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第4話 特待生ラウル

目の前の男子生徒はさらっとした金髪に青い瞳で人好きのする容姿をしていた。

体格はいいけれど剣術をおさめてはいないようね。

真新しい制服だからきっと新入生だわ。

断る理由もなかったので私は頷いて言った。


「どうぞ」


彼はニコッと笑って言う。


「ありがとう」


テーブルにトレーを置いて椅子に腰掛けた彼は、私の手元のトレーをまじまじと見てから言った。


「それ……君一人で食べるの?」

「ええ」

「僕はラウル。君、もしかして特待生のエミリアーナ・ダンジェロ嬢じゃない?」

「ええ、そうよ」

「やっぱりそうか。あらためて、僕も特待生のラウルだ。君と同じ入学試験得点トップ合格者四人のうちの一人さ。これからよろしくね」

「こちらこそよろしく」

「君って魔力量が多いのかな?二人前食べる令嬢なんて初めて見たよ」

「ええ。多い方よ。それに剣術もおさめているからこれくらい必要になるの」


私は他人に自分の桁外れの魔力量のことは話さない。

そのため食事の多さの理由はいつも、魔力量が多めで剣術をするから、ということにしている。


「なるほどね」


ラウルはあらためてしげしげと私を見てから言った。


「外見だけで君を判断したら痛い目を見そうだな」


あら?

こんな風に言われたのは初めてだわ。

今の説明ですんなり納得するか、その体のどこにそんなに入るのかと呆れるか、たいていの人はそこで終わるのに、ラウルは違うようだわ。

初対面の相手を見定める術を持っているのかしら。

私は(不本意ながら)黙っていれば淑やかな淑女に見える、とよく兄たちに言われるし、体つきが細身に見えるらしく、剣術をしていると言っても本格的にしていると思われることはまず無いのに、ラウルは気がついたのかもしれないわね。

もしかすると私の魔力量は多い方どころかかなり多いことにも気づいたのかもしれない。

そう思ったので素直に口に出す。


「あなたは外見だけで安易な判断をするような人には見えないわ。人懐こい態度の裏に何かしら見抜く目を隠し持っている感じがするわね」

「褒めてくれたのかな?」

「ただそう思っただけよ」


ラウルは少し嬉しそうな表情を浮かべた。


「君のこと、エミリアーナと呼んでもいいかな?」

「ええ、いいわ。私もあなたをラウルと呼んでもいいかしら?」

「うん。よろしく」


ようやくラウルは目の前のランチを食べ始めた。


「うん、旨い。ここは食事も最高だな」

「ええ。とっても美味しいわね」

「もう学園内は見て回った?」

「まだこれからよ。今日入寮したばかりなの」

「そうか。僕は一昨日入寮したからひと通り見て回ったよ。特待生とはほとんど顔つなぎしたんだ」

「行動的なのね」

「まあね。トップ合格者四人のうち、トーニオとは顔見知りになったよ。ブルーノはまだ入寮してきていないみたいだ」


ラウルってなんとなく大商人の子息のような感じがするわね。

外見は貴族的なところもあるけれど、入寮してすぐ人脈を築こうと動いたようだし、この人当たりの良さ、人懐こさ、そして人を見る目があることを垣間見るに……。


「ラウルって貿易都市か商業都市どちらかの出身かしら?」

「ご明察。商業都市ペルラだよ。やっぱりわかる?」

「なんとなくそんな気がしたわ」

「トーニオにも言われた。彼はクアトロ出身で研究者気質なヤツなんだけど、僕みたいなタイプは周りであまり見ないって言ってたよ。ちなみに僕はウベルト商会の長男さ。知ってる?」

「聞いたことがあるわ。商業都市随一の大商会でしょう?」

「まあね」


ラウルは商業都市ペルラ、トーニオは精密魔技術都市クアトロ出身なのね。

ああ、本当にここには王国中からいろいろな個性を持った人たちが集まってきているんだわ。

ふとそう思った私は嬉しくなってラウルに言った。


「ここでの生活がますます楽しみになってきたわ」

「?」

「王国中からさまざまな人が集まって来ているんだもの。ここでそういう人たちと交流して学んで刺激しあってもっと自分の世界を広げていくことができると思うと楽しみでたまらないわ」

「そうだな。もっと厳しい世界へ飛び出す前の下地を作る準備期間にもなるだろうしね」


ああ、ラウルとは勉強面だけでなく将来の職業など幅広く突っ込んだ話ができそうだわ。

これはいい友達ができたかもしれないわね。


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