第3話 食堂にて
私は魔力量がかなり、というより桁外れに多いので、普段は少なくとも人の三倍は食べる。
それも同年代の成長期の男性が食べる量の三倍くらい。
そうやって体をきちんと作っておかないと、自分の魔力量に負けて体調を崩したり、コントロールできずに魔力暴走を起こす恐れがあるから。
幸いなことに、家族や親族が気をつけてくれたので今までに魔力暴走を起こしたことはないけれど、油断は禁物。
だから両親を通じて学園側と話をつけてもらい、食費の上乗せをすることで一日九食分の提供を受けることが可能となった。
今日はそのために食堂で働く人々と顔を合わせて挨拶しておきたいと思っている。
食堂は寮を出て少し歩いたところ、校舎の右側のすこし引っ込んだところにある。
外でも食べられるようにテーブルと椅子がいくつか置いてあり、少し離れたところに立派な枝ぶりの大きな木が一本生えている。
あの木の下に座ってのんびり食べるのも良さそうね。
あの木の上から見る景色はきっと素敵よね。
そう思うと木登りしたくなってどんな風に登ればいいかしらと幹の様子を凝視してしまう……のは子供の頃の話で、今の私は淑女だからもちろんしませんけれど。
もうすぐ昼食時なので、食堂の内外にちらほらと生徒たちの姿が見える。
美味しそうな匂いも漂っていて、空腹感が増す。
私は食堂の中に入って注文口へ向かい、受け付けをしている年配の女性に声をかけた。
「こんにちは。わたくしエミリアーナ・ダンジェロと申します。学園側から話が通っているかと思いますが、食事の量についてあらためてお話しさせていただきたいのです」
受け付けの女性は少し驚いたような顔をした。
私が食べる量の多さを知ると驚かれることが多いので、もちろんこういう反応は想定内。
でも受け付けの女性はすぐに笑顔になって言った。
「ダンジェロ公爵家のエミリアーナ様ですね?聞いております。ご丁寧にありがとうございます」
「これから三年間お手を煩わせることになりますが、皆さまどうぞよろしくお願いいたします」
私は注文口から厨房、配膳スペースにいる人々に目を向けてお辞儀をした。
受け付けの女性が慌てたように言った。
「そこまで気を使ってくださり、こちらこそ御礼申し上げます」
そこで私は朝昼夕の食事は二人前、間食は一日二回するので昼夕に持ち帰りで一.五人前ほど別途用意して欲しい、と頼んだ。
「承りました。こちらでもご依頼を共有しておきますのでご安心ください」
「ありがとうございます。それでは今日のランチを……特Aと特Bランチ両方いただきます。持ち帰り用にはサンドイッチをお願いしますね」
「はい。準備いたします。お帰りの際、お声がけください」
私は提供されたランチのトレーをニつ持って食堂の空いている席に座った。
私の好みはお魚より断然お肉。
でも今日はここの食堂の料理がどのようなものか確認するため肉料理メインのAランチと魚料理メインのBランチを食べることにした。
もちろん食べ盛りの男子生徒がよく注文する量の多い特Aと特Bで。
まずは大好きな肉料理から食べ始める。
んー、柔らかくて味つけも素晴らしいわ。
やっぱりAランチ二つにすれば良かったかしら。
そう思いながら夢中で食べていると、急に目の前に人影がさして声をかけられた。
「ここ、いいかな?空いてる?」
私は顔を上げてテーブルを挟んで向かい側の席の横に立っている男子生徒を見上げた。