一つの的に一人ずつ、最後のグループは属性毎に分かれて一つの的に一人ずつ割り当てられた。



アカルディ侯爵はまず最初のグループについて指導を始め、私たちのグループにはウベルト先生がつき、同時発動させる技を決めてそれを連続して放つ練習から始め、最後のグループには騎士のマヌエル様がついて練習を始めた。



私はどの技を同時発動させるか悩んだ。

まずひと通りファイヤアロー、ウインドアロー、アイスアロー、スパイラルウォーターを連続して放ってみる。

連続させるなら氷、火、風、水の順がいいように思ったが、同時発動で威力を増すにはどの組み合わせがいいだろうか。


アイスエッジをスパイラルウインドで加速させ威力を増すのはどうだろう。

アイスブロックとスパイラルウインドでもいいかもしれない。

ファイヤアローとスパイラルウインドという組み合わせなら威力が増しそう。


そう考えながら頭の中でイメージしてみる。

ふと、アイスブロックとスパイラルウインドを剣に纏わせるはっきりしたイメージが湧き、その瞬間、私はほとんど無意識に氷と風属性の魔術を同時に発動して剣に纏わせ、ぐっと足を踏みしめ剣を振った。


ヒュッと鋭い音と共に《氷塊旋風》が的へ向けて放たれ、三つの氷塊が螺旋状に旋回しながら鋭く飛び、ドスドスドスッと音を立てて的に当たった。



私は驚いて剣を振った体勢のまま固まってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ